ヘタリア大帝国
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TURN41 雨と盾その一
「私としましても平良さんや山下さんが気になります」
「なまじ根がいいだけにな」
「そうです。ここは軽挙妄動を謹んでもらいます」
日本にしても気になることだった。それでなのだ。
「正義感はかけがえのないものですが」
「じゃあ獅子団には俺から言っておく」
そちらは東郷が引き受けるというのだ。
「そして利古里ちゃんは祖国さんにお願いする」
「ではそれで」
こうして話を整えた。日本にとって問題は戦争のことだけではなかった。太平洋経済圏のことも気になるところだった。そして早速だった。
ベトナムの首都ハノイの市街地において平良はエイリスから来た太った貴族を前にしてだ。怒りのオーラを纏って刀に手をかけていた。
そのうえでだ。腰が抜けてへたれ込んでいる貴族にこう告げたのだった。
「覚悟はいいな。安心しろ」
「あ、安心しろ!?どういうことだ」
「一太刀で。苦しませることはしない」
死刑宣告そのものだった。
「貴様が娼館を開いていたいけな少女達を売りものにしていたことは許せぬ」
「あ、あれは地元の者がしたことだ」
「元締めが貴様だったことはわかっている」
証拠も既に突き止めている。平良はこうしたことでも優れているのだ。
「他にも高利貸しに荘園での搾取、人頭税の容赦ない取立て」
「それは女王陛下から許されたことだ」
「ならばエイリス女王自体が悪だ」
平良は言い切った。
「悪は許してはならない。ここで斬る」
「あ、あわわわわわ・・・・・・」
まさに早速だった。平良は不埒なエイリス貴族を成敗しようとしていた。しかしここでだ。
話を聞いた秋山が飛んで来てだ。両者の間に慌てて入って止めた。
「お待ち下さい、提督」
「参謀総長、どうされたのですか」
「ここはご自重下さい。この者は司法に委ねます」
「ベトナム政府のですか」
「はい、後はベトナムさん達がやってくれます」
だからだ。今は自重して欲しいというのだ。
「くれぐれもお願いします」
「しかしです。この者のやったことは許せないことです」
平良は正義から話す。正論ではある。
「ここで成敗し悪が栄えることではないということを」
「それはベトナムさんが行いますので」
「日本軍のすることではないと」
「はい、そうです」
まさにだ。それ故にだというのだ。
「ここはご自重下さい」
「日本軍の任務は国家を守ることと」
もう一つあった。平良の中では。
そしてそのもう一つあることをだ。平良は口にしたのである。
「悪を滅ぼすことです」
「いえ、悪を滅ぼすことが任務であろうとも」
「しかしというのですか」
「法律は守らなければなりません」
秋山も正論で返す。彼は法律を出した。
「我が国は法治国家です。そして法治国家であるが故に」
「法律は守らなくてはならない」
「そして今この星域はベトナムです」
もう一つ事情があった。
「他国なのです」
「ベトナムの法律が適用されますか」
「その通りです。ですからご自重をお願いします。それに」
「それにとは」
「提督にとって軍規軍律は何でしょうか」
秋山は今度はこのことを話に出した。
「それは何ですか」
「絶対のものです」
東郷は軍人として言葉を返した。
「それ以外の何でもありません」
「そうですね。軍規軍律は軍にとっては法ですね」
「そしてその法をですか」
「お守り下さい」
秋山も引かない。物腰も口調も丁寧だがそこには強さがあった。
「そうして頂けるでしょうか」
「わかりました」
平良とて愚かではない。秋山にそうした根拠まで出されて説得されてだ。
納得してだ。刀から手を外し失禁寸前の貴族を見下ろして述べた。
「ではこの下郎はベトナム殿にお任せします」
「そうして頂ければ幸いです」
「その様に」
平良もこれで納得した。秋山はとりあえずは胸を撫で下ろした。しかしそれからすぐにだった。今度は福原がだ。
これまたベトナムの良民を虐げていたエイリス貴族ににこやかに笑って拳銃を突きつけていた。そしてやはりこう言うのだった。
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