テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第三十六話
「――私の責任ね…」
――バンエルティア号のホールにて、メンバーのほぼ全員が集まった中、アンジュがそう申し訳なさそうに…重々しく口を開いた。
「…私がもう少し、サレにも警戒して人数を回しておけばこんな事には…」
「…んな事行ったら俺達だって同じだ。簡単な依頼だからって、たった二人で行かせた俺達にも非がある」
アンジュがそう言って俯いていると、ユーリがそう言って周りの全員が頷く。
「…今此処に居ない人の状況は…?」
「メリアは数名を連れて衛司の木刀が残ってた周辺を捜索中、ヴォルトはセルシウスと一緒にいて……カノンノは部屋に閉じこもってる」
「…衛司とアルヴィン…二人が居なくなった事で此処まで状況が変わるなんて、ね」
アンジュはそう呟くと再び俯いてしまう。
ヴォルトは…『自分を残して船に戻れ』という衛司の命令を受けたことで起こってしまった事の責任に、カノンノは…やっと復帰して、自分の絵を信じてくれる支えの存在であった衛司の損失に、酷く追いやられてしまっているのだろう。
「…ただでさえラザリスの事で手一杯なのに…本当に、最悪の状況ね」
「…ですが、起こってしまった以上…今此処で何を言っても二人は戻ってこないでしょう。ラザリスの対策と二人の捜索…その二つを同時にやっていくしかないでしょう」
「……それしか、ないみたいね。皆、状況は最悪だけど…二人の無事を信じて、ラザリスの事と二人の捜索を続けましょう」
ほぼ全員が沈む中、ジェイドの案にアンジュは頷くとそう言葉を出し、それに沈んでいた皆は顔を上げ頷いた。
「…ただ問題はこれから、ね…。結局ツリガネテンボ草の化石からドクメントが採取出来なかったのだから…あとの材料の二つをこれからどうすればいいのか――」
「――ヴェラトローパに、行ってみない…かな…?」
唐突に聞こえたその声に、全員がそちらを向くと…部屋で閉じこもっていた筈のカノンノが立っていた。先程まで泣いていたのか、その瞳は充血しているようにも見えた。
「カノンノ……もう、大丈夫なの?」
「うん…。辛くないか、って聞かれたら正直辛いけど…でもね、思ったんだ。…皆も同じ気持ちで頑張ってるのに…私だけ背負い込んじゃうのは、って…。それにね、衛司が帰ってきた時に私がこんなんじゃあ…きっと衛司に怒られちゃうもん」
「…お嬢様……」
決心した表情でそう言葉を出したカノンノに、ロックスは心配そうな…それでいて安心した表情を浮かべた。
アンジュもその様子を見て一息つくと、口を開いた。
「……分かったわ。だけど…なんでヴェラトローパに?」
「うん。…ニアタにあってみたいの。今足りない材料の事ならきっとニアタなら分かるだろうし…それに、きっとニアタなら…私の絵の事を…私の事を知ってそうな気がするから」
「成る程…だがニアタはラザリスに破壊されて…それにニアタの場所に向かうにしても…ニアタの場所に向かう道は既に外されて通れないんじゃ…」
「いえ…不可能でもないわ。…取り敢えずヴェラトローパに向かう準備ね。…一旦メリア達も戻してこれを伝える必要があるから。…準備が終わるまで皆、一旦解散よ。ゆっくり体を休めて…特にカノンノ、アナタはね」
「…うん。ありがとう…アンジュ」
アンジュとカノンノの言葉を最後に、皆はホールから解散した。
「(…さて、問題は残っていた血痕。…確認出来たのは『衛司だけ』とは…まさかとは思いますが、ね)」
皆がホールを出て行くなか、ジェイドは一人、眼鏡を指で上げてそう考えていた。
――――――――――――
「――っ……此処…は……?」
――長い長い眠りから覚めるような感覚で、僕はゆっくりと目を覚ました。
ぼやける視界に映ったのは…ひび割れた壁と、鉄格子と…牢屋のような部屋であった。
「…あれ…どうして僕は…こんな…とこに……?」
起きたばかりのせいか上手く働かない頭をなんとか起動させて思いだそうとする。
えっと……確か……
「……確かアルヴィンと依頼をしてて…その時にサレが来て…それから……そうだ…っ!!」
ようやく意識を失う前の事を思い出したと同時に、痛みが『足』と『頭』を襲った。
「…そうだ…僕…アルヴィンに『足』を撃たれて…その後に強く殴られて気絶したんだっけ…」
意識を失う前の事を思い出しながら、痛みが走る足を見ると、一応治療はされたのか痛みを感じる位置には包帯が巻かれていた。
「…でも…アルヴィン…どうして……」
「――ぉ、目が覚めたみたいだね」
アルヴィンに撃たれた位置を見ていると、不意に背後から声がかかり慌ててそちらに振り返った。
先程はこのうす暗い牢屋の影で見えなかったのか…そこには研究員のような服装で…眼鏡をかけたどこかジェイドに似たような顔つきながらも、優しそうな雰囲気を出す人が立って居た。
「いやー、心配したよ…。いきなりおんなじ牢屋に人が来たと思ったら、怪我の跡があったしずっと死んだように眠ってるんだもん。うんうん、良かった良かった」
「は、はぁ…ありがとう…ございます。えっと…アナタは…?」
「んー…僕かい?僕の名前はね…――」
「――…バラン。ただのしがない研究員さ」
――――――――――――
「――…で、『星晶剣』の状況は…?」
「――はっ!…完成まで残り数十%です」
――衛司が閉じ込められた牢屋から遥かに離れた一室にて、サレは不適な笑みと共に研究員と話していた。
「うんうん、なかなか上等。さて…それじゃあこっちも本格的な準備に移らないと――」
「――おい、サレ。…アイツは無事なんだろうな?」
サレが話を続ける中、そう――アルヴィンが言葉を出した。
「うん…?あぁ、安心しなよ。彼…いや今は『彼等』か。…彼等は立派な――『人質』なんだからね」
「……チッ」
サレの出した返答に、アルヴィンは舌打ちをする。
アルヴィンのその反応に、サレは不適に笑みを浮かべ続けた。
「そうそう、『彼等』は大事な『人質』。…だから君にはもうしばらく手伝ってもらうよ……アルヴィン君?」
「……………クソが」
サレの言葉にアルヴィンはただただ……拳を握りしめていた。
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