自分にも彼女が

　　　　　　　　　　　　　　　　自分にも彼女が
　波留勇作は茶色の硬い感じのぎざぎざの髪の毛で目は大きくやや切れ長の少年で県内のそこそこの高校に通っている、背は一七〇位で痩せている。
　両親と暮らしていて家には黒猫、ある有名な魔女が宅急便をするアニメの黒猫そっくりの猫で名前はクロという。雑種の雄猫だが。
　勇作は休日の午後リビングでゲームをしながらキッチンで包丁を使っている母の雪路に言った。
「お母さん、クロだけれど」
「どうしたの？」
「今俺の足の先に猫パンチしてるんだけれど」
「ニャッニャッ」
　見ればクロは怒った顔でそうしている、勇作はそれを見つつ言った。
「ご飯もうないんだ」
「お母さん今料理してるから」
　それでとだ、母は息子に言った、見ればエプロンの後ろ姿が結構艶めかしい。四十代だが肉はあまり付いてなく長い黒髪も奇麗だ。
「だからね」
「俺がなんだ」
「ご飯あげてね」
「仕方ないな、けれどさ」
「けれど？」
「変な癖ついたよな」
　ゲームを中断して立ち上がってから言った。
「クロも」
「ご飯の催促で猫パンチするから」
「可愛げのない癖だよな」
「顔はいいけれどね」
「確かに顔はいいよ」
　クロのその顔を見つつ言う。
「それはさ」
「けれどっていうのね」
「ああ、毛並みもいいけれど」
「猫パンチはなのね」
「可愛くないな、まあご飯あげるからな」
　クロにこう言ってだった。
　実際にご飯をあげた、するとクロはキャットフードを食べはじめ猫パンチはしなくなった。だがこうしたことはいつもで。
　勇作はクロを顔だけの猫だといつも言っていた、噛んだり引っ掻いたりはあまりしないがその猫パンチに思うのだった。
　そのクロがある日だった。
　家に白猫を連れてきた、見事な顔立ちの奇麗な毛並みの猫だ。母後ろ姿だけでなく前から見ても垂れ目に泣き黒子で紅の大きな唇で胸も大きい彼女が言った。
「お友達かしら」
「そうじゃないかな」
　勇作はその母に応えた。
「仲いい感じだし」
「そうよね」
「というかこの猫まさか」　
　今度は父の晋作が言った、丸眼鏡で細面にオールバックの一七〇程の背の男だ、髪の毛の色と顔立ちは息子に受け継がせている。
「女の子じゃないか？」
「雌？」
「そうじゃないか？」
「あっ、確かに」　
　勇作がチェックするとそうだった。
「女の子だよ」
「じゃあ彼女か」
「彼女っておい」　
　勇作は窓のところに白猫と一緒にいるクロに言った。
「俺もまだいないのにかよ」
「ニャン」
　それがどうした、そうした返事だった、そして。
　クロはその白猫と共にご飯を食べはじめ家の中で一緒に遊びだした、それからクロはその白猫を毎日みたいに家に連れてきて。
　いつも一緒にご飯を食べて遊ぶ様になった。
「ニャンニャン」
「ニャーーーー」
　その様子はまさに恋人同士だった、だが。
　その二匹を見て勇作は両親に言った。
「あの白猫首輪してるしな」
「絶対に家猫だな」
「そうよね」
「ああ、だからな」　
　それでというのだ。