鴉も家族に
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第一章
鴉も家族に
ロンドンである企業に務めているソフィー=グラッドストンはこの時休日に自分の家族である犬のオリバー、黒と白の毛の雄のコリー犬の彼と散歩をしていた、その時にだった。
「この子は」
「ワン?」
鴉の子供が道の端にいた、ふと上を見上げると道の左右の木の上の一つに鴉の巣がある。そこから落ちたことに察しがついた。
このままだと車に轢かれるか若しくは狐なり犬なりに襲われるかだった。それでだった。
「鴉の赤ちゃん拾ったの」
「ええ、そうしたの」
ソフィーは会社で同僚のメアリー=ジーンに話した。茶色の髪の毛を肩で切り揃えた黒い瞳で長身でしっかりした体格のソフィーとは逆にメアリーは金髪を伸ばして青い瞳で小柄である、ただ二人共純粋な白人だが何処かアジア系の感じがする然程彫のない顔立ちである。
「このまま放っておけなくてね」
「それで拾ってなの」
「今のところだけれど」
それでもというのだ。
「うちで育ててるの」
「そうしているのね」
「そうなの、それでね」
そのうえでというのだ。
「その子が飛べる様になるまでね」
「あんたが育ててるのね」
「そうしてるの、けれどね」
ここでだ、ソフィーはメアリーに困った顔になって話した。霧の都と呼ばれるロンドンはこの時も霧に覆われ天気が悪い。ロンドンエアポートも然りだ。そしてソフィーもそうした顔になって言うのだった。
「これがまた大変なのよ」
「犬よりも?」
「だってね、餌は虫よ」
鴉のそれはというのだ。
「虫をあげてるけれど」
「あんた虫苦手なの」
「大のね、虫自体は何処でもいるし捕まえてね」
「鴉にあげてるの」
「これが苦手で。まあうちに入って来た虫も食べてくれるけれど」
このことは有り難いがとうのだ。
「それでもね」
「虫が苦手だから」
「餌をあげるにも困るし」
ソフィーはさらにあげた。
「一応鳥籠の中に入れてるけれど」
「それで飼ってるのね」
「狭いから出来るだけ籠から出してあげるけれど」
そうしたらというのだ。
「あちこち飛んでその時おしっこしたり」
「ひょっとしてだけれど」
「そのひょっとしてよ」
メアリーの言いたいことを先に察して言った。
「うんちもするから」
「そのお掃除も大変なのね」
「しかもよ」
メアリーはその顔の困ったものをさらに深くさせて話した。
「シャワー浴びた後で私の頭の上にね」
「それは大変ね
「またそうするのが好きでね」
その困った顔で話すのだった。
「それをオリバーも面白かるかな」
「あんたが飼ってるワンちゃんね」
「そう、あの子もそうだから余計にね」
「困ってるのね」
「全く以てね」
ぼやく様に言うのだった。
「困ったことよ」
「本当に困ってる感じね、けれどね」
メアリーはソフィーのその顔特に目を見てだった、そうしいて言った。
「物凄く生き生きしてるわね」
「退屈はしてないわ」
ソフィーはメアリーにまんざらではないという顔で返した。
「命を助けたし」
「いいことをしたし」
「今もそうしているから」
「いいことをしているとそれだけで気分がいいものね」
「それに見ていて面白いから」
その鴉の子をというのだ。
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