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戦国異伝供書

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第九十九話 厳島の合戦その二

「あの城には陶殿の大軍が来る」
「二万のですな」
「その大軍を確実に防げるとなるとな」 
 それだけの采配と武勇の持ち主はというのだ。
「お主じゃ」
「だからですか」
「お主には先に城に行ってもらってな」
 そのうえでというのだ。
「城に入ってじゃ」
「城主として」
「戦ってもらう、よいな」
「それでは」 
 元網は兄に確かな声で答えた。
「その様に」
「宜しく頼むぞ」
「それでじゃ」
 元就はさらに話した。
「わしは太郎、二郎と共にじゃ」
「三人で、ですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「宮尾城を攻める陶家の軍勢にな」
「襲い掛かるのですな」
「そして陶家の軍勢を退け」
 そしてというのだ。
「大江浦には四郎が向かってもらうが」
「そこではですか」
 隆元は父に応えた。
「宮尾城で戦うですな」
「陶家の軍勢はそこまでじゃ」
「逃げるので」
「先回りをしてな」
 そしてというのだ。
「先に船を沈めておき」
「逃げられない様にしておく」
「そうすれば後はじゃ」
「厳島で、ですな」
「陶家の軍勢を殲滅する」
 こう隆元に話した。
「その様にする」
「まさにこの一戦で、ですな」
 元春も言ってきた。
「全てを決めるのですな」
「そうじゃ、そして既に備えはしておる」
「尼子家に対して」
「二万の軍勢のうちのおおよそを置いておる」
 まさにというのだ。
「兵はむしろじゃ」
「尼子家に多く配していますな」
「全く。敵が一度に多くおるとな」
 それだけでとだ、元就は苦い顔で話した。今その状況になっているからこそ余計に実感して言っているのだ。
「難儀であるな」
「全くですな」 
 元春も同感だった。
「そうなるとどうしてもです」
「力を両方に割かねばならぬ」
「それだけで厄介です」
「全くじゃ、だから陶家はな」
 今から戦うこの家はというのだ。
「ここで倒しておく」
「そうしてですな」
「憂いはなくしておく」
 その様にするというのだ。
「完全にな」
「しかし父上」
 隆景が言ってきた。
「陶家は陸からは来ませぬな」
「そのことじゃな」
「陶殿はどちらかといいますと丘での戦が得意と見ますが」
「安芸の国境は固めておる」
 元就は隆景の問いに笑みで答えた。
「それもかなりな」
「だからですか」
「先に陸から攻めてきて負けておるしな」
「その堅固な備えを見てですか」
「陶殿は厳島から来ることを選ばれたのじゃ、いや」
「その様にですな」
「わしが来る様にさせたがな」
 元就は笑って述べた。 
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