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ドリトル先生と牛女

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第九幕その六

「僕はね」
「それは何よりです。ですから」
「ですから?」
「僕達ともお付き合い出来るんですね」
「ああ、妖怪だからとか」
「それで偏見はないんですね」
「ないつもりだよ」
 先生は河童に答えました。
「そちらもね」
「やっぱりそうですか」
「うん、妖怪も人間も心があるね」
「だからですか」
「動物もね。その心を大事にしないと」
 それこそというのです。
「駄目だよ」
「そのお考えがです」
 河童は先生のお話を受けて笑顔で言いました。
「素晴らしいです」
「そう言ってくれるんだね」
「はい」
 先生に実際にと答えました。
「実際にそう思いましたから」
「そうなんだね」
「そうです、それで牛女さんのことですが」
「何かな」
「お礼を言われています」
 先生にというのです。
「そのことをお話に来ました」
「歯のことでかな」
「そうです、治してくれて有り難うと」
「まだ一回あるけれど」
「それでもとのことで」
 河童は先生にさらにお話しました。
「お礼を言われていたので」
「それでなんだ」
「僕はそのことをお伝えに来ました」
「牛女さんから言われてかな」
「牛女さんは今ちょっと広島に行ってまして」
「妖怪さん達のお付き合いかな」
「僕達も色々ありまして」
 妖怪もというのです。
「それで、です」
「広島の方にだね」
「呉に行かれています」
「呉っていうと」
 その街の名前を聞いて先生はすぐに言いました。
「自衛隊の基地があるね」
「海上自衛隊ですね」
「大きな港に教育隊に」
「かなり大きいですね」
「そうだったね」
「海軍の頃からでして」 
 河童は先生に明るくお話しました。
「あそこと広島市は妖怪が多いんですよ」
「そうなんだね」
「それで呉の方にです」
「今はお付き合いでだね」
「行かれていまして」
 それでというのです。
「僕が伝言を頼まれました」
「お礼を伝えに」
「それと次の治療の日までには帰って来るので」
「そのこともなんだ」
「お伝えに来ました」
「そういうことだね」
「そうです、あと僕の場合は」
 河童は先生に笑ってこうもお話しました。
「虫歯はないですね」
「君達は嘴だからね」
「歯がないですから」
「そうだね」
「歯がある仲間もいますけれど」
 そうした河童もというのです。 
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