ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第六十三話 スクラップ置き場
前書き
漫画版の設定のアッシュの音痴を採用
エリアFの雪原に着いた三人…だったのだが。
「ねえ、ヴァン。ここ雪が積もってるんじゃなかったの?」
「そのはずなんだけどな」
周囲を見渡すと雪など少しもない。
アッシュ達の疑問に答えるようにミハイルが通信を繋げてきた。
『地元のお前さんなら知っておるかと思うが、そこはスクラップ置き場じゃ。捨てられた機械が山のように積み重なっておる…ついこないだまでは雪に埋もれてたんじゃがな。よくもまぁ、積み上げたもんじゃ』
ミハイルもモニターで現在のエリアFの姿に感心半分、呆れ半分の声を出した。
「雪なんてどこにもないじゃないか」
グレイの言う通り、周囲にはスクラップばかりで雪などどこにもありはしない。
『機械の熱で溶けてしまったのじゃよ、動かなくなって棄てられたはずの機械達が、イレギュラーとなって、動き始めておるのじゃ』
「スクラップが動き出した!?そんな事ってあるのか!?」
機能停止、もしくは稼働不能になったスクラップが一斉に動き出すなどあり得ないことだ。
言ってみれば死人が動いているようなものである。
『だからお前さんらに来てもらったんじゃろが、この奥にスクラップを操っている奴がいるはずじゃ。そいつを倒してイレギュラー共を黙らせてくれ、地元の者がおるんじゃから簡単じゃろう』
「簡単に言ってくれるな」
「あー、ヴァン?この爺さんはいつもこんな感じだから気にしない方が良いわよ」
「そっか…とにかく先に進んでみるか…」
とりあえず先に進んでみることにしたものの、機械の熱で雪が溶けたことにより、氷によって塞がれた道が出現し、更に四年の経過によって塞がった道もあるために、一度来たことのあるヴァンも少々手こずっていた。
「ねー、ヴァン。何よこの迷路みたいなの?」
「氷で塞がっていた道と四年の経過で駄目になった道があるからほとんど俺が通った時とは別物になってる」
ヴァンがかつての記憶を頼りに進んでいるが、塞がっている道があるために思い通りに進めない。
「とりあえずヴァンがトラップを壊してくれるから助かるわ」
「うん」
アッシュとグレイはモデルHに変身しており、何とか先を行くヴァンを追い掛けていく。
「モデルHでも置いてかれるなんて本当に反則だよなぁ」
モデルAが思わず愚痴る。
モデルHの機動力は水中以外なら他のライブメタルやフォルスロイドを上回るくらいに高いと言うのにだ。
急にヴァンは足を止め、必死に追い掛けていた二人がぶつかる。
「~~っ、ちょっとヴァン、何よいきなり立ち止まって…」
「っ…しっ、誰かいる…」
「何の音だ?」
鼻をぶつけたアッシュが涙目で睨むが、向こうから聞こえてくる音に全員が聞き耳を立てた。
「これギターじゃないの?」
「どれどれ」
シャッターの隙間から覗くと、ハゲ鷹型のフォルスロイドがモデルVの生け贄らしき人々に歌を聞かせていたが、その歌は最初は人々が雑音に苦しんでいたものの、フォルスロイドの能力なのか暴走を始めていた。
「う…うう…!」
「ちょ、グレイ…大丈夫!?」
「少し気持ち悪くなってきたな…」
「ヴァンも!?」
苦しそうにするグレイに不快感に表情を歪めるヴァン。
どうやらあの歌はレプリロイドとヒューマノイドを操る効力があるようだ。
ロックマンの状態だからこそ耐性があるのだろうが、あまり長時間聞いていると良くなさそうなので、グレイを部屋の隅で休ませながら止めることにした。
そしてフォルスロイドがアッシュ達に気付く。
「イレギュラー共を掻き分けて俺様のステージを特等席でかぶり付きか?中々ロックな事しやがるじゃねぇかロックマン共」
「人の故郷で傍迷惑なコンサートごっこは止めるんだな」
「あんたの曲はうるさいわよ下手くそ!歌うのは止めなさい!!」
ヴァンとアッシュが抗議するとフォルスロイドがショックを受けた。
「下手くそだと!?このコンドロック様の歌のどこが下手くそなんだ!?」
「うるさくて喚いてるようにしか聞こえないんだよ」
「ヴァン、あんた歌える?」
「…俺は歌ったことなんてない。カラオケにも一度も行ったことないしな…先輩が仕事人間でケチだったからなー。あまり休暇が取れなかったんだよ。十四年前に遊園地行ってからまともに遊んだ記憶がないな」
「寂しい青春ねー。ケチ臭い先輩なんて同情するわ」
灰色の青春を送っていたヴァンにアッシュは同情すると、懐からある物を取り出す。
「マイク?」
「そう!アタシ専用のマイク…マイマイクよ!」
「マ…マイマイク!?」
「あんたは歌を分かっていないようね!ならアタシの上手い歌を聞かせてあげるわ!」
「頼もしいなアッシュ」
マイクを翳しながらコンドロックに言い切るアッシュにヴァンは頼もしさを覚える。
「任せなさい!上手い歌ってのはこういうものよ!」
ボエ~♪
「す、凄い音痴だ…!」
「う…ううん…」
「ギャ~ッ!!耳がぁ~!!」
凄まじい音痴っぷりを発揮するアッシュにヴァンとグレイは苦しみ、コンドロックの聴覚器が爆発した。
「得点を付けるとしたらマイナス六万点だな…」
「こ…こんなに音痴じゃ、俺様の歌の良さが分かるわけがねぇ…」
アッシュのあまりの音痴な歌によって気絶したコンドロック。
「一応倒しとくか…」
一応人々を拐ってモデルVの生け贄にしようとしていた訳だから生かすわけにはいかず、取り敢えずヴァンがバスターショットを引き抜いて、チャージバスターでとどめを刺したのであった。
「どう!?アタシの歌は?誰にも真似出来ないくらいに見事な歌だったでしょ!」
コンドロックのデータをコピーしながら胸を張るアッシュにヴァンは目を細めた。
「ああ、色んな意味で凄かったよ」
あれは誰にも真似出来はしないだろう…いや、出来ないで欲しい。
「アッシュの奴…とんでもない音痴だったぜ…」
「しっ、あまりでかい声で言うな…気付かれるぞ」
変身を解除してフラフラになりながら浮かんでいるモデルAに注意しながら、アッシュみたいな音痴が増えないことを歌を聞いて気絶しているグレイや拐われた人々を起こしながらヴァンは祈った。
そして、ミハイル達に頼んで人々を安全な場所まで転送してもらうと、三人は奥へと向かっていった。
奥の部屋には浮遊するモデルVと、それを見上げるパンドラの姿があった。
「…聞こえる…捨てられた機械達の…メカニロイド達の…悲しみ…憎しみ…怒りの声…全てが…モデルVの…糧になる…」
「「パンドラ…!」」
「こんな所で何をしてるんだ?」
「ロックマン・モデルO…モデルVに吸収させていただけ…ここに捨てられた機械の…メカニロイド達の負のエネルギーを…メカニロイドにも“心”がある…私達ほどではないにしても…既に…運命は動き始めている…あなた達…イレギュラーロックマン達の…目覚めと共に…」
そして、パンドラはアッシュとグレイを見遣る。
「あなた達には…聞こえないの…?世界の…この星の悲鳴が…」
パンドラの問いにグレイがバスターショットを構えた。
「…聞こえるさ!聞き逃すもんか!悲鳴の中心には必ずお前達がいるはずだからな!」
グレイの言葉にパンドラは少しの沈黙の後に首を横に振った。
「…違う」
「な、何がだ!?」
「この悲鳴は…あなた達と…あの男の…アルバートのためのもの…」
アッシュとグレイに向けて言い放たれたこの言葉に二人は動揺する。
「な…何を言ってるんだ…?」
モデルAもパンドラが何が言いたいのか分からず、困惑してしまう。
「いつか…全てを知る時が来る…そしてきっと…あなた達二人はは全てに絶望する…」
それだけ言うとパンドラは転送の光に包まれて、モデルVと共に姿を消した。
パンドラが姿を消したのと同時にミハイルが通信を繋げてきた。
『フンッ…モデルVごと消えよったか…気味の悪い奴じゃ。ご苦労じゃったな、そのエリアのイレギュラーも静かになりつつあるようじゃ。もう大丈夫じゃろう、ミッションレポートをよろしくな』
そしてコンドロックの力を使って仕掛けを突破してトランスサーバーに乗り込んで、全てのミッションを片付けたので、一度ハンターキャンプに戻るのであった。
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