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木馬を見て

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第二章

「ならば最悪の事態にもな」
「対されますか」
「そうする、その時はカサンドラを頼む」
 こうイオラトステスに話した。
「いいな」
「ヘクトール様は」
「私も出来ればトロイアを出るが」
 それでもとだ、ヘクトールはイオラトステスに答えた。
「最後まで一人でも多くだ」
「トロイアの者を逃がす為に」
「戦う、だからな」
「私は、ですか」
「カサンドラを頼む」
 こう言ってイオラトステスの肩にに己の手をやった、そしてだった。
 最悪の事態に実際に備えた、アイアネアースやラオコーンといった頼れる者達に話し自らは最後まで戦う備えをした。
 その中でトロイアの将軍の一人であるディポボスは木馬を見て眉を顰めさせてそのうえで部下達に言った。
「おかしくないか」
「といいますと」
「何がでしょうか」
「うむ、この木馬だが」
 巨大なそれを見上げつつ言うのだった、小さな鋭い目であり黒髪は短く髭は剃られその顎はそろそろ老いが見られ戦場の汚れもある。鎧が実に似合う身体つきである。
「若しもだ」
「若しも?」
「若しもといいますと」
「これだけ大きいなら中に誰かそれも結構な数が入ってもだ」
 それでもというのだ。
「いけるのではないのか」
「人が、ですか」
「中にいてもですか」
「不思議ではないといいますと」
「そう思った、それによく見ると」
 デイポボスはその木馬を隅から隅まで見てさらに言った。
「底が開かないか」
「木片と木片の合わさったところでは」
「それだけではないですか」
「違うでしょうか」
「考え過ぎか。だがどんな街も中に敵が入れば終わりだ」
 ディポボスは戦のこのことも話した。
「そうだな」
「はい、確かに」
「その徳はです」
「もう終わりです」
「どの様な街も」
「トロイヤでもな」
 自分達の街でもとというのだ。
「同じだ」
「では」
「まさかと思いますが」
「この木馬は」
「中にギリシア兵がいますか」
「まさかと思うがな」
 木馬を非常に胡散臭げな目で見上げつつ言う、そして。
 ディポボスは少し腕を組んで考えてからだ、周りの者達に言った。
「一つ考えがある」
「と、いいますと」
「どうされますか」
「一体」
「そなた達の妻を木馬のところに連れて来るのだ」 
 そうしろというのだ。
「この度はな、そしてギリシアで今ここに攻めてきている英雄達の名前を呼ばせるのだ」
「そして何か驚きの声をあげたりですか」
「若しくは応えればですか」
「その時はですか」
「そうだ、ここはだ」
 まさにというのだ。
「仕掛けてみる、いいな」
「わかりました、それではです」
「この度はそうしてみましょう」
「妻を連れてきます」
「わしもそうする、妻をここに連れて来る」
 こう言ってだった、ディポボスと彼の部下達はそれぞれの妻を連れて来てそうして木馬の周りからこの戦いに参加しているギリシアの英雄達の名を呼んだ。すると。 
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