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戦国異伝供書

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第九十九話 厳島の合戦その三

「まさにじゃ」
「その通りになっている」
「そうなった、だからな」
 それでというのだ。
「この度はじゃ」
「読み通りであるので」
「よいことじゃ」
「左様でありましたか」
「陸から大軍で来られた方が厄介であった」
 元就にとってはそうだったというのだ。
「同じ奇襲は二度は通じぬしな」
「どうすべきかとなっていましたか」
「左様、しかしな」
「厳島に大軍が来るとなると」
「島は逃げ場所がない」
 だからだというのだ。
「大軍といえど袋の鼠にすれば何ということはない」
「だからですな」
「陶殿には厳島に来て欲しかったしな」
「その様になったので」
「それでじゃ」
「こうなればですな」
「こちらのもの、もう半分はな」
 既にというのだ。
「勝った、ではな」
「これよりですな」
「父上の采配通りに動けば」
「それで、ですな」
「勝てる、では行くぞ」
 息子達にこう言ってだった、元就は軍勢を率いて厳島に向かった。だがその厳島に船団で向かう時にだった。
 嵐でだ、志道が言ってきた。
「殿、ここはです」
「嵐だからか」
「はい、海に出ることは」
「いや、今こそじゃ」
 まさにとだ、元就は言うのだった。
「吉日じゃ」
「吉日ですか」
「そうじゃ、勝ち戦に出るな」
 その日だからというのだ。
「吉日じゃ、だからな」
「海に出ますか」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「出るぞ、よいな」
「それでは」
「厳島に行くぞ、今陶家の軍勢はな」
 その彼等はというと。
「今はな」
「まさにですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「宮尾城を攻めんとしておってな」
「そしてですな」
「あの城に釘付けになっておる」
「二万の大軍が」
「あの城はそう簡単には攻め落とせぬ」
「左様ですな」
「二万の大軍で攻めれば攻め落とせるという偽りの話を流したが」
 これも元就の策だったのだ。
「無理に急いで築かせたのでどうもな」
「だからですな」
「そうじゃ、大軍で攻められると落ちる」
「陶殿はその情報に従って」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「実際に大軍で攻めてきたが」
「実は、ですな」
「宮尾城は堅固な城じゃ」
「そう簡単には攻め落とせませぬ」
「その宮尾城に釘付けにさせて」
 そしてというのだ。
「これよりじゃ」
「我等は城を囲む陶家の軍勢を攻めるぞ」
「わかりました」
「はい、それでは」
「海に出るぞ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 元就は大雨と暴風の中軍勢を船団に乗せてそうしてだった。
 厳島に向かった、その途中でだった。
 元就は既に合流していた村上水軍を見て隆景に話した。 
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