曇天に哭く修羅
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第三部
Good bye My Essential
前書き
第三部、完。
_〆(。。)
ここは空港。
「やれやれ……。何も言わずに帰ろうとは酷い奴じゃのう流永よ」
「負け犬の帰郷に見送りは要らぬ」
流永の口から出たのは自虐の言葉だが彼の心には満足しかなかった。
長きに渡って探し求めていた答えを弟子の青獅が見せてくれたのだから。
(大切なものを捨てずとも、人は何処までも強くなることが出来る)
70年以上前、自分の目前に居る《黒鋼弥以覇》と戦って敗れた原因はそれだ。
捨てなければならない。
そうしなければ強くなれないと思い込んでいたからであり、捨てずとも構わないと信じ切れなかったから。
中途半端だったのだ。
だから青獅が到達した魔晄極致に至れず限界を超えることが出来なかった。
もはや悔いは無い。
それを知ることが叶った以上、流永は闘技者として生きる意味を無くしていた。
黒鋼打倒に人生を賭けるほど弥以覇への執着が有ったのに今はそんな気持ちが湧いてこない。
「今はさっぱりした気分よ」
「のう流永よ。もう一度だけ儂と戦ってみる気はないか? 今のお主なら……」
「儂の槍は折れた。戦る資格は無い」
流永は笑みを浮かべる。
そして弥以覇の付き添いで空港まで来た隣の焔に対して忠告していく。
「黒鋼焔よ。お前の弟子は強かった。されどこのままでは黒鋼の劣化コピーから脱却できまい。例え【真打】を会得してもの」
流永の後ろ姿を見送りながら弥以覇は力を抜いたように大きく溜め息を吐く。
「共に時代を駆け抜けた好敵手がどんどんと去っていくのう。どれほど強くとも心の痛みからは逃れられんか」
弥以覇と共に空港を出た焔は流永に言われた言葉を思い出す。
このままだと紫闇は黒鋼の劣化コピーにしかなり得ないだろう。
彼は黒鋼でなく立華紫闇だから。
このまま成長しても、紫闇は本当の意味で焔と並び戦うことが出来ない。
「出会って4ヶ月。強くなったね紫闇は。けどそろそろ潮時か。レイア兄さんにも話をしておくことにしよう」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
領域内戦争が終わった後、紫闇と青獅は病院送りになってしまった。
「いいザマじゃん佐々木」
「君もな立華あぁぁ」
二人のベッドは隣同士。
「おにいちゃん。わたし達が仲直り出来たのは立華さんのおかげなんだよ?」
青獅は凜音に頭が上がらない。
「幸せになれよ、二人とも」
「立華。手を出したら殺すよ?」
「出せるか。今の俺は大切なものを捨てずに強くなることに必死なんだから。確かに凜音は可愛いと思うけどさ」
それから暫くして退院を迎えた紫闇は黒鋼の屋敷に向かい、胴着に着替え道場へ。
そこにはレイアと焔の姿。
「じゃあどうぞ、焔」
レイアに促された焔が口を開く。
「立華紫闇。本日を以て君を破門とする」
後書き
次を書くまでは間が空きそう。
_〆(。。)
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