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GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり

作者:日本男児
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間章
  間章1 虜囚の嘆き

 
前書き
間章編スタートです。
今回の出来事は時系列的には第9話〜第11話の間、つまりイタリカ戦ぐらいの出来事です。途中、回想シーンがあり、そちらの方は第2話前半の時の出来事です。
分かりにくかったらすみません。

注意書き 
・ショッカーの非人道的な面が出てきます。
・放射能及び放射能障害に拒否感、トラウマを持つ方は閲読時、不快感を持たれるかもしれません。
それでも読みたいという方はショッカー敬礼をしてからどうぞ!!

「イッー!!!」
 

 
日本エリア 四国地方 極秘収容所


ここは四国地方某所にある帝国軍や連合諸王国軍の捕虜が収容されているショッカーの極秘の捕虜収容所の一つである。この捕虜収容所は各エリアに点在する帝国戦の捕虜収容所の中でもショッカーに対して『反抗的』という烙印を押されたものが集められていた。(従順な捕虜は別の収容所に移送済み。)
そこでは収容者達はA、Bの2つのグループに分けられ、それぞれ待遇が異なっていた。



「おら!手を止めるな!働けぇ!!汚らしい愚帝の駄犬がぁ!!」


「何を休んでいるのだ!!帝国の卑しいクズ共が!!さっさと歩け!!」



闇夜の薄暗い鉱山の坑道に戦闘員達の怒号が響く。首輪を付けられた収容者はそれを聞いて鶴橋をより強く握りしめて戦々恐々と黒色の鉱石を採掘する。


この収容所の中には鉱山があり、Aグループに入れられた捕虜達がここで強制労働をさせられていた。Aグループは「平民や奴隷の出身」の者達……つまり、帝国との講話交渉において『利用価値の無い』と判定された捕虜が集められ、ここで強制労働をさせられていた。


今日も坑道ではAグループに属する何百人もの収容者が灰色のボロ切れのような作業服で虚ろな目をして採掘を行っている。
その光景ははっきりいって異常だった。―というのも彼らの表情が暗いからでも、栄養失調でガリガリにやせ細っているからでもない。皆、一様に手をプルプルと痙攣させ、貧血や極度の倦怠感からフラフラと歩いていたのである。
それだけならまだいい方で中には作業中に吐瀉物を撒き散らす者や血便を垂れ流す者までいた。


「鉄の味がする……何でなんだ……しかも髪の毛まで抜け落ちるし…おかしいぞ」
「まただ……また吐き気が……おげぇぇぇ!!」


現在、採掘しているこの鉱山は収容者達には『石炭の鉱山』と説明してるが実際はそうではない。ここは幻の超放射能原子……サタンニウムの鉱山なのである。
サタンニウムはウランの数百倍もの放射能を持つ非常に危険な物質である。重度の被爆の危険性があり、本来なら高性能AIアンドロイドであるヒューマギアにさせる仕事なのだが「ただでさえ『お荷物』となっている利用価値のない捕虜を処刑する位なら。」とAグループの収容者に採掘させているのである。
そしてショッカーの思惑通り、既に作業を行っている収容者の内、実に7割が体調不良を訴えており、その内なんと半数が既に死亡していた。

もしも収容者達がショッカー世界や日本世界出身だったら自分達を襲っている症状が「放射能障害」によるものと気づけただろうが、放射能どころか物理学すらあまり発展してない異世界出身の彼らにそのことを見抜けるはずもなかった。



「看守の奴らめ、絶対に何か隠してやがる!でなきゃこんなにバタバタと人が死ぬわけがない!!こんなところすぐに脱走してやる!!」


「やめとけ……逃げたとしてもすぐに捕まって拷問にかけられるぞ」



何人もの捕虜が脱走を試みたが徹底的な監視体制を敷いている収容所側の方が数枚も上手であり、すぐに捕らえられてしまう。捕まってしまえば火炙りや電流を流されるなどの徹底的な拷問を受けて牢屋に戻される。拷問する側もプロであり、簡単に死ねないように加減をしているので逆に収容者達の苦痛を煽っていた。
余りの拷問に耐えかねて舌を噛み切って自殺してしまった捕虜も出ていた。
 

「あんな拷問をされる位ならいっそ死んだ方がマシだ」
  

「クソ!クソ!異世界侵攻でおいしい思いができると思ったのに……こんなことなら帝国軍になんか入るんじゃなかった」

  
「歯向かっても余計な体力を使うだけだ。何も考えず与えられた仕事をこなした方が身のためだよ。たとえ明日、死ぬとしてもな」


そう言って2人の捕虜は再び黙って採掘を続けた。


そんな非人道的な扱いを受けているこの収容所の捕虜達の中にも例外が存在していた。それがBグループである。



「ショッカーか……よくあんな悪魔のような軍勢と戦って生き残れたものだ……」


そう言うのは帝国の属国、エルベ藩王国の国王、デュランである。同捕虜収容所の独房で鉄格子の窓越しに月を見上げながら呟く。今夜は半月であり、デュランにまるで戦に破れてしまった自分の心そのものを眺めているような気分にさせた。


彼のいるBグループは反抗的な者の中でも「貴族や王族の出身」と判断されたものが選ばれた。彼らは講話交渉や異世界征服計画においてショッカー側にとって『利用価値のある捕虜』であるため、ほぼ一日中、薄暗い独房で過ごす生活を強いられるだけで済んでいる。私的感情で拷問や暴行を加えようとする看守が後を絶たないという点さえ除けば命まで取られることはないため、Aグループとは天と地ほどの差があった。



デュランは右手と左足を失っていることから強制労働や人体実験のモルモットにも適さないので本来ならBグループ以前にガス室にいてもおかしくないのだが属国とはいえ国王という非常に高い身分にいる人間のため、戦後を見据えて生かされていたのだ。
 


「儂はあの猛攻を生き延びた……いや、生き延びてしまったというべきか」


ため息をつきながらデュランはここに至るまでの出来事を思い返す。







数か月前―。



「連合諸王国軍か………」


デュランは青銅の鎧に身を包み、軍馬の上から30万人もの大軍団を見下ろしていた。
日本世界とショッカー世界に侵攻したもすぐに敗退し、逆侵攻を受けた帝国 皇帝モルトは属国から招集し、連合諸王国軍をアルヌスとオ・ンドゥルゴを奪還すべく組織した。
異世界の歴史上、多国の軍が連合を組み、大軍を組織することなど異例中の異例であった。それだけに1箇所に30万もの軍勢がひしめく様は壮観の一言に尽きる。



「これはこれはデュラン殿。お久しぶりです」


「リィグゥ公か……久しぶりだな」


デュランに声をかけたのは同じく帝国の属国であるリィグゥ公国のリィグゥ公だ。


「敵はアルヌスとオ・ンドゥルゴの2箇所におり、両者共に陣を築き、そこに亀のように立て籠もって兵力を増強している様子。しかし我ら二十一ヶ国、三十万の連合諸王国軍がかかれば外鎧一触でしょう」


「リィグゥ公、戦場で楽観論は禁物ですぞ?ましてや敵は異世界軍。何をしてくるか分かりませんぞ」


「ハハ、これは手厳しい。さて、まずはどこから陥としますかな?」


「オ・ンドゥルゴからにしましょう。ここからならオ・ンドゥルゴの方が近いですからな」


「了解しました。我が国軍にもそう伝えます。では」


そう言ってリィグゥ公は自軍の方へ去って行った。だがデュランは疑問でしかなかった。


なぜ皇帝は連合諸王国軍などを招集したのかと―。
そして、その答えは後に判明することとなる。





「進めぇ!!!」



前衛の騎馬隊とゴブリンやオーク、歩兵の軍団が隊列を組んで前進を開始する。
やがてその軍団はオ・ンドゥルゴの丘の近くまで到達した。


後衛にいたデュランは自陣に近い高台のオ・ンドゥルゴが一望できる地点で待機させ、前衛の軍団を見下ろしていた。
そこへ前衛の軍団の伝令兵が報告にやって来た。


「報告!前衛のアルグナ王国軍、モゥドワン王国軍、リィグゥ公国軍、オ・ンドゥルゴへの前進を開始!」


「うむ、帝国軍とは合流できたか?」


「それが……帝国軍の姿が一兵も見えません!」


「何だと!?」
 



リィグゥ公らがいる前衛の軍団にも動揺が走る。本来ならここで帝国軍と合流している筈だったからだ。


「帝国軍はどこだ!?後衛すら残さぬとは……。まさか既に敗退して―。」


突然、「ドォォン!」という轟音や「パパパパ」という連続した音が鳴り響き、地面の土と共に生き残った連合諸王国軍の将兵達を文字通り、吹き飛ばし、なぎ倒す。



彼らは何が起こったか分からずにただ右往左往するしかできなかった。
その間にも爆発音と悲鳴がこだまする。もはや一方的な殺戮である。


「何だ!?敵の魔法攻撃か!?」


「こんな魔法、見たことがない!!敵の姿も見えておらんぞ!!」


「亀甲隊形だ!!はやく!!」


リィグゥ公の合図で盾を掲げた歩兵が互いに集まって密集隊形をとる。この世界の常識からすれば大盾を持った歩兵が密集する亀甲隊形は弓矢などの"飛び道具"には絶大な防御力を発揮する完璧な防御陣形なはずだった。


しかし、今度は密集した歩兵達の近くで爆発が起き、リィグゥ公が吹き飛ばされる。


「う……何が…何が起こったんだ?」


起き上がろうと顔を上げたリィグゥ公が目にしたのは爆発の衝撃と爆風で臓物を撒き散らしながら千切れ飛ぶ自軍の兵士達だった。


「こんなもの……こんなもの戦ではない!!戦であってたまるか!!」

 
刹那。


ドォォォーーーン!!!


リィグゥ公のいたちょうどその地点に砲弾が飛んできてリィグゥ公の肉体はバラバラに吹き飛ばされてしまった。



一方その頃、オ・ンドゥルゴの陣地では―。
 

「ワッハハーー!!下賤な異世界人めが!このマシンガンスネーク様からの洗礼を喰らえ!!」


ズダダダダダ!!!!


「バァーフォー!!この俺、タイホウバッファローの砲撃を生きて帰れるかなぁ!!」


ドォォォーーーン!!!
 

「ズゥーーカーー!!大首領様に見放された哀れな異世界軍将兵はさっさと肉塊になってしまぇぇ!!」

 
ドーーン!!ドーーン!!


オ・ンドゥルゴ基地の陣地ではマシンガンスネークやタイホウバッファロー、カメバズーカなどの遠距離攻撃が可能な怪人達の制圧射撃が生き残った兵士達の命を容赦無く摘み取っていく。砲撃地点には泥土に埋もれた人間だった物と金属の山が出来上がっていた。
     

「敵に慈悲はいらん!!皆殺しにしてしえぇぇ!!!」


「「「「イーッ!!!!」」」」



後衛にいたデュランはもはや戦闘ではなく虐殺と呼ぶべき、一方的な攻撃を目にした。震える声でポツリと呟く。


「丘が噴火でもしたのか…?これが…敵の攻撃だというのか?」


それからこの地獄のような光景を眺めて―。 


「一旦、自陣の方へ退くぞ。体制を立て直すのだ」


デュランは生き残った数少ない前衛の軍団と共に命からがら自陣の方へ撤退した。中には錯乱状態からかまともに歩けず、獣のように地べたを這いずり回る者もいた。


その夜、自陣の天幕の中で昼間の戦いでなんとか生き残った少数の将軍や王族達を集めて軍議を行った。
軍議に出席した者達の表情は一様に暗く、未知の敵に対する怯えと恐怖が見てとれた。


「リィグゥ公とモゥドワン王は死亡。その他の我ら以外の王は行方不明。軍全体の士気の低下が著しい。おまけに敵に傷一つ与えられておらん」


「三十万はいた諸王国軍が既に半数を下回っている……おまけに敵は遥か遠くから未知の爆裂攻撃をしてきた……これではどうやって敵陣に近づけばいいのだ……」


「……目の効く者の証言ではあの爆裂攻撃は怪異達が放っていたという……」
 

「なんと!?敵の怪異は爆裂攻撃まで使えるのか!?」


「きっと帝国軍は先に奴らに既に負けていたのだ!奴らめ、反旗を翻すかもしれない我らの始末を敵に任せたのだ!!ここは撤退すべきだ!!」


様々な意見が飛び交う中、デュランが口を開く。


「このまま逃げて帰るわけにはいかん!!せめて一矢報いてやらねば……」


軍議に参加していた者達がざわめく。
そんな中、デュランは目を見開いて宣言した。


「夜襲を仕掛ける。幸い、今日は新月だ。この闇夜に乗じて敵の背後をつくのだ。万が一を想定して軍の一部はここで待機。いいな?」



それからデュラン達は新月の闇夜に紛れてでオ・ンドゥルゴまで迂回して奇襲を仕掛ける作戦を立て、それを実行に移した。軍の一部を自陣に残したのは万が一、自分達が敗退した時に少しでも生きて敵の情報を国に持ち帰るためだ。




「いいか……音を立てるな、気づかれたらお終いだぞ」


丘の中腹を行進しながら百人隊長が静かに歩兵達に告げる。一寸先すら見えない闇夜の中、諸王国軍は歩をすすめる。
  

しかし突如、紅い火の玉(照明弾)がゆっくりと空から降ってきた。


極めて異常な事態に諸王国軍の将兵達は恐れおののき、訓練された軍馬でさえ恐慌をきたして暴れまわる。
そんな中、デュランだけが冷静に状況を分析していた。


「まさか!!我々の動きが見抜かれていたのか!?!?」


この明るさでは奇襲を意味をなさない。
デュランは馬の腹を蹴り、一気に速度を上げて前進する。


「全軍突撃しろ!!走れェ!馬は駆けよ!!人は走るのだ!!とにかくあの爆裂攻撃が行われる前に……」



ドォォォーーーン!!!
ドパパパパパパ!!!!


一瞬にして連合諸王国軍の戦列が爆炎と発砲音の中に姿を消した。
爆炎の中にいた大半の将兵は贓物と骨と肉と血を撒き散らしながら何が起きたかも分からず死亡することができたが中途半端に重症だけを負った者は長く激痛に苦しみながら息絶えることとなる。

狂気とも言えるその爆裂攻撃は大地を焦がし、周囲の空気が真っ黒になるまで行われた。
しかしそんな猛攻も急にピタッとやみ、辺りがシンと静まり返る。静か過ぎて耳が痛くなるほどだ。


(終わった……のか?)


デュランがそう思い、安堵してしまった矢先―。


「行けぇぇぇ!!異世界の不穏分子を皆殺しにしろぉぉ!!!」


「イーッ!!」
「ギーッ!!」
「キョー!!」 


戦場のあちこちで不気味な寄声が起きた。驚き、辺りを見回すと怪異達が骸骨風の模様の珍妙な黒服や青と黃と赤の派手な服を着た異世界兵を何万人も引き連れてこちらに向かって四方八方から突撃してきた。
敵が突撃してきている。ただそれなのにで空気は振動し、地響きが起こる。


突撃してきた異世界兵の軍勢が連合諸王国軍と激突し、連続した爆発音や断末魔、負傷者の悲鳴や呻きが大地を支配する。
爆裂攻撃から生き残り、ショッカーの戦闘員達と戦うことになった兵士達はそれぞれ違った反応を見せた。
足を引きずりながら逃げ惑う者、無謀にも立ち向かおうとする者、神に助けを請う者、怨嗟を吐露する者、耳を抑えてうずくまる者、恐怖で動けなくなり、命乞いをする者……。


「神様、神様、助けてくださ……グワァ!熱ィィ!!」
「蛮族が!正々堂々と戦え!!」
「ご慈悲を!ご慈悲をください……ギャアア!!」
「溶ける!!顔が溶けるぅぅ!!」


兵士達はそれぞれの思いを口々に叫びながら為すすべなく異世界兵の持つククリナイフやレイピアで切りつけられ、怪異達に溶かされ、焼かれ、引き千切られ
バタバタと倒れていく。



「酷い……我が兵達がこんなにも無残に…」


デュランと兵士達は敵との余りの戦力格差におののき、逃げるべく後方に下がる。しかし自陣との中腹地点まで到達したところで何故か自陣に待機するように進軍していた友軍と鉢合わせした。
友軍の顔には焦りや恐怖が浮き出ており、中には鎧を脱ぎ捨て、何かから逃げてきたように息を咳切った者までいた。
  

「何故、貴様らがここにいる!?自陣で待つように言ったはずだ!!」

 
「そ……それが敵が我が陣に奇襲を仕掛けてきたのです!!陛下こそ、なぜこちらに!?」



(ま、まさか…!!!!)


デュランは自陣の方を見る。丘の向こうにある自陣からは赤赤とした煙が上がり、敵の「イーッ!」という奇声が聞こえてくる。
そしてデュランはやっとある事に気づいてしまった。
連合諸王国軍の兵士達全員が無意識のうちにこの中腹地点に追い立てられていることに。


(包囲しているのか!?奴ら、我々を殲滅するために!?!?)

 

そして後ろを振り向くと異世界兵の一部が何千人も奇声を上げながらデュラン達のいる方に向かって走ってくるのが見えた。

さらにその前には装甲に覆われた騎士らしき"異形"と赤い目とクリーム色の両生類のような"怪異"が先陣を切って行進していた。デュラン達は逃げようにも周囲を包囲されているため、逃げられなかった。


ズン……ズン……ズン………!!
ガシン!ガシン!グゥィィィーーン!!


まるで甲冑を着た騎士が歩くような音とモーターの駆動音のような音、そしてズン…ズンと力ずくにじり寄る音にデュランは目の前に迫る異形の怪異を注視した。
おそらくはあの2人が現場指揮官なのだろう。2人は追い詰められたデュラン達を前に名乗りを上げる。
それに反応するかのように部下の騎士達は国王であるデュランを守ろうと一歩前に出る。


「俺は日本アルプスに住む人食いサンショウウオの怪人、ザンジオー様だ!!至高なるショッカーに歯向かったことをあの世で後悔するがいい!!!」


「俺はクライシス最強の戦士…怪魔ロボット、シュバリアン!!偉大なる大首領様とクライシス皇帝陛下からの勅令により貴様らを始末する!!!」


するとザンジオーと名乗った怪異はシュバリアンと名乗った鉄の人形に対して呆れたような様子を見せた。


「全く、これだからクライシスの奴らは……。最強、最強ってよく自分から言えるな……言ってて恥ずかしくならないのか?」


「うるさい!実際に最強なのだからいいではないか!!」


こちらを無視して会話を続ける。我ら連合諸王国軍のことなど眼中にないようだった。それに対してデュランを護る騎士が拳を握りしめて怒りの声を上げる。


「蛮族が舐めやがって!!我らのことなど取るに足らぬと言うのか!!??」


その騎士の言葉がシュバリアンの神経を逆撫でしてしまった。シュバリアンは叫ぶようにして早口でまくし立てる。


「蛮族だと!?愚劣な異世界人風情が!!??クライシス最強の俺を!?死にたいのか!?そんなに殺して欲しければ今すぐ殺ってやる!!」


すると金属製のカギ爪状の腕を広げ、黄色の光がシュバリアンの胸部に一気に貯められる。


キュイイイイイ………!!!!



「死ねぇぇぇ!!!」


ズガンッ!!!


黄色の閃光がシュバリアンの胸から打ち出され、デュランの前にいた部下達は一瞬にして消し炭となる。衝撃波でデュランも地面に背中を打ちつけて倒れてしまった。


(一体何が起きたんだ?……兵達は何処に消えた…?)


突然のことに何をされたのか分からず唖然とする。さらに頭を強く打ちつけたせいで次第に意識が朦朧としてくる。



「ん?貴様の着ている鎧……異世界人にしては不相応なほど豪華だな……もしや指揮官か?」


「かなり高い身分の者のようだな、戦闘員共!コイツを捕らえよ!!」


もはやこれまでか………。


朦朧とする意識の中、両脇を戦闘員に固められ、拘束される。

こうしてエルベ藩王国、国王デュランはショッカーに捕らえられたのだった。



そして現在に至る。
 

「帝国属国の国王ということもあって他の捕虜に比べればそれなりには厚遇されている。しかし奴らは帝国だけでなくその属国である我が王国も滅ぼす気だ……」



今頃、国では息子である王太子が政務をとっているだろう。だがこのままでは王国がショッカーに為すすべなく蹂躙され、焦土にされてしまうのは時間の問題。
したがって国を救うにはショッカーの実力を知っている自分が王政に返り咲き、有力貴族をまとめて国を取り戻す他ない。

だが現状、頼れるのは宗主国であった帝国ではなく、自分を捕らえている謎の異世界の敵、ショッカーしかいない。

ショッカーに協力を要請すれば見返りとして何を要求されるか分からない。領土の割譲や軍の駐留を認めさせられ、半永久的に支配されてしまう可能性すらある。その場合は最悪、属国以下の植民地同然の扱いを受けることとなる。


(だがそれも皆殺しにされるよりはマシか……国と国民さえ残ればいつかは独立できる)


それに属国として『利用価値』があると
分かればさすがのショッカーでも容易には手出ししてこないだろう。あわよくば自分達の世界で優位な地位に立つこともできるかもしれない。帝国の支配から脱する好機でもある。


敗残の王であるデュランに選択肢は残されていなかった。
後に彼はショッカー側の外交官との面会し、大首領の臣下になることを希望するのだった。
 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか? 
申し訳程度ですがクライシス名物『今週の最強』ネタを入れたました。

今回、ショッカーの非人道的な面が出てきましたが従順な者には福音を、敵対勢力には地獄を与える。そんなショッカーを描きたかったんです。
それと今回でエルベ藩王国属国ルートが確定しました。

次回は帝国視点とショッカーのイタリカ、オ・ンドゥルゴの村々に対する占領政策について書いていきます。それでは……「イッー!!!」 
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