レーヴァティン
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第百七十八話 アルプスとドナウ川その六
「今からな」
「それじゃあね」
「よし、これからのことは決まった」
久志はあらためて言った。
「それじゃあな」
「これからだね」
「丁度昼飯の時間だ」
それになったというのだ。
「じゃあ食うか」
「そうしようね」
「午後も仕事があるしな」
「その為の英気を養う必要もあるし」
「食おうな」
「それじゃあね」
「今日は何が出るか」
英雄は笑ってさらに話した。
「楽しみだな」
「そうだよね」
「いつもな」
こう言ってだった、久志は仲間達と共に昼食に入った。昼食ははレタスにセロリ、チコリとトマトのサラダにラザニア、フェットチーネのペスカトーレに鯛のカルパッチョにビーフステーキだった。デザートは葡萄のケーキだ。
そうしたものを赤ワインと共に食べつつ久志は笑顔で言った。
「今回もな」
「美味しいね」
剛は久志のその言葉に笑顔で応えた。
「本当に」
「そうだよな」
「食べるものを何でも美味しいって思えたら」
それならとだ、剛は笑顔のまま話した。
「それだけで幸せだよ」
「それはそうだな」
「作る人もね」
「美味いって言ってもらったらな」
それでとだ、久志も頷いて述べた。
「それでな」
「幸せだよね」
「ああ」
実際にというのだ。
「本当にな」
「知ってる人で奥さんが折角作ったものにね」
「美味いって言わずには」
「いつも甘いとか辛いとかね」
「不平ばかり言ってたんだな」
「というか誰にも恩も感謝も感じないでいつも尊大でね」
「性格悪いな、そのおっさん」
久志は剛が話すその人物について述べた。
「聞いてる限りだとな」
「障害者の自分より年上の叔父さんに注意されて殴ってやろうかって言ったり」
「態度も悪いな」
「働かないで偉そうに言うばかりでね、借金までこさえて」
「最悪だな」
「奥さんに逃げられて」
そしてとういうのだ。
「それでも働かないで不平不満ばかり言って」
「それで偉そうでか」
「遂に誰からも見放されて」
「今どうなってるんだ?」
「死んだんじゃない?」
剛の今の口調は素気ないものだった。
「人を助けることもしないで自己中心的だったしね」
「最低過ぎるな」
「犯罪はしないけれどね」
「それでも最低だな」
「そうだよね」
「というか恰好悪いおっさんだな」
久志はこうも言った。
「もう作ったものを美味いって言わない時点でな」
「不平不満しか言わなかったよ」
「恰好悪いな」
「そうだよね」
「やっぱり飯食って大抵な」
「美味しいって言えたらね」
「それだけで恰好よくてな」
それでというのだ。
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