曇天に哭く修羅
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第三部
不完全な急行
前書き
_〆(。。)
桜花・聖持・焔から連絡。
彼等が向かった場所に護衛や警備の魔術師が居たので全員倒して奥まで探したが凜音を模したぬいぐるみしか置いていなかったという。
「後は立華くんのところだけか」
向子の前に居るのは九月院瞬崩と矢田狂伯の2人しか居ないがここからが厄介だ。
「やっぱり向子さんは強いなぁ。暗部じゃあ荷が重かったかな? まあこっちも負けること自体は解ってたことなんだけどさ」
「狂伯くん。凜音ちゃんは何処なの? 立華くんと佐々木くんを戦わせないと予定が遅れちゃうんだけどなー」
「ああ、それなら心配ないですよ? 俺達のプランは破棄して立華紫闇には死んでもらうことにしましたからね」
向子の気配が別人のように変わる。
「どういうこと?」
「恐い顔しないで下さいよ。運が良ければ生き延びるんですから。【白鋼/しろがね】の気紛れが有ればですが」
「立華くんが『あの女』に対抗するなら二段階は強くしないといけない。そういう予定で動いていたはずだけど」
「俺は立華君が嫌いじゃない。けど彼の力は危険だ。完全覚醒したとしても味方にならなければ人類が滅びかねない」
狂伯の目は真剣だ。
しかし悲哀が見える。
紫闇を手に掛けたくないのだろう。
だがそういう甘い考えを捨て切れないにしても割り切って計画を実行した。
全ては人類の為に。
「紫闇が居なくとも現状の戦力で事足りる。味方になってくれるか解らない上に『内なる存在』から牙を剥かれて彼の意識が消失したら無事では済まない」
「確かに立華くんがそうなったら四強の誰かが死ぬ事態になるかもしれないっていうことは認める。それでもやる価値が有るから【プラン】が実行されてるんだよ」
狂伯の意志が固いことを理解した向子は信頼できる[切り札]に連絡を取った。
「ちょっとちょっと向子さん。チートしないでくれせんかね?」
「悪いね。プランを完遂したいんだ」
向子の耳に声が聞こえる。
「もしもし会長?」
「狂伯くんが思ったより本気だった。今から動いてもあたしじゃ間に合わない。だからやる気を出して的場君」
「解りました。でもやり過ぎないで下さい。特に九月院の方を」
聖持が通信を切る。
「さて。《佐々木青獅》くん」
「ぼくは九月院瞬崩だ」
青獅は槍の穂先を向けてきた。
狂伯は動かない。
戦う気が無いのだろう。
「そんじゃまあやりますか。立華くんと当てる前にあたしで確かめさせてもらうから」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
紫闇が来たのは大型スーパー。
ここは狂伯が運営しているという。
エレベーターのスイッチを特定の順番で押すことによって公的には存在しない秘密の地下エリアに辿り着けるらしい。
特に変わったものは無く広々としており対人戦がし易そうな環境が整っている。
長い通路を道なりに進む紫闇。
トラップなども無かったのだが……。
「!?」
凍り付いたように動きを止めた。
正体の解らない寒気に全身が震え出す。
紫闇は覚えが有る。
青獅と初めて戦った時。
そして黒鋼焔と組み手した時。
「つまり現在の俺より遥かに強い何か」
とんでもない奴が潜んでいる。
恐怖しているのに足が止まらない。
彼の『鬼』が戦いたがっているのだ。
本能に逆らい歩が進む。
その果てに怪物の姿が映った。
「女の子……?」
《永遠レイア》を彷彿とさせる。
髪・肌・爪・靴・チャイナドレス。
どれもこれも全てが真っ白。
目だけは灰色に濁っていた。
「アタシは盲目だが気にするナ。オマエなんかよりずっと視えている。立華紫闇だろ? 『氣』の流れがおかしいからな」
紫闇は驚きで動けない。
あまりに焔と似ていたから。
だが親近感は無かった。
プログラムされた通りの感情を顔に出しているだけで人の形をした無機物。
温かみなど感じられない。
「佐々木凜音はここに居るヨ? アタシを殺せたら会えるから頑張りナ」
後書き
_〆(。。)
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