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ドリトル先生と牛女

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第三幕その十

「これよりです」
「牛女さんにですね」
「お会いして下さい」
「それでは」
 こうしてでした、先生達はお家の中に案内してもらいました。お家の中も非常に清潔で上品な和風の内装でした。
 そのお家の中の居間に入るとでした、そこには。
 振袖の桃色の地で赤の牡丹と白い雪の模様の着物にえんじ色の奇麗な帯をきた牛の頭の女の人がいました。女の人は正座していて先生に深々と頭を下げました。
 そうしてです、先生にこう言いました。
「はじめまして、牛女といいます」
「貴女がですね」
「名前は件一葉といいます」
「よいお名前ですね」
「有り難うございます、実は」
 牛女さんは先生に一呼吸置いてからお話しました。
「先生に診察して欲しいのですが」
「それで、ですか」
「お呼びしました」
「僕が医者だからですね」
「人も生きものも診られますね」
「はい、どちらも」
 先生は牛女さんにその通りだと答えました。
「僕は」
「そして相手が誰でも分け隔てしない」
 牛女さんはこのことも言いました。
「妖怪でも」
「誰もが命がありますので」
「公平なのですね」
「そうする様に心掛けています」
「そうした方なので」
「呼んで頂きましたか」
「はい、実はです」
 牛女さんは先生にあらためて言いました。
「近頃歯が痛みまして」
「歯がですか」
「そちらを見て頂きたいのです」
「そうでしたか」
「お願い出来るでしょうか」
「喜んで」 
 先生は牛女さんに笑顔で応えました。
「そうさせて頂きます」
「そうですか。では」
「早速ですか」
「お口の中を見せて頂けるでしょうか」
「それでは」
 こうしてでした、先生は。
 牛女さんのお口の中を診察してそうして言いました。
「虫歯がありますね」
「そうですか」
「ですから」
 それでというのです。
「歯もです」
「痛んでいるのですね」
「左の右の奥歯がです」 
 そこがというのです。
「結構酷いです」
「では」
「すぐに治療しましょう」
「抜かなくていいのですか」
「そこまではいっていません」
 結構酷いにしてもというのです。
「ですから」
「治療してですか」
「痛まない様にしましょう」
「では」
「ただ。何度か手術が必要なので」
 先生は牛女さんにこうも言いました。
「ですから」
「お家ではですか」
「難しいので」
「それなら」
 ここで口裂け女が言ってきました。
「学園の敷地内にある病院で」
「八条病院ですね」
「あそこに入って」
 そうしてというのです。
「治療しましょう」
「それでは」
 牛女さんは口裂け女の言葉に応えました。
「先生がよければ」
「僕はそれで」 
 構わないとです、先生も答えました。
「病院の許可が出れば」
「それは大丈夫ですよ」
 口裂け女は先生に明るく応えました。 
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