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レーヴァティン

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第百七十八話 アルプスとドナウ川その七

「自分もな」
「幸せだよね」
「そうだろ」
「というかそんなおっさんとよく結婚したわね」
 双葉はフェットチーネを食べつつ言った。
「奥さんも」
「そうだよな」
「間違えたのね」
「そんなどうしようもない奴とな」
「結婚するとかね」
「だから離婚したんだな」
「というかその人何で偉そうにしてたか」
 それがとだ、双葉はいぶかしむ顔で述べた。
「理解出来ないけれど」
「働かなくて何の特技もなくて出た高校は普通の学校だよ」
 剛がまた言った。
「持ってるのは運転免許だけでね」
「何処が偉いんだ?」
 久志も真剣にいぶかしんだ、ステーキを食べつつ言った。
「一体」
「長男でお母さんが徹底して甘やかして」
「勘違いしたんだな」
「それで全くの無能でもね」
「そんなのだったんだな」
「そうだったんだ」
 尊大であったというのだ。
「これがね」
「そういうことか」
「子供を育てるのもね」
「甘やかしたら駄目だな」
「というか変に無茶苦茶に甘やかされたから」
 だからだというのだ。
「そうなったから」
「甘やかし方次第か」
「普通に甘やかしても」
「普通はそこまでならないか」
「大人に。そのおじさんが五十過ぎてもべたべたしていたらしいから」
「何か気持ち悪いな」
「そう思える位ね」
 まさにというだ、剛はどうかという顔で話した。
「ずっと甘やかされてきたから」
「そうした人になったんだな」
「働かなくても生涯のある人もそう言っても尊大でもね」
「それでもか」
「ついでに言うと他の人の家に今日行くって言って上がり込んで」
 そうしてとだ、剛はさらに話した。
「自分の分用意されていないご飯で大飯食って」
「すげえ図々しさだな」
「それでお風呂も入ってお布団出してもらって寝て本借りて読んでその本に尊大に批評して」
「さっきの図々しいって発言取り消すな」
 久志はワインを飲みつつ述べた。
「そうするな」
「取り消すんだ」
「俺だったら即刻縁切るな」
「凄い図々しさどころかじゃないから」
「何だそりゃ」
 久志の声は完全に呆れたものだった。
「人様の家にそれか」
「そうだったんだ」
「というか本借りてか」
「面白かったとか言わないでね、挙句には」
 剛はさらに言った。
「人の部屋に勝手に入って本漁ってぽんぽんと投げるみたいに探していたよ」
「俺本当にそんなおっさんな」
「縁切るよね」
「怒り狂ってな」
「だから親戚中から嫌われていたよ」
「その母親以外からか」
「お寺に預けて更正させようとしたら」
 剛はカルパッチョを食べながら話した。
「それはそれでね」
「駄目だったんだな」
「性格と行動があらたまるどころか」
「恩知らずでもあったよな」
「うん、そのお寺の宗派の組織構成の悪口を言う」
「教理とか頭に入らずにか」
「随分お世話になったのに」
 それでもというのだ。 
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