DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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目が濁ってる
<ジパング>
彼の名前はタケル…
恋人のヤヨイを生贄という凶事から救い、保存庫の瓶の中に匿い人々の目から守り続けようとした男…
リュカの余計な能力の所為で、あっさり存在を発見されてしまい、リュカ達を皆殺しにしてでも恋人を守ろうと空回した男…
思い込みが先行した空回り男の説得は極めて困難で、見かねたアルルもティミーに協力をし、何とか落ち着きを取り戻す事が出来た。
身内の妨害にもめげず、困難を乗り越える事が出来た二人。
タケルはこの国の兵士で、ヤヨイを生贄の祭壇へ届ける任務を受けた一人である。
しかし彼は、他の兵士が帰るのを見計らい、ヤヨイを助け匿ったのだ。
「貴方は勇気のある人だ!愛する人の為に、そこまで出来るとは…」
やっと心を許してくれたタケルを煽てるティミー。
「本当、勇気があるね!ジパング壊滅を物ともしないなんて!」
リュカの言葉に表情を曇らせるタケル。
「黙れつってんだろ!!」
苛つくティミー…さすがに言葉が乱暴になる。
「…でも本当ですか!?あなた方はこの国を救いに来たと言うのは!?」
「私達は、バラモスを倒す為に旅をしてます。世界に平和を取り戻すのが、私の使命なのです!その為にはヤマタノオロチだって倒してみせますよ!」
世界に平和を取り戻す旅に出ている…
タケルにとってアルル達は、まさに救いの神なのだろう。
「で、では…ヒミコ様にお会い下さい!きっとヒミコ様もお喜びになります!………ただ…ヤヨイの事は…」
「大丈夫ですよ。ヤマタノオロチを倒すまで、内密にしておきますから」
タケルは喜び、早速ヒミコの屋敷までアルル達を案内する。
「ヒミコ様、お知らせがございます!」
タケルはアルル達を連れ、ヒミコが鎮座する女王の間へとやってきた。
「何用じゃ、騒がしい!妾は忙しいのじゃ…」
其処には女王ヒミコと思われる女性と、側近の男が2人居るだけで、他に兵士等は見あたらない…
とても女王を警護しているとは思えないほどの、不用心な部屋…
「え!?これが女王なの?コイツが!?」
リュカがあからさまに無礼な発言をし、アルル・ティミー・ビアンカにど突かれる。
「何じゃ、その無礼者は!?」
「も、申し訳ありません!しかしヒミコ様…彼等がヤマタノオロチを倒してくれる救世主なのです!どうかご容赦下さい!」
タケルを始め、アルル達は一斉に頭を下げ、ヒミコに謝罪するのだが、案の定リュカがマリーと共に頭を下げないでいる。
「ちょっとリュカさん!女王様の前ですよ!礼儀を守って下さい!」
「えぇ!やだよ………だってコイツ目が濁ってるじゃん!」
「真、無礼極まりない奴じゃ!こんなのがヤマタノオロチを倒せるわけ無かろう!下手にヤマタノオロチを刺激すると、このジパングを滅ぼしかねぬ!この様な奴等は無用じゃ、妙な事をするでないぞ!」
リュカの態度に不快感を露わにするヒミコ…
「ヒ、ヒミコ様…どうかお話だけでも…」
「くどい!さっさと出て行け!!」
「ちょっとリュカさん!謝って下さい!」
アルルは必死になってリュカに謝る様頼み込む。
「謝る必要無いって…だってコイツ、モンスターだよ!」
「「「「え!?」」」」
リュカの一言に、皆が唖然とする。
「まぁ!では、この方がヤマタノオロチなのですね!?早速ぶっ飛ばしちゃいましょう、イオ!」
(ドゴーン!!!)
マリーの問答無用な先制攻撃で、ヒミコの腕が吹き飛ばされた!
「ヒミコ様!!ご無事ですか、ヒミコさ…ま…!?…ヒ、ヒミコ様!?」
腕を吹き飛ばされ蹲るヒミコに、側近達は近付き怪我の程度を確認しようと腕を見る。
すると、其処には蛇の鱗に覆われた腕が…
「キサマら~………バレてしまっては仕方がない!ジパング諸共滅ぼしてくれようぞ!」
それは一瞬の出来事だった…
ヒミコの無事を心配して近付いた側近2人を一瞬で消滅させ、アルル達に向かい8つの首をうねらせる大蛇の化け物が現れた!
「わぉ、本当ですわ!お父様が仰った通り、女王ヒミコがヤマタノオロチでしたわ!」
何故か嬉しそうなマリー…リュカの影に身を隠し、ヤマタノオロチを指差し笑う。
「いや……モンスターだとは言ったけど…ヤマタノオロチだとは……」
さすがのリュカも、まさかの展開に少し驚いている。
しかし何時までも驚いては居られない…
ヤマタノオロチが8つの鎌首持ち上げて、アルル達目掛け燃えさかる火炎を噴き出してくる!
慌ててティミーがフバーハを唱え、炎の威力を弱らせる。
「ベホイミ」
何時の間にやら後ろへ下がったリュカが、魔法で火傷を治療してくれた。
ウルフのヒャダルコがヤマタノオロチへ吹き付けると、カンダタとハツキがそれぞれ独立した動きでヤマタノオロチに襲いかかる!
更にアルルの剣がヤマタノオロチの頭の一つを切り落とす!
しかしヤマタノオロチも怯まない!
巨大な牙でカンダタに噛み付くと、残った頭からは炎を吐き、尻尾でアルルを叩き飛ばす!
リュカファミリーはと言うと、後方でアルル達の戦いを観戦している…
リュカやティミーは、傷付いた者にベホイミをかけ、治癒してはいるが…
「と、父さん………目の前でアルル達が戦っているのに、後方で回復魔法を唱えるだけなんて……もどかしいですね…」
「アルル達ぃ~?……アルルの事だけだろ、お前には!」
リュカの言葉に、顔を真っ赤にして俯くティミー…
「ティミー、仲間を信じて状況を見守るのも、大切な事なのよ。アルルちゃんに魔法と剣術を教えてるんでしょ!?だったら彼女を信じて、平然としてなさい!貴方が後方で不安がってたら、前戦で戦っているアルルちゃん達に動揺が出るでしょ!」
母に優しくも厳しく諭さるティミー…
父を見ると、身構えることなくリラックスしてアルル達の戦いを眺めている。
幼い頃を思い出すと何時もそうだった…
父は後方でリラックスして自分の戦いぶりを見ていた。
もし自分がピンチに陥ったら、きっと父が助けてくれる…
常にそう思い戦っていたのだ。
もし父が不安そうにしていたらどうだったろうか…
きっと自分も不安になり、全力を出せなくなっていたかもしれない…
自分より敵の方が遙かに強いと思ってしまい、動揺したに違いないだろう!
父が後方で、優しく見守ってくれてたから、自分は強くなれたのだ。
自分もこの父に習おう…笑顔で見守る事は出来そうにないが、身構えることなくアルルの戦いを見守ろう…
そしてアルルに危険が迫ったら、この身を犠牲にしてでも助けよう!
ティミーの心に新たな決意が灯された。
新たな決意を胸に、男らしい表情になった息子に喜びを感じる一方で、不安自体は拭い去れないビアンカが、他者に聞こえない声でリュカに問いかける。
「…ねぇリュカ…本当に大丈夫なのかしら?」
「………分かんね!…大丈夫じゃないの?一応勇者様だし!」
「……………」
息子にバレない様、神に祈るビアンカ…
夫のいい加減さを嘆きつつ、『大丈夫じゃないの?』の言葉に希望を託す。
アルル達の戦闘は、まだ続きそうだ…
後書き
さて…
そろそろ「そして現実へ…」の別視点作品を掲載して行こうと思ってます。
リュカ・ポピーの次に、作者の私が大好きなキャラが主人公の別視点!
嫌いにならないでね。
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