レーヴァティン
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第百六十話 伊勢の神託その十一
「味がな」
「そうだな」
「そやからな」
それだけにというのだ。
「夜も楽しみや」
「昼だけでなくな」
「実際にな、今日はここで楽しむんやな」
「今日はな、だが夜伊勢海老と湖の幸を楽しめば」
その後のこともだ、英雄は話した。
「その後はな」
「大坂に帰ってやな」
「明日からまた色々な政だ」
それに戻るというのだ。
「再びな」
「そうなるな」
「今日は神託だけだったが」
「明日から文章も見てやな」
「印を押していく」
「そうして政を進めてくな」
「この世界でも政は紙で動く」
まさにという言葉だった。
「それは変わらない」
「そこに書いてあるものを読んで裁決を下す」
「それによってな」
「政は動くな」
「政策を決めて指示を出してだ」
そのうえでというのだ。
「裁決も下してな」
「動くわ」
「だからだ」
「またやな」
「それが嫌なら政には関われない」
採決を降すこと、即ち書類仕事を行うことが嫌ならというのだ。英雄はこのことを飲みつつも冷徹な声で話した。
「何も出来ないからな」
「そういうことやな」
「お前も書類仕事をしているしな」
「当たり前や、それ位わかってるからな」
政のことがというのだ。
「文章を読んで裁決することはな」
「出来るな」
「そや、それでしてるしな」
「進んでしているな」
「さもないとほんま政は進まんで」
そしてというのだ。
「民も豊かにならん」
「国も強くならない」
「それがわかってるからな」
だからだというのだ。
「やってるわ」
「そういうことだな」
「ほな明日からもな」
「裁決を下していくぞ」
「そういうことでな」
耕平は英雄に笑って応えた、だが。
桜子はここで飲みながらおちょこを片手に少し苦笑いで話した。
「あたしは苦手なんだよね、実は」
「そちらの仕事はだな」
「性に合わなくてね」
「そうだな、だがな」
「わかってるさ」
それでもという口調での返事だった。
「あたしもね」
「そうだ、今で言う書類仕事が出来ないとな」
「政は出来ないね」
「事務処理が出来ないとだ」
即ち書類仕事がというのだ。
「どうしてもだ」
「動かないね」
「そうだ」
国の政はというのだ。
「だから皆にはしてもらう」
「これからもね」
「特に今はな」
尚更と言うのだった。
「内政に専念しているからこそな」
「そっちの仕事ばかりだね」
「朝から晩までな」
まさにとだ、英雄は桜子に話した。
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