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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga15望まざる再会~Frustrating timing~

†††Sideイリス†††

プリムス(仮)の創り出した幻影を相手に四苦八苦してたところに、空から斬撃が降ってきたのを視界の端に収めたから、幻影に注意しながら行き先を見てみれば今まさにレオン(仮)を倒そうとしてた巨拳を狙ってた。斬撃は3つの巨拳を一撃の下に切断して、一瞬にして消滅させた。

「まあ大変! レオン陛下! 陛下のミスですわよ、アレが来てしまったのは!」

「むむ! 確かにあと1歩で我は討たれていたかもしれんが・・・!」

プリムス(仮)とレオン(仮)が隙だらけで空を見上げた。ここで最低1人、プリムス(仮)だけでも脱落させたい。わたしのその考えはセラティナも同じだったみたいで、プリムス(仮)に向かって手の平を突き出した。

――一方通行(サンダルフォン)の聖域・多層封印(マルチレイヤー)――

「あ、あら?」

プリムス(仮)が六重の結界に閉じ込められて困惑した。いつもみたく自分の幻影と位置変更をして逃走しない、というか出来ないみたいで、「陛下の所為ですわよ!」って自分が捕まった原因がレオン(仮)にあるって責任転嫁。

「いやそれはプリムス陛下の責任でし――むごぉ!?」

そう言い返したレオン(仮)は最後まで口に出来ず、ルシルの無事だった影拳でぶん殴られた。さらに追撃として蒼翼22枚からの砲撃がプリムス(仮)と、地面を転がるレオン(仮)に12発ずつ放たれた。

――光瑳・斬烈閃――

また空から斬撃が降ってきて、着弾しようとしてた砲撃と相殺、プリムス(仮)を封じる結界を破壊したのを見てると、「なんで今なんだ・・・」ってルシルが泣きそうな表情で、声色でそう言って空を見上げた。わたしもルシルの視線を追って目をやれば、そこには1つの人影。

「まさか・・・!」

その人物の姿形を視認したわたしは言葉を失った。ルシルの防護服と同じでデザインの長衣、銀色の髪、瞳はアップルグリーンの青年。背には色は白だけど剣翼アンピエルが8枚。偶然ルシルと同じ・・・なわけがない。きっとアイツが“エグリゴリ”最後の1機・・・。

「「ガーデンベルグ・・・!」」

ルシルの声と重なる。やっぱりそうなんだ。つまりアイツを倒したら、ルシルも死ぬっていう・・・。ゾクッと背筋が凍った。ルシルの死がすぐ側に居る。そう考えるだけで胸が苦しい、泣きそうになる。だから戦わせちゃダメだ。

「ルシル! アイツの目的を聞いて、話だけで済ませよう!? 絶対に戦っちゃダメ! いい!? 戦わないこと!」

ルシルの側に駆け寄ったわたしがそう叫んでると、ガーデンベルグが急降下してきてルシルの前に立った。もう一触即発の雰囲気で、力ずくでルシルを止めて撤退しようって考える。まずはルシルをガーデンベルグから引き剝がさないと。ルシルの腕に手を伸ばして、ギュッと袖を掴む。

「随分と久しぶりじゃないかガーデンベルグ。なかなか姿を見せないから、俺のことを忘れているんじゃないかと思っていたぞ?」

「まさか。神器王は俺たちエグリゴリが必ず殺す。エグリゴリのリーダーとして部下に手柄を譲ろうと考えてただけさ。その結果は俺以が――いや俺とリアンシェルト以外が負けたわけだが・・・。弱かったから負けたんだ、恨みはしないよ」

今のルシルははやてくらいの身長だから、180㎝くらいのガーデンベルグとの対峙はまるで不良といじめられっ子。ルシルは1歩も引かず・・・っていうか、引いてほしいんだけど、「ユルソーンはどうした? そんなちゃちな剣――神器で、俺に勝つと? 笑わせる」って挑発。

「俺たちの王は、民間人やあんたら局員に対しても無益な傷害は望んでないんだよ。それなのに傷付けた対象にランダムで呪いを掛けて、果てには殺す神器なんて使えるわけない。解っているだろ神器王」

「ああ、そうだな。嫌と言うほど理解しているよ・・・ガーデンベルグ!」

カッと目を見開いたルシルが左拳に魔力を付加して、そのまま右頬掛けてフック。ガーデンベルグも右拳に魔力を付加して、ルシルの左頬目掛けてフック。

「「おおおおおおおおおおおお!!!」」

2人の拳が同時に互いの頬に直撃。その衝撃は首から先が吹っ飛びそうなほど。だけど2人の足は1歩も後退することなく、そのまま容赦ない拳の応酬を始めた。神器でのやり合いに比べれば命の危険性は無いとは思うけど、何がきっかけでガーデンベルグを斃すか判らない。

「「ぐぁ!!」」

とうとうお互いを数mと殴り飛ばした2人。ルシルが追撃を行う前にわたしは「ダメ!」って呼び止めた。ガーデンベルグの方も、プリムス(仮)が「あなたが戦うんですの!?」って驚き、レオン(仮)は「貴様の役割は戦闘ではないだろうに」って首を横に振って、ガーデンベルグの戦闘行動をやんわり非難。

「ルシルも! なにか1つ間違って、ルシルが死ぬようなことになったら・・・!」

ルシルにはもちろん死んでほしくないし、“T.C.”との戦いでもルシルの戦力は必要だ。いろんな意味でルシルを喪うわけにはいかない。しかもはやてやトリシュの居ないこの場所でなんて・・・。

「だからお願い、もうやめて・・・! わたし達には、わたしには・・・ルシルがまだ必要なの! それに、リアンシェルトだってまだ救ってない!」

ルシルの左袖をギュッと握り締めて止めるわたしの元にルミナ達も集まって、わたしとルシルの前に立ってガーデンベルグ達と対峙。向こうはレオン(仮)がプリムス(仮)とガーデンベルグ達の前に躍り出て、構えを取った。

「・・・言っていなかったが、俺の死はガーデンベルグの救済とは直結していないんだ。俺が死ぬのは、アイツが持っている神器ユルソーンを破壊した時なんだよ」

「・・・それ、もっと早く言ってくれない?」

つまりガーデンベルグをこの場で斃しても、“ユルソーン”さえ破壊させなければルシルはまだ生き続けることが出来るわけだ。ガーデンベルとリアンシェルトを斃した後でも、“ユルソーン”が無事なら・・・。ルシルとずっと過ごせるってわけになるんじゃない?って考えが一瞬ではじき出された。

――其は神域にて永く眠りし天災の王――

「向こうは貴様を狩る気のようだが、それは見過ごせん。プリムス陛下。ガーデンベルグを連れて先に戻ってくれ。ここは我ひとりで十分だ」

――我らの願いの元、王に盾突く者共を屠るがため、いざ天にて目覚め、地に向け高らかに謳え――

「それはそれで不安ですわね。レオン陛下は良い意味でも悪い意味でも真っ直ぐ過ぎますわ。それに、真技の発動で魔力も残り少ないでしょうに。わたくしが残りますわ。魔力はまだまだ十分ですし、何より勝つ必要のない戦闘は得意ですもの。レオン陛下こそガーデンベルグを連れて先にお戻りくださいませ」

――忠義なる炎熱。至純なる氷結――

「何でお前たちは俺を真っ先に帰らせようとする? こうなったら意地だ。俺が残る!」

――不屈なる風嵐。正義なる雷霆――

「だから! 貴様は本来こうして前線に出る者ではないだろうに!」

――希望なる閃光。無情なる闇黒。苛烈なる土石――

「いいからとっととお帰りなさいな! 兵は将の言うことを聞くものですわ!」

――其の威光を示す七つの聖杖を突き、破滅の音を打ち鳴らせ――

何だか知らないけど口喧嘩を始めたガーデンベルグ達。この隙に攻撃しちゃおうかなって考えてると、「元よりお前ら全員逃がさない」ってルシルがポツリと言った。

「確実に、ここで仕留める!!『全騎、即時離脱!』」

――一方通行(サンダルフォン)の聖域――

――サビオ――

ルシルからの思念通話でわたし達は何を考えるより早くその場から離れる中、高速移動系の魔法を持ってないセラティナはミヤビに抱きかかえ上げられながら結界を発動、ガーデンベルグ達を閉じ込めた。わたし達が行動に移ってからのガーデンベルグ達の反応も早かった。ガーデンベルグがプリムス(仮)を抱え上げて、レオン(仮)が2人を護るように後ろから抱きしめて、全身を弱々しい魔力で覆った。

――万物神の粛清(コード・アルフォズル)――

7方の空から飛来するのは30m近い長さを誇る7属性の螺旋状の槍。ソレらは一直線に結界内に居るガーデンベルグ達の元へ突き進んで、ズンッ!と突き刺さった。7属性の魔力爆発が起き、さらに槍が竜巻と化して周囲に魔力弾やら砲撃やらをまき散らし始めた。

「・・・やっぱやり過ぎだと思うの、わたしだけ?」

わたしがポツリと漏らすと、「みんな同じ思いだって」ってルミナが肩を竦めた。セレスやクラリス、あのミヤビですらも頷いたんだから、ルシルのキレっぷりがヤバい。当のルシルはと言うと着弾点をジッと見詰めたまま。

「大丈夫なの? その、ガーデンベルグを今ので間違って斃したとかない?」

「ない。あの程度で勝てるなら、俺はもうとっくにセインテストの悲願を果たし、この世には居ない」

「そ、そ・・・っか」

――尽滅の蹂躙軍(フエルサス・デ・オクパシオン)――

ぶわっと周囲に出現したのはわたし達やガーデンベルグ達の幻影。これは逃げられるって嘆息してると、『全騎、合図とともにしゃがめ』ってルシルからの指示。徹底抗戦する気だよこれ・・・。とりあえず従わないとわたし達も被害を受けそうだし『了解!』って返事はしておく。

『今!』

ルシルは胸の前に掲げてた両手の平に発生させてた球状の竜巻を握りしめてに剣状にしたところで合図を出してきた。それに従ってわたし達が一斉にしゃがみ込むと、バッと左右に勢いよく開いた。

――凶鳥の殺翼(コード・フレスヴェルグ)――

フッと頭上を通過したのは、大気というか空間すらも歪ませるほどに強烈な風の刃。その数不明、数えきれない。ルシルの前方200度に拡がる風の刃は無数の幻影を斬り飛ばし、7本の槍によって巻き起こった粉塵を斬り裂いて、倒れ伏してるレオン(仮)を庇うような位置取りなガーデンベルグに迫る。

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

――風雅・斬烈閃――

ガーデンベルグが片手剣を振るって連続で放ったのは風の刃。初撃は搔き消されて、2撃目も消されて、最後は剣を捨てて両手で風の刃を鷲掴んだ。

――勝神の投閃(コード・ガングラーズ)――

ルシルはさらに追撃のための大きな光槍を作り出して、「ユルソーンを出せ!」って声を荒げながら投擲。ガーデンベルグは風の刃を握りつぶし、迫る光槍を右脇に挟み込むようにして受け止め、軌道をレオン(仮)から外してから解き放った。

「ユルソーンを使えって? 冗談。それはつまり、お前らを殺すってことだぜ? どんな呪いにかかって死ぬのが望みだ? 1年間苦しみ抜いて死ぬ呪い? 1年間ハッピーになるが死に際に全身から血を噴き出して死ぬ呪い? いろいろあるが・・・、俺がユルソーンを抜く相手はお前じゃない」

ガーデンベルグの“いろいろあるけど”の先はよく聞き取れなかくて、ルシルが「なに?」って聞き返すけど、アイツはそれに答えずに「あぁ、時間切れだ」って肩を竦めた。

――創世結界フィエスタ・デ・デスペディダ――

その時、世界が一変する。岩石地帯だったのに足元が草原になっていく。これはフォード(仮)の「創世結界!」だ。問題はそれだけじゃなくて「ガーデンベルグ達が・・・!」居なくなった。結界内に入れられたのはわたし達だけなんだ。

「やられた・・・! くそ、くそっ、くそぉぉぉぉぉぉ!!」

――害神の投焔(コード・ボルヴェルク)――

怒声を上げながら光の如き輝く炎槍を振るって、辺りの草木を一瞬で炭化させてく。そんなルシルの様子を離れたところで見守ってると結界が揺らぎ始めて、フッと音もなく完全解除された。ぐるりと周辺を見回してもガーデンベルグ達の姿はやっぱりない。

「ルシル副隊長・・・」

「ルシル」

「・・・大丈夫だ。予想外の再会だったから、自身のコントロールが乱れた。目的だったクリスタルスカルは無事に回収できたんだ、さぁ帰ろう」

ルシルの言うようにとりあえずは任務完了だ。そういうわけで、わたしたち特騎隊と遠くに避難してくれてた武装隊と一緒に本局へと帰還した。トランスポートホールで武装隊と別れ、ひとまず「お疲れ様。各騎オフィスにて待機」ってみんなに指示を出しておく。みんなは「お疲れ~」って労い合いながらオフィスへ向かうのを見届けて、隣に立つルシルとアイリを見る。

「ルシル、アイリ。クリスタルスカル、わたしが預かるよ。このまま保管庫に向かうし」

「あ、ああ。付き合うよ」

「ルシルが行くならアイリも行くぅ~♪」

「そう? じゃあお願いしようかな」

ルシルとアイリの2人を連れて保管室へ向かう。まず監視室で手続きを済ませる。そして厳重なゲートを潜って長い廊下を進む。30mの廊下の合間には、魔力の壁が5枚と展開されてる。そこを通過することで監視室では探られなかった隠し持った異物を発見できたり、変身魔法を見破ったり、保管室から無許可持ち出しを確認したり、不正局員や偽者を確認するためのものだ。もちろんわたし達にはやましいことはないから、堂々と5枚の壁を通過した。

「「お疲れ様です」」

保管室へ繋がるトランスポート。その前には2人の武装局員が立ってる。その2人にわたし達も「お疲れ様です」と労い、トランスポートに入る。一瞬で転送が済んだ。目の前に広がるのはありとあらゆるロストロギアが保管されている巨大なホール。無限書庫の未整理区画みたいに無重力になっていて、壁面から天井まで厳重な特殊金属のロッカーが設けられてる。

「俺が持っていくよ」

「え、でも・・・」

「君もアイリもタイトスカートだろ? 俺に下着が見られてもいいなら任せるが」

「あ・・・!」

「じゃあアイリ行くぅ~♪」

こういう時のアイリはホント強い。というか、女の子としての恥じらいが決定的に足らない。ルシルはそういう子は好みじゃないらしいし、そもそもアイリは娘みたいな扱いだ。ほら、ルシルが「却下。お前も留守番だ」ってアイリの頭を優しくポンポンした。

(あれいいな~、羨ましいな~)

正直アイリの立ち位置は羨ましい。いや恋人という関係には発展しないだろうけど、本当に親しい関係って感じだもん。アイリの「はーい」って残念そうだけど嬉しそうでもある返事を聞きながら、ルシルがクリスタルスカルをしまいに行くのを見守る。“T.C.”が狙う物品は特に重要度が高く、用意されたロッカーはわたしたち魔術師の魔力によって硬化・封印されていて、魔術師の神秘に反応して開錠できる仕様だ。

「待たせたな」

ルシルが戻ってきたことで保管室での用事も終わって、わたし達もオフィスに向かおうとしたその時、今ここに居ないはずの後ろ姿が視界の端に入った。ルシルが「すまん、ちょっと行ってくる!」って、その後ろ姿を追い駆けた。

「「ルシル!」」

わたしとアイリもルシルを追って、ルシルと向かい合ってる「すずか!」の名前を呼んだ。わたし達に気付いたすずかは「あ、シャルちゃん、アイリも! ちょっとぶり~!」って手を振ってくれたから、わたしは「あ、うん、ちょっとぶり」って手を振り返した。

「六課はミッドに本部を置いてるんでしょ? どうして本局に・・・?」

「えっと、六課の守秘義務もあるから詳しくは話せないけど、私はこの子たちの最終メンテをするために少し・・・」

そう言ってすずかは展開したモニターにある映像を表示させた。映ってるのは狼形態時のザフィーラほどの大きさの金属で出来た白銀色の狼、その数12体。一般家庭用に普及させた動物型インテリジェントデバイスとは一線を画す格好良さ。無骨だけど洗練とされたデザインで、小さな子どもに人気が出そう。

「戦闘用か?」

「うん。対フッケバイン用・・・というか、対魔力無効化戦力用の特殊デバイスだね。これはスカラボのことだから話せるんだけどね。なのはちゃん達みんなの兵装は完成してるし、今日のフッケバイン一家との戦闘でも十分活躍できたんだけど、どうしても戦力が足りなくて。そこで以前から開発してた、自立型戦闘用デバイスを魔力駆動じゃないモデルに改修したんだ。なのはちゃん達の兵装でも換装できるようにしていて――」

狼型デバイスの名前らしい型式がモニター端に表示されてて、早口でいろいろと話し始めた興奮気味なすずかの言葉を若干スルーしながら「SL-FB:Type-W・・・?」ってポツリと口にすると、すずかは「あ、うんっ。スカリエッティラボ・ファイティングビースト、タイプウルフっていうのが正式名だね」って教えてくれた。

「タイプウルフって、他にもバリエーションみたいなの在るの?」

「そうだよアイリ。陸戦用のタイプウルフ、空戦用のタイプイーグルの2種だね。海戦用のタイプシャークとか考えたけど、あんまり実用性が無いような気がして断念。ウルフの兵装は尻尾はマニピュレーターで、各種兵装と接続することで換装できるんだ。ストライクカノンとかグラディエーターとか、さらにチェーンソーブレード・エクスキューター、高周波ブレード・グリムリーパー、パイルバンカー・スコーピオンといったもの。遠距離攻撃用には背面のレールガン1門! タイプイーグルの兵装は――」

目を輝かせて説明を始めるすずかにルシルが「ちょっ、ちょっと待ってくれ、すずか!」って止めに入った。ピタッと話を止めたすずかはカッと顔を赤くして、「ごめんね! つい夢中になっちゃって!」って平謝り。

「いやいいんだ。すずか、本当に暇な時でいい。エヴェストルムの修理を頼めるか?」

「え? う、うん、もちろんだけど・・・。ちょっと時間を貰うかも」

「構わないよ。おそらくT.C.との戦闘ではエヴェストルムはもう使わない」

「そうなの? なら何を・・・あ、まさか、グングニル?」

「ご明察。敵の幹部級は神器でないと傷付けられないからな。相応の武器が要る」

ルシルからそう聞いたすずかがわたしの方を見て「大丈夫?」って聞いてきた。これまでは魔術でなんとかなってきたけど、神器が必要になるようなことはなかった。神器でようやく戦える相手が出てきた。それは神器無し状態のルシルの強さを知ってるなら誰もが抱く危機感だ。

「なんとかして勝つよ。でないと、何のための特務零課か判らないもの」

「・・・うん。じゃあ預かっておくよ。・・・あ、これは伝えておかないと。ルシル君。トーマの救出、無事に成功したよ。六課預かりの嘱託待遇になるみたい」

「そうか! それは良かった! 今日の任務で気の滅入る事があったからな。嬉しい知らせだよ。・・・じゃあ、すずか。よろしく頼むよ」

「うん、任せて! しっかり直しておくから!」

「それじゃ、わたしも行くよ。またね、すずか」

「うん。またね、シャルちゃん」

「バイバーイ」

「バイバイ、アイリ」

すずかと手を振り合ってから別れて、トーマが無事に戻ってきて良かったねって話をしながらわたし達はオフィスへ向かった。
 
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