レーヴァティン
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第百六十七話 近江に入りその八
「それこそが勝つにあたって最も重要な要素だ」
「兵は多いに限る」
「全くだな」
「左様ですね」
「だからだ」
それでというのだ。
「多くの兵をだ」
「送ってですね」
「勝っていく、いいな」
「それでは」
「そしてだ」
英雄はさらに言った。
「まずは美濃及びな」
「尾張にですね」
「入る」
「おそらくその時には」
謙二は英雄に話した。
「降る国人達はです」
「より多くなっているな」
「そうなっているでしょう」
「間違いなくな」
「そうしてですね」
「戦わずしてな」
そうしてというのだ。
「降らせていく」
「このまま」
「俺は何度も言うがな」
「戦いはですね」
「否定しないが」
それでもというのだ。
「無駄な戦はしない」
「左様ですね」
「避けられない戦だけを行う」
あくまでというのだ。
「避けられる戦はだ」
「出来るだけ避けられますね」
「負けるかも知れないからな」
「どういった戦でも」
「そうだ、戦はどれだけ有利でも絶対に勝つとは限らない」
大軍を以てすれば勝てる可能性は高いがというのだ。
「敗れる可能性は常にだ」
「存在しますね」
「博打に似ている」
戦はとだ、英雄は言い切った。
「確実というものがないからな」
「それぜよ、戦はどんなに有利でも負ける時は負けるぜよ」
当季も言ってきた、今英雄のところには六人いるのだ。その六人と今は共に話をしているのである。
「そうなるぜよ」
「そうだな」
「十倍の敵で戦場で堂々と戦っても」
「敗れる場合がある」
「光武帝がそうじゃ」
後漢を開いたこの皇帝の話もした。
「無茶苦茶な数の敵にぜよ」
「勝ったというのな」
「ある程度誇張があるにしても」
「圧倒的な数の敵に正面から勝った」
「そのことは事実ぜよ」
まさにというのだ。
「本当に戦は確実なものではないぜよ」
「だからだ」
「おまんも出来るだけじゃな」
「戦場では戦わない様にする」
その様にするというのだ。
「やはりな」
「降らせれるんじゃな」
「戦うよりもな」
戦場でのそれよりもというのだ。
「それに徹する、そして俺は城を攻め取ってもな」
「無駄な血は流さんのう」
「撫で切りはしない」
皆殺し、それはというのだ。
「そして人を売り飛ばすこともな」
「そっちもじゃな」
「しない」
絶対にというのだ。
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