ドリトル先生の競馬
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第十一幕その十
「ないよ」
「そこまで言うのね」
「ある意味先生らしいけれど」
「本当に無欲ね」
「その辺りは」
「無欲ならその分幸せになれるのかな」
王子はここで首を傾げさせて言いました。
「ひょっとして」
「そうかも知れないね、やっぱりね」
「無欲ならだね」
「満足することが多いから」
だからだとです、先生はトミーに答えました。
「そうかも知れないよ、けれど」
「けれど?」
「無欲な人でも不幸を感じたり欲の深い人でも幸せを感じたり」
「そうしたことはなんだ」
「人それぞれで」
それでというのです。
「どう感じるかだろうね」
「それで先生はだね」
「毎日これ以上はない幸せを感じているから」
だからだというのです。
「幸せなんだろうね」
「そうなんだね」
「そしてね」
先生は王子にさらにお話しました。
「他の皆もだよ」
「自分を幸せと感じていたら」
「幸せなんだ」
「主観ですね、若し自分を不幸と感じていたら」
トミーも言います。
「不幸なんですね」
「そうだと思うよ、貧しくてもね」
「それでもですね」
「人はね」
「幸せと感じていたら」
「幸せだよ、逆に大金持ちでも」
それでもというのです。
「不幸と感じていたらね」
「不幸ですね」
「幸せは富によっても決まらないしね」
「やっぱり主観ですね」
「だから僕はね」
本当にというのです。
「主観としてね」
「幸せなんですね」
「これ以上ないまでね、皆はもっと幸せになれるっていうけれどね」
先生は笑ってこうも言いました。
「僕は今最高に幸せじゃないかな」
「そうしたお話ならね」
「先生は実際にもっと幸せになれるよ」
「本当にね」
「今以上にね」
「先生に相応しい人と恋愛をして」
「結婚をしてね」
そしてというのです。
「今以上に幸せになれる」
「そうなれるから」
「だからね」
「ちょっとだけ周りを見る」
「そうしてみたらいいんだよ」
「さて、それはどうも信じられないけれど」
先生は皆の言葉に笑って応えました。
「そうだったらいいね」
「というか先生やっぱり無欲だよ」
「幸せも多くのことも求めないし」
「今の状況で満足しているから」
「もっと幸せになろうってね」
「そう思ったらいいのに」
皆は心から思います、ですがこの思いだけは先生には届きません。それで皆やれやれとなります。それは王子も同じで。
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