おっちょこちょいのかよちゃん
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59 親分との再会
前書き
《前回》
かよ子達は石松の死後の話を聞く。石松は平和を司る世界にて刀を使う事のない生活をしていたが、ある時、トロツキーという男が現れて石松の住む地を襲撃する。フローレンスとイマヌエルの介入によりトロツキーは去るが、石松達はその世には戦争を司る世界が存在していると知る。そしてフローレンスとイマヌエルによって石松達の刀は強化された!!
かよ子は石松の話からある事を一つ聞きたくなった。
「それじゃ、石松はこっちに戻ってくる前にもその異世界の敵と戦ってたの?」
「いかにも。その争いを司る世界の者共が日本赤軍などという奴らと同盟を結んでな。それで奴らの行き来が激しくなったのだ」
かよ子は気づいた。アレクサンドルとアンナの兄妹が異世界の杖を持つ自分を倒そうとしていた事も。オリガが丸岡によって日本に連れて来られた時、長山を攫って自分を殺害しようとした事も。そして大雨の夜に奥平がバーシムを連れて大雨で町を混乱させ、杖と隣のおばさんの護符を奪いに来た事も。何もかも日本赤軍の手引で異世界の人間が安易に行き来できるようになり、元の日常が崩れてしまったからこうなったと改めて気付いた。
「ねえねえ、石松う〜」
まる子が石松を呼ぶ。
「アンタ次郎長の子分でしょ〜?アンタの親分は『そっち』にいないのお〜?」
まる子にしては呑気な質問だった。
「勿論、おる。では親分との再会の経緯を話そうではないか」
戦を司る世界との戦いの最中、石松達は相手に自分達の世界に侵食されないように戦い続けていた。
「はあ、いつになったら終わるのやら」
大政は次々に相手を撃退しながら疲れている様子を見せた。
「ああ、あの世界そのものを滅ぼさねばならぬようだ」
その時の事だった。どこからから声がした。
「お主ら。拙者抜きでよくぞここまで戦ってこられたな」
「え?」
石松達は振り向いた。
「話はフローレンスやらイマヌエルとやらから聞いておる。お前らにまた会えて嬉しいぞ」
石松はこの声を忘れていはいなかった。あの、自分が世話になった清水次郎長だった。
「お、親分!!次郎長親分ではありませぬか!!」
石松も、大政も、小政も、綱五郎も、全ての者達が親分との再会に涙した。
「やっと拙者もこの地に来たる事ができた。これもあの両人のお陰だ。だが、此処も安心ではないと聞いた」
「はい、今単なる殺し合いのみを正義とする世界の人間がこの地を襲っているのであります」
「やはりな。その者達に屈せぬように私も支援をする。今、我々が嘗ていた世界の人間をこの地へ送り届ける為に今、フローレンスとイマヌエルは今増員を図っておる」
「そうですか。それなら安心かもしれません」
「拙者も全力で戦う。他の者も力になってくれるぞ」
「はい!」
皆は更なる思いで今後の戦いに臨もうとした。そして何処からか声が聞こえた。
『皆様、全体に呼びかけたい事がございます。本部への集合をお願い致します』
フローレンスの声だった。
「我々皆に呼びかけたい事だと?何かあるのだろうか?」
「まあ、行ってみようではないか」
皆はフローレンスとイマヌエルがいる本部へと向かう事にした。
平和を司る世界の本部。そこはフローレンスとイマヌエルが常駐している。その集会所部分に多くの人がいた。
「全ての人間を呼び寄せているのだから、面積を広げた方がいいな」
イマヌエルは集会所を拡大した。拡大とはいえ、相手には窮屈感を覚えさせない為に広く見えるよう錯覚させるだけである。石松達もいた。その場には様々な人種が集まっている。
(一体、全ての者をかき集めて何を呼び掛けるというのだ?)
石松はそう思いながら集会所の場にいた。
「皆様。お集まりいただきましてありがとうございます。本日皆様にお集まりして頂きましたのは大事な事でございます」
「今、この世界は別の世界の人間に狙われている。それに対抗する為にとはなんだが、この世界の人間を『前の世』からさらに増員させた。平和を司る地でありながら戦うなどありえんかもしれないが、これも戦争を正義とする者に侵食されないようにする為にはやむを得ない。皆で協力して戦うように求む」
(そうか、その為に次郎長親分を召喚したのか!!)
石松は理由が分かった。だが、親分を利用されたという思いはなく、再会させてくれた事に寧ろ感謝していた。
「では、皆様、団結しましょう。ここの世と我々が嘗ておりました世の平和を願って!!」
平和を司る異世界の全ての人々は団結を誓い合った。集会が終わると皆は帰る。だが、一人の女性がフローレンスとイマヌエルに泣きながら話している。
「あの奥方は何者であろうか?」
「はて、西洋の人間だったようだが」
石松と小政は女性の元に行ってみた。
「フローレンス、イマヌエル」
「あら、何か?」
「この奥方は何故に泣いておられる?」
「ああ、こちらの方は嘗てフランスという国の貴族の娘でありましたのですが、この方の母が戦争を正義とします世界の人間になってしまいましたという事なのです」
「私は、母上を敵に回す事になりました。どうすればよろしいのか・・・」
その女性はただそう言って泣くのみだった。
「奥方。我々もできる限りの協力をする。お主の母上をこの世界に引き抜こうではないか!」
「だが、それはできないのだよ。戦争を正義とする世界と平和を正義とする世界は相容れないものだから、向こうの人間をこっちの人間として変えさせる事はできないのだよ。だから、不本意ながらも戦うしかない」
「そうであるか・・・。お主、名は何と申す」
「テレーズと申します。母は生前、縁起でもない発言をなされて国民の反感を買ったという事で処刑されました。前にその母上にお会いしたのですが、その憎しみが増大していき、向こうの世界の人間となってしまったのです」
「それは辛い事であろうな・・・。我々も常に協力致す」
「はい、ありがとうございます」
石松達は本部を出て歩く。ところがその時、女性が走りながら現れた。
「そちらのお方共。ここにテレーズという女性はおらぬか?」
「な、何者だ、お主は?」
「私はあの子の母、アントワネットだ」
石松達はテレーズの母と聞いてぎくりとした。しかもたった今、彼女の母は戦争を正義とする世界の人間となってしまったと聞く。
「悪いが、その質問に答える事はできぬ」
「なんですと、下賤な民め。私が生前、何をしてきたと思っていますの?」
アントワネットは憤慨した。そして魔法のようにハープが彼女の手に現れた。
「貴方方に制裁の音楽を!」
(さてはあの楽器で某達を苦しめるつもりだな!!)
石松達はそう予感した。そして直ちに刀を取り出して空中で横に振った。ハープは真っ二つなった。
「このハープは簡単には壊れないわよ」
アントワネットはそう言うと指を一振りするだけでハープを元に戻してしまった。
「お、恐ろしい!」
石松は無限な戦いを強いられると思った。だが、親分が動く。
「お前ら。拙者の新たなる能力を見せてやる」
「親分!?」
次郎長は刀を振りかざす。その瞬間、アントワネットは吹き飛ばされた。次郎長はさらに襲い掛かる。
「出て行け。侵略者よ!」
次郎長はさらに刀を振りかざす。大地が爆発し、地の砕片が飛び散った。
「ああ!?」
アントワネットは悲鳴を挙げた。
「命が惜しければ撤退せよ。でなければ斬る!!」
別の人間達も集まってきた。
「何だ、侵入者か!?」
「よし、加勢するぞ!!」
「お、覚えておきなさい。必ず出直します!!」
アントワネットは去った。
「撃退させたは良かったが、あのテレーズって奥方が気になるな・・・」
「そうだな。後で会ってみるか」
石松は小政と共にテレーズに報告しようと考えた。
石松と小政はテレーズに会いに行った。
「そこのテレーズという奥方やら」
「あら、さっきの東洋のブシとかの方。何か?」
「お主の母上とやらが先ほど侵攻してきた。名はアントワネットと申しておった」
「何ですって!?母上が!?」
テレーズは恐怖に陥った。
「臆するでない。今は追い払った」
「あ、ありがとうございます」
「いつでも我々が味方になる。なぜなら、平和の世界の同志なのだからな」
「はい・・・」
テレーズは泣きながら礼をした。だが、今後の戦いは激しくなるばかりである。
後書き
次回は・・・
「再びのあの世へ」
戦争を正義とする世界、平和を正義とする世界。この二つの戦いはかよ子達が住む世界にも干渉することになる。フローレンスとイマヌエルは「前の世」への派遣を募集し、石松は生前帰る事ができなかった駿河の地を再び踏みたいと思い、派遣者になる事を望む・・・。
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