日本国召喚~Country survival~
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邂逅編
第4話 開戦、ロデニウス戦役
前書き
前以て言っておきますが、ロウリア王国軍の戦力は原作よりも強化されております。
西暦2029年/中央暦1639年4月1日 クワ・トイネ公国西部 ギム郊外
戦闘は4月最初の日、夜明けと同時に、唐突に始まった。
「撃てぇぇぇぇぇ!!!」
ズドドドォォォォォン!!!
特化兵団長の号令と同時に、200門の前装式カノン砲が白煙でその場を覆い尽くしながら、砲声でその場の空気を震わせ、大重量の鉄球を放つ。そしてその砲撃は1km先にある平原と城壁の周囲に着弾した。
ロウリア王国軍の有するカノン砲は、主に製造と加工が容易な青銅製の鋳造砲で、火薬も第三文明圏では時代遅れとされている黒色火薬であるため、射程と火薬の運用性は低い。それでも当たれば容易に人を殺傷する事が出来るのは変わらず、毎分6発のペースで放たれる砲撃は着弾地点の周囲を土煙で覆い尽くしていき、2分程続けて砲撃を放った時点でアデムが指示を出す。
「砲撃中止。飛竜騎隊、及び地竜騎隊を突撃させなさい。全て蹂躙せよ」
直後、上空を100騎のワイバーンが舞い上がり、その後を50騎の巨大な鳥が追随する。この鳥は『大火食い鳥』と呼ばれる生物で、ワイバーンと同様に火炎を吐き、速度はワイバーンの半分程ながら大重量を吊り下げながら長距離を飛行する飛翔能力から、民間では旅客機の様に運用されている。
ロウリア王国軍飛竜騎士団に配備されている個体は、軽武装を施した輸送ヘリに近い運用が成されており、市街地に到達次第応戦してくる敵歩兵を火炎放射で掃討し、1個分隊相当の10人の歩兵を降下させる任務を与えられていた。
「突撃ぃぃー!」
地上の歩兵部隊に先駆けて突撃したワイバーンの大群は、5騎を一つのチームとした20個の逆V字編隊で突撃し、石や木で組まれた城壁や城柵に攻撃を始める。
「放て!」
キュアアアアア…ズバン!
騎手の指示を聞き、ワイバーンは首を伸ばして口を開き、瞬時に喉の奥に火球を生じさせる。そして吼える様に火球を高速で吐き出した。
火食い鳥とは異なり、ワイバーンは爬虫類特有の頭部構造と長大な首を砲身にして炎魔法と風魔法で火球を生じさせ、息を吐き出すと同時に風魔法で形状を保持しつつ加速させた火球を射出する、『導力火炎弾』攻撃を行う事が出来る。これは軍用騎として訓練を受けた個体のみが成せる技で、射程は火砲よりも長い2kmに達する上に、木造建築物なら確実に吹き飛ばせる程度の威力も有する。
火砲に迫る威力を有する魔法攻撃は城柵を粉砕し、木組みのやぐらを火だるまに変える。城壁にいた僅かな兵士達は大型のバリスタやロングボウで弓矢を撃つが、ワイバーンは高い機動力を以てこれら全てを回避し、お返しとばかりに火炎放射を浴びせて返り討ちにする。
「全騎、突撃せよ!繰り返す、全騎、突撃せよ!!」
防衛線を破壊した後、地上を200騎のリントヴルムが時速50kmの速さで駆け抜け、破壊された城門を通ってギム市街地へとなだれ込んでいく。リントヴルムは騎乗する兵士とともに全身に鎧を身に纏っており、兵士も背後をカバーするために、ボウガンを装備している。そのため生物でありながら、その姿と戦術的役割は装甲車ないし第一次世界大戦期の戦車に近しいものであった。
「撃て!」
その際、市街地各所にて、公国軍兵士がクロスボウや風魔法で威力を増した魔法弓、そして台湾からの輸入品であるM1ガーランド半自動小銃を撃って応戦し、歩兵の何人かを撃破する。
「反撃が来たぞ!」
「ここの建物の多くは木造だ!リントヴルムの火炎放射で焼いてやれ!上空のワイバーンにも航空支援を要請するんだ!」
しかし、ロウリア軍もただではやられず、そこにリントヴルムが火を吐き、歩兵は絶叫しながら建物ごと火だるまに包まれる。
戦況は圧倒的に優勢。しかしロウリア軍将兵は勝っているというのに、その優勢に違和感を覚える。それは先遣隊本陣でも感じ取られていた。
『報告!ギム市内に住民の姿は確認されておりません! 僅かな守備隊の兵士しかおらず、捕虜も大して得る事が出来ません!』
『こちら農業地占領部隊! 倉庫及び畑は手つかずの状態で、毒を撒いたり燃やした形跡は全く見当たりません!』
「何、すでに逃げ出していたというのか? にしても10万もいる住民が1週間足らずのうちに姿を消しているなど…」
将兵達が困惑の表情を浮かべる中、アデムは悔しそうな表情を浮かべ、左手親指の爪を噛む。
「ちぃ、エルフ共を仕留め損ねたか…だが全くの犠牲なしにギムを落とせたのと、食料も一定数を奪える事は出来た。 一先ず都市を占領し、拠点構築を優先しよう。 直ちに後方の東方征伐軍本部に連絡せよ」
「了解!」
アデムは通信兵にそう指示しつつ、苦い表情を浮かべながら東の方角を睨みつけた。
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ギムより東に10km 避難都市チカグラ 公国陸軍西方方面師団臨時司令部
『守備隊、3割が戦死しつつも敵侵攻部隊に想定以上の損害を与えて脱出に成功。現在地下道路よりこちらに向けて脱出中との事』
ギムから東に10km離れた位置にある避難都市、チカグラ。人口1万程度の市民が過ごす市街地の真下に、その10倍もの人々を収容可能な無数のシェルタースペースを持つこの都市は、かつてこの世界を支配していたという伝説の大国『古の魔法帝国』が築き上げた地下倉庫を利用しており、早期警戒機によってロウリア王国軍の侵攻準備を察知したギム守備隊は、鉄道や長距離輸送用トラックの全てを使ってチカグラへ市民10万と日本人移民1万を移送し、この地下スペースに避難させていた。
「一昨日から大急ぎで避難を実施して良かった…あと1日遅れていれば…」
地表に近い区画に設けられた臨時司令部の一室で、ギム守備隊に属する兵士の1人がそう呟き、モイジは魔信機の前に立ちながら沈痛な表情を浮かべる。
「だが、脱出するまでに守備隊の面々には必死を強いる事となってしまった…」
「隊長、連中は敢えて無茶を志願したのです。 市民10万とニホン人移民を守るために敢えてその場に残った彼らの犠牲を無駄にしないためにも、ここで粘って相手の侵攻を遅らせるべきでしょう」
副官の1人がそう言ってモイジをフォローしたその時、通信手が報告してきた。
「モイジ将軍、エジェイの西方方面師団より入電です。 現在ニホン国とタイワン国、大カン民国の援軍がマイハークに到着し、荷揚げ作業と現在こちらに向けて接近しつつあるロウリア艦隊迎撃の準備を進めているとの事です」
「そうか…直ちに避難民の幾つかをエジェイ方面へ逃がしつつ、防衛線を張るぞ。遅滞戦術で敵兵力を減らしつつ、エジェイへ後退するんだ。 民間人を1人も死なすな!」
『はっ!』
モイジの指示を受け、クワ・トイネ公国軍ギム守備隊とチカグラ配備部隊は避難民のエジェイへの避難作業と塹壕からなる防衛線の構築を開始し、圧倒的劣勢下での遅滞戦術に取り掛かり始めたのだった。
後書き
次回、ついに日本参戦。
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