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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第三十四話



――暗い、黒い世界。僕はまるで拘束されているかのように身動きが取れずにいる。
ただただ視界で確認出来るのは……

――目前に迫る巨大な大斧で――



―――――――――――――



「――うわああぁあぁぁぁぁぁっ!!」



――目前に迫った恐怖に思わず声を上げて起き上がった。
…起き上がった?


「――…あれ、此処は……」


少し落ち着こうと深呼吸しながら周りを見回し呟く。
此処は…もう十数回目に入り見慣れてしまった、バンエルティア号の医務室であった。


「なんで此処に…――痛っ」



周りをいまだに見回しながら呟いていると、落ち着いてきたせいか、身体を痛みが襲い出す。上半身を起こした状態で自分の身体を見ると、いたる所に包帯やら何やらがされていた。


「ヴォルトは……出てる、か…」


ヴォルトの事が気になり呼んでみるが反応は無く、ヴォルトが入っている、という感覚も無いので、そう認識する。出ている、という事は少なくとも僕よりかは大丈夫みたいだ。

そんな事を考えていると、不意に扉が聞こえた。



「――…あれ…、衛司…?」


「――…!…衛司が…起きてる…?」



扉の方を見ると…驚いたような表情をしているカノンノとメリアが立っていた。


「えっと……おはよう」


「「衛司ーっ!!」」


「あ、ちょ、ま――痛あぁぁぁぁっ!!」


軽く冗談混じりな挨拶をすると、二人が少し泣きそうな表情になって飛び付いてきた。
二人の様子から心配させてしまったんだな、と思ってしまうけど……僕一応怪我人である事を分かって欲しい。



「――目が覚めたのですね、主。おはようございます」


痛みに堪えながらとにかく二人を落ち着かせてはがそうと二人の頭を撫でていると、二人が入ってきた扉からヴォルトが顔を出してきた。
二人よりも落ち着いた様子ながらも嬉しげな表情を浮かべヴォルトはそう言うと此方に歩み寄ってきた。


「うん、おはようヴォルト。…できたらこの二人を離して欲しいんだけど」



「心配させた主の自業自得、と言っておきます。……本当なら私が飛び付いているのに」


僕の言葉に溜め息と共にそう言葉を返してきたヴォルトに思わず苦笑いを浮かべてしまう。
心配させて自業自得…うん、言い返せない所がキツい。



「ははは……。…僕って、一体どれくらい寝てたの…?」



「そうですね…かれこれ二週間目に突入した辺りでしたかね」


「へぇー、二週間かぁ……って二週間っ!?」


ヴォルトの返答に思わず驚いてしまう。
二週間って…どんだけ寝てたんだ、僕。


「仕方ない、と言えば仕方ないと思いますが。傷数十カ所、骨折六ヶ所、それに多量出血……アニーさんやジュードさんが一目見て生きてるのが奇跡と言ってましたからね。…応急処置でエリーゼさんが回復術をかけ続けていたのが助けになったのだろう、と思います」



「そうなんだ…。後でエリーゼ達にお礼しとかないと……そういえば、あの後どうなったの?」



ヴォルトの説明の内容に苦笑しながら、徐々に痛みに慣れてきていまだに引っ付いている二人の頭を撫で続けながらそうヴォルトに聞いてみる。






「…バルバトスはディセンダーが撃退しましたが、後に逃走…。塩水晶の採取には成功、カイルさんとしいなさんは主と比べると遥かに軽傷だったので二人とも今では普通に依頼に参加しています」



「そっか……。良かった、皆無事で…」


「…無事という言葉はもう少し自分の身体を見て言ってください。…後、ジルディアを封印する為の残り二つの材料が分かりました。『羽があって飛び回る実』、これはツリガネトンボ草…『全身から汗を流すパン』、これはウズマキフスベというキノコだそうです。…ですが二つとも既に絶滅しているらしくて…」


「それって…完全に手詰まりじゃ…。じゃあその二つはどうしてそれだ、って分かったの?」



「……それなんですが…」


「……私が描いた風景の中にあったの」


ヴォルトの説明にふと思った事を聞くと、答えたのはヴォルトではなく、カノンノであった。

「…私が描いた風景の中にね、探さなくちゃいけない物が二つあったってジュディスが言ってた。始めは混乱しちゃったよ。なんで私にそんなものが書けたのか…私って、一体何なのかな…って」



「カノンノ……」


「でもね、衛司やメリア…それに皆が頑張ってて…私の描いた絵がその皆の役に立っている。そう考えると、安心もできるんだ」


そう言いながらも、どこか不安げな笑顔を浮かべるカノンノ。それは微かに…此方を心配させないように無理やり笑顔を作っているように見えた。そんな彼女に、僕はただ静かに頭を先程より少し強く撫で始めた。


「っ…衛司……?」


「カノンノ……一人で抱え込まないでね。僕が、メリアが、ヴォルトが…皆が支えたいから」


「ん……そうだね…。ごめん…ありがとう」


僕の言葉に、カノンノは少し俯いた後、顔を上げてそう言って先程とは違った、柔らかな笑顔を見せた。








――――――――――――――



「―――サレ様。御命令されていた物、採取に完了致しました」


「――フフッ、ご苦労」


―――様々な機器類が置かれた研究所のような場所の一室。
そこで、白衣をきた研究員らしき男が手にした大きめなビンの中身を見て――サレは静かに笑みを浮かべた。


「それにしても…案外予定より早く入手出来たんだね」


「はっ。サレ様より頂いた星晶…それを《エサ》にした所、直ぐに食い付きました故。…しかし私達研究者からしたら理解出来ませんな…。こんな物が力を与える等…」



研究員は手にしたビンの中身を見ると溜め息と共にそう言葉を出す。
それに対し、サレは笑みを浮かべたまま研究員からビンを取った。


「分からなくていいさ、これは僕が有効利用させてもらうから。…それで、『アレ』の方は?」

「…失敗する事、約七回。失敗するパターンは徐々に理解出来たので、残りの星晶を全活用すれば後一、二回で完成するかと…」


サレの質問に、研究員は一つのモニターに『アレ』と呼ばれたモノを移すとそう答えた。
サレはその言葉に笑みを深めた。


「計画は順調、か。…後は『向こう』の情報次第だね…。フフッ…そろそろ動き所だ。――『アレ』の方、完成を急ぐようにね」


「――はっ」


サレはそう言って笑みを浮かべ続けると、ビンを持ったまま部屋を出て行く。
その後ろ姿を見送り、研究員は溜め息一つと共にモニターを眺めた。


「――本当にあのお方は理解し難いものだ。――『星晶剣』に『赤い煙』…一体何に使うつもりなのか」



――研究員はモニターを眺めたまま、そう意味深に呟いた。




 
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