| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

猫の母子

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「何か」
「猫飼うって感じしないよな」
「全然ね」
「けれど奥さんが猫好きらしくてな」
「それでなの」
「三匹引き取ってな」
「育ててるのね」
「お前が飼うことになった子の兄弟はな」
 そうだというのだ。
「そうしてるらしいな」
「そうだったの」
「あと母猫うちにいるからな」
 大地は千鶴にあらためて話した。
「だからな」
「それでなのね」
「今度うちに連れて来いよ」
「それでお母さんと対面ね」
「そうしような」
「それじゃあ」
 千鶴は大地の言葉に頷いた、そうしてだった。
 トムが落ち着いてから大地の家に彼を連れて行ってそうして会わせた。見れば母親の外見はトムとそっくりだった。
 その三毛の様子を見て千鶴は言った。
「親子だからね」
「そっくりだな」
「そうよね」
「若しその子が大きくなったらな」
 大地はトムを見つつ千鶴に話した。
「うちのユリカにそっくりになるな」
「その猫ちゃんユリカちゃんっていうの」
「お父さんがそう名付けたんだよ」
「そうなの」
「うちの叔母さん、お父さんの妹が由利香って言ってな」
「それでなの」
「同じ名前にしたんだよ」
 そうだったというのだ。
「それでだよ」
「日本の名前なのね」
「ああ、それでな」
 大地はそのユリカとトムを見つつ千鶴に話した。
「久し振りに会ったにしてはな」
「随分仲がいいわね」
「そうだよな」
「ニャンニャン」
「ナ~~オ」
 ユリカはトムに自分から近寄って彼の身体をぺろぺろと舐める、トムはその彼女に甘えて身体を摺り寄せる。
 二匹はべったり寄り添っていた、そうして喉をゴロゴロと鳴らしているが大地はその二匹を見て千鶴に話した。
「やっぱり親子だからか」
「仲いいのね」
「そうだよな、猫でもな」
「親子は親子ね」
「そうなんだな、だったらな」
 それならとだ、大地はこうも言った。
「教頭先生のところにいる子達にもな」
「会ってもらうのね」
「そうするか?」
「いいわね」
 千鶴は大地のその提案に微笑んで応えた。
「じゃあ教頭先生にお話して」
「そうしてみるか」
 こうして実際にだった。
 二人は教頭先生に事情を話すと教頭先生の織田潤一郎、高学年からは名前は格好いいと言われている先生は笑顔で答えた。
「親子の再会、いいね」
「それじゃあ」
「今度教頭先生のお家にお伺いします」
「是非来てね」
 教頭先生の家は二人がいる街だった、それでだった。
 それぞれの猫を連れていくと三匹のトムそっくりの毛色の子猫達がいた、ただ首輪の色はそれぞれ赤、青、黄色で青い首輪の子猫のそれには鈴があった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧