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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第三十八話



「――『イレギュラー』…か……」


「――うん。何か分かったりしないかな、ニアタ」



――バンエルティア号の甲板にて、カノンノはヴェラトローパで復活したニアタと共にいた。
ニアタがこのバンエルティア号に来た事で…悩ませれていた封印次元の残り材料の対処法等、様々な事が助かっている。

…だが、それでもいまだに解決しない唯一の問題……衛司とアルヴィンの行方はいまだ発見される事はなかった。


それで、不意に衛司…『イレギュラー』について気になったカノンノは、博識であるニアタに問い掛けた。

ニアタはカノンノのそれに暫く考えるように唸った後、首を横に振るように小さく動いた。

「…すまない、カノンノ。私もこれまで多くの世界を見てきたが…『イレギュラー』については今回が初めてだ。見たことも、聞いたことも今までなかった」


「…ニアタでもそうなんだ。ううん、ごめんね。私も急に聞いちゃって」



「いや…カノンノが謝る事ではない。…しかし……『イレギュラー』…衛司、といったかな。その少年に何か変化はなかったか…?」


不意にそうニアタが出した、どこか真剣そうな言葉に、カノンノは考えて小さく首を横に振った。


「――ううん。私が見た時はいつも元気そうだったけど…それがどうしたの、ニアタ?」


「そう、か…。…『世界を越える』。言葉で言うなら実に簡単だが、これはそう、容易に口にする程簡単な事ではない。肉体を捨て、様々な世界を見た私でさえ…到着した精神体に障害が起こる事がある。それを…肉体と精神、両方がある状態で『世界を越えた』と聞くと…何か身体に異常があったのではないか、と思ってな…」


「え……?」


ニアタの説明に、カノンノは思わず驚き、呆然としてしまう。


「そんな……でも、私が見た限りだと身体にはなんの変化も――」


「――『身体』を『見た』限りでは、な。外部ではなく、それこそ内部…もしくはドクメントに異常がある確率もある」


「…っ…それは…」



ニアタの出していく言葉に思わず、カノンノは少しずつ顔を俯かせてしまう。否定したい反面、ニアタの正論に否定する言葉が無くなっていく。

その様子に、ニアタは小さく首を横に振った。


「――いや、すまない。あくまで異常がある『かも』しれないという可能性の話なだけだ。私も今までの経験上、肉体と精神両方が無事で『超えた』と聞くのは初めてだったからな。少々、言い過ぎた」



「…ううん、大丈夫。少しだけど『イレギュラー』の…衛司のことが分かったから。身体に異常…かぁ…。帰ってきた時に問いたださないと…」

ニアタの言葉に、カノンノは首を横に振ると僅かに安心した表情でそう言い、甲板から見える景色に視線を移した。
その様子に、ニアタは表情は分からないが僅かに笑みを浮かべているであろう様子で言葉を出した。






「カノンノ…君はよほどその『イレギュラー』…衛司を気に入っているようだね。まるで…片思いの相手を待っている乙女のような顔をしているよ」


「え…!?そ、そんな顔してるかなぁ…私…」


ニアタのその言葉にカノンノは顔を真っ赤にして慌てたような様子でそう言った。


「おや…私は見て思った事を言ってみたのだが…もしや…」


「そ、それは……確かに衛司は優しくて…別段強いって訳じゃないけど頼りになって…格好いいって訳じゃないけど時たま見せる姿が凄く良くて……あれ…?」


「おやおや……」


あまり気付かれたくないのか否定する言葉を出そうとするも逆の言葉ばかり出て言った後に気付き、更に顔を真っ赤にさせるカノンノにニアタは表情があればクスクスと笑っているだろう様子の動きを見せる。



「――『イレギュラー』…乾衛司、か…。会えるのであれば、会ってみたいものだ」


いまだに真っ赤になって少し混乱し始めるカノンノを見ながら、ニアタはどこか楽しみを待つ様子でそう呟いた。



――――――――――――



「――オイ、サレっ!!」


「――っ…やれやれ、何だい?乱暴だねぇ」


――サレの拠点である研究所にて、アルヴィンはサレの胸ぐらを掴みあげていた。
サレを掴み上げるアルヴィンの目には、明らかな憤怒の色があった。


「――ふざけんな。『アレ』はなんだ…!?俺は…衛司は操るだけと聞いて連れてきたんだ!『あんな事』になると分かって俺は連れてきたんじゃねぇっ!」

「ふぅん…なんだ、衛司君の事か。ま、『あぁ』する事は言ってなかったから知らないのは当然だね。でも間違った事は言ってないよ?ちゃんと衛司君は僕の催眠にかかっていて、僕の命令には聞いてくれるんだから」


「テメェ…っ!!」


飄々とした様子で応えたサレにアルヴィンは怒りとともに胸ぐらを掴んだまま銃口をサレの額へと押し付ける。
だがサレは、銃口を押し付けられながらも不気味に笑みを浮かべる。


「なに、僕を撃つのかい?別に撃って殺してくれても構わないよ。人質も助かるし、催眠も解けるっていう一石二鳥だし。ただ…『今の状態』で衛司君が目を覚ましたら…きっと彼、精神と肉体が壊れちゃうよ?それでも良かったら、撃っちゃいなよ」


「…っ…この…外道がっ!」


「ありがとう、最高の誉め言葉だよ」



不気味な笑みを浮かべたままそう言っていくサレにアルヴィンは舌打ち混じりに乱暴にサレを離す。
離されたサレは胸元を直しながら口を開いた。


「それに…僕は彼の『願い』を叶えただけさ」


「『願い』…だと?『あんなの』が、衛司の願いだっていうのかっ!?」


「さぁ、それは分からないけど…僕は彼の『願い』を叶えた。だから彼には暫く僕に従ってもらうのさ。世の中全てギブ&テイク。そうだろう?」


不気味な笑みを浮かべたまま、一つのモニターに映し出される映像にサレは視線を移し、アルヴィンはその様子に再び舌打ちした。


「――さて、ヴェイグにアドリビトムの諸君。君達のいう『絆の力』で、彼は元に戻せるかな?フフ…フヒャヒャヒャっ!!」


モニターに映る映像。それを見ながらサレは呟くと不気味に笑い出した。まるで…狂ったかのように…。



――――――――――――



――声が聞こえた気がした。
聞いていて落ち着いて…守ってあげたくなる声。

――でも…今はそれは『どうでもいい』。



――ただ、ただ今は……



――目の前のものを……『殺』さないと…。




 
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