曇天に哭く修羅
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三部
時間稼ぎ
前書き
時々PVとUAが一気に伸びたりするんですが何か有るんですかね。
_〆(。。)
領域内戦争の決勝戦。
《矢田狂伯》はそのルール自体にも今回だけの特別ルールと舞台を用意しておいた。
「《佐々木凜音》は駒の一つに過ぎない。その程度で《立華紫闇》を獲れるのなら苦労はしないし悩まないさ」
今年は5対5のチーム戦。
チーム戦の舞台は常に専用の市街地か魔獣領域で行うと決められている。
しかし今回は芝生のスポーツスタジアム。
これは史上初のことだ。
「領域内戦争は毎年変わる試合方式に沿ったルールが考えられ最後までそれが守られる。それが当たり前。けど向子さんを相手にルールを守ってたら裏を取られてしまう」
だからこそ根回ししてのルール変更。
────────────────
そのルールとは【コスト制】
学園内序列に応じてコストを付ける。
コスト内なら何人でも参加可能。
1年の序列最下位~200位はコスト10
199位~100位はコスト50
99位~20位はコスト100
19位~1位はコスト200
これは1年生の場合。
─────────────
2年生なら最下位~200位はコスト20
3年生なら最下位~200位はコスト30
という風にコストが増えていく。
決勝の規定コストは4000まで。
このコスト内に収めなければならない。
───────────────
やろうと思えば100人以上出せる。
しかし今年の関東領域で最強の龍帝学園と2年連続で【全領戦】に出場を果たした刻名館学園で数を頼みにすることは有り得ない。
その差を覆す強豪が居るから。
しかしこのルールだと強い1年を主体にしてレギュラーを組む龍帝の方が有利。
「そんなこんなでちょっと卑怯な手を使わせてもらうことになったわけだ」
狂伯が1年の《九月院瞬崩/くげついんしゅんほう》を引き連れてスタジアムに入場すると、そこには他の刻名館メンバーが立ち並んでいた。
狂伯らを合わせて総勢125名。
だが只の物量作戦ではない。
123名は龍帝を除く関東の魔術学園から集めた暗部の精鋭であり、各学園の最強たる生徒会長の命を狙える怪物もちらほら居る。
対する龍帝はと言うと。
「お~、やってるねぇ狂伯くん」
生徒会長の《島崎向子》一人だけだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
時は戻り龍帝の控え室。
狂伯による凜音の誘拐と決勝での敗北要求を知った龍帝学園のレギュラーメンバーは揃って頭を悩ませていた。
「凜音ちゃんが居そうなのは四ヶ所。決勝に出場するメンバー5人の内、4人は救出に向かってもらうことになるね。狂伯くんは此方に対して暗にそれを指示してるのは間違いない」
他の人間が動けば向子達が動かなければならないように持っていかれるだろう。
「狂伯さんのことだし特別ルールで数を揃えてくる可能性が高い。しかも一人一人の質が高い粒揃いで集団戦にも明るい連中ばっかりを」
3年生の副会長《春日桜花》と向子は狂伯との駆け引きに負けてしまったので不利になる動きしか出来ない。
「みんなが戻って来るまではあたしが時間稼ぎをしておくから任せて。たまには向子さんの良いところを観客にも見せとかないと」
今日の龍帝メンバーは向子・紫闇・桜花・《的場聖持》・《黒鋼焔》だが狂伯が残って戦うことを望むのは向子らしいので乗ってやる。
そして現在スタジアムでは。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「龍帝の会長。まさかこれ程とは」
「公式戦で魔術師の異能を使ったことが無いと聞いていたが納得した」
暗部は学園の上層部から降りた命によって裏の仕事をこなすプロの工作員であり、敵対する学園の人間を殺すこともまま有る。
時として暗部同士でも戦う。
出場を禁止されているので【天覧武踊】という華やかな表舞台で人目に付くことは無いが、代わりに命懸けの実戦をしているだけあって学園の代表メンバーより高い戦闘能力を持つ者も珍しくない。
そんな人間が既に20人倒れていた。
暗部は厳しい訓練を受けている。
私情を捨てる教育もされる。
兵士としての練度も高い。
それでいて統制が取れた一糸乱れぬ連係を容易く見せる暗部の集団が魔術師とは言え、たった一人の女に手も足も出ないのだ。
翻弄されていると言って良い。
向子は未だに武器の【魔晄外装】を出さず、魔晄防壁を張ったまま身体強化を掛けた状態の生身で戦っている。
正面から闇色のクナイが飛ぶ。
向子は別の方を向いたまま回避。
そのクナイが向きを変えた。
おまけに分裂して増える。
そこに仲間の異能も追加。
追尾・分裂・掠っただけで殺すという天覧武踊への出場を禁止されても仕方のない力を有したクナイを死角の背後から。
向子はそれを手ではたき落とし、身を躱し、掴んで当たらないように投げ返し牽制するという行動に出た。
異能を使った3人は想像の埒外に有る動きに対応できず、自分達の方へ近付いてきた向子によって一撃で倒されてしまう。
その時死んだふりをしていた刻名館のメンバーが拳銃を取り出して不意打ち。
魔獣領域で得られた材料で作った弾丸は魔神の魔晄防壁でも貫くことが出来る。
しかし向子は親指と人刺し指の二本で平然と挟み込むと弾丸の推進力を強引に殺す。
弾丸は音を立てながら回転を遅くしていき遂には運動エネルギーを使い果たしてしまった為に動かなくなってしまう。
「あれを抓んで止めるだと……!?」
結局、狂伯が用意した123名の暗部は全て向子の手で壊滅させられてしまった。
後書き
原作3巻の半分くらい終わりました。
_〆(。。)
ページ上へ戻る