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熊祭り

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第三章

「相手も気付く、それで隠れる」
「相手も鉄砲は気をつけるんだな」
「獣だからな」
「それでか」
「しかも化けものになる直前でな」 
 それでというのだ。
「頭もよくなってる」
「だからか」
「鉄砲の音を聞いたらな」 
「それで隠れるか」
「そうなるからな」
「今はか」
「撃つな」
 兎や鹿達はというのだ。
「いいな」
「ああ、そうするな」
「それじゃあな」
「まずは熊だな」
「そうだ、あいつを仕留めるぞ」
 こう言ってだ、そのうえで。
 山の中をさらに進んだ、そして遂にだった。
 目の前に熊を見た、五平は黒い毛のその熊を見て驚いた。
「何だあの熊は」
「あいつだな」 
 五平もその熊を見て言った。
「間違いないな」
「六畳位の大きさはあるな」
「あれが年取った熊だ」
「化けものになる前のか」
「あれから少し生きたらな」
 それでというのだ。
「化けもの、鬼熊になるんだ」
「鬼熊か」
「ああ、そうなったら人里に降りて牛や馬を攫って喰う」
「人はどうなるんだ」
「人の話は聞かないが牛や馬を攫うんだ」
 人よりずっと大きなそういった家畜達をというのだ。
「だからな」
「それでか」
「ああ、だからな」 
 それでというのだ。
「人を襲っても不思議じゃない」
「それでか」
「そうならないうちに仕留めるんだ」
「わかった、じゃあな」
「これからやるぞ」
 その熊をというのだ、こう言ってだった。
 狙いを定めた、そうして。
 熊がこちらに顔を向けた瞬間にだった、鉄砲の引き金を引いた、すると轟音と共に鉄砲が火を噴いて。
 熊の眉間を弾が貫いた、熊はその一撃を受けてその場に倒れた。五平はその熊を見て祖父に尋ねた。
「これでか」
「ああ、仕留めた」
 太吉は五平に答えた。
「間違いなくな」
「そうなったか」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。 
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