ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第五十四話 第一の封印
苦戦しながらもアトラスを倒したアッシュとグレイ。
ダメージに膝を着き、肩で息をしながらもアッシュとグレイを鋭く睨むアトラスの姿に彼女のプライドが分かった。
「さあ、ヴァンの仲間から奪ったライブメタルを返してもらうわよ」
「ふん、断る。モデルFを取り返したいならとどめを刺して奪えばいい」
「…………」
それを聞いたアッシュの表情が歪み、それを見たアトラスが鼻で笑う。
「とどめを刺さないのか?甘いな」
「アタシは人殺しじゃないからね。物心ついた頃からハンターのみんなを見てきたから世の中綺麗事じゃ済まないのも知ってる。でも踏み外しちゃいけない人としての一線があることぐらい弁えてるつもりよ」
「……良いだろう、ここは退いてやる。けどね…相手が生きている限り、この運命のゲームは終わらないんだ。アタシを生かしておいた事、いつか後悔させてやるよ。そしてそこのお前」
「っ…!」
アトラスに声をかけられたグレイは目を見開いた。
「お前は言ったな?何も知らないまま傷付く者が増えていくのは見過ごせないと…これからもお前に戦う意志があるなら、いつか自分の正体を知る時が来るだろう。きっとお前は後悔する、何も知らずに死んだ方が良かったとな…!」
それだけ言うとアトラスは転送の光に包まれてこの場を去った。
恐らくは傷付いた体を休める場所に転送したのだろう。
そしてアトラスの立っていた場所にはモデルFのデータが残っており、それはアッシュとグレイに吸い込まれていき、二人の中で何かが外れるような音がした。
次の瞬間、体の内側から一気に溢れ出すような感覚を覚え、アッシュとグレイは苦しみだして膝を着いて、倒れた。
「くぅ…モデルA!?な…に?急に…苦しく…きゃあああああぁぁっ!」
「ぐっ…うああああっ!?何だ…どうしたんだ!?モデルA…!?うあああああぁぁっ!」
体の内側から襲う苦痛に苦しみながらも、二人の脳裏にその原因が映し出される。
《コードAW15からCE70までを解放、レポートデータ展開》
《……おめでとう。私が作ったこのモデルAは戦いの中で他のロックマンと戦っていく事に解放されていくプロテクトを施してある。一つ目のプロテクトを解いた君には、真実を知る権利と力を継ぐ資格がある…私はロストテクノロジーの研究を経て、ついに新たな進化の扉を開く、鍵を作り上げた。ライブメタル・モデルV…これを手にした者は、何者をも支配する力を手にするだろう。だが、人々が私の研究を理解するにはまだまだ時間が必要だ。そして、モデルVを覚醒させるための、生け贄も…私はモデルVを世界のあちこちに隠し、覚醒の時を待つ事にした。私の研究を理解し、力を受け継ぐ者が現れる、その時を…》
レポートの展開が終わるのと同時にアッシュとグレイは苦しみから解放されたことで荒い呼吸を繰り返す。
「はあ…はあ…何なのよ…あれは…」
「ううっ…モデルA…今のは一体…?」
倒れながらも何とか息を整えた二人は変身を一旦解除してモデルAを見上げる。
「今のが三賢人のおっさん達が言ってた、オイラに記録されているデータ…なのか?モデルVと…オイラを作った奴のデータか…」
「モデルA、大丈夫か?」
「とにかく今は逃げ込んだ人達を助けよう」
グレイがモデルAのことを案じるが、この部屋の奥にいる違法ハンター達を助けねばならないことを思い出したアッシュがシャッターを抉じ開ける。
「ひいっ!?また誰か来やがった!こいつはセラミカルチタンで出来たシールドだ!てめえの攻撃なんかにゃビクともしねえぞ!諦めて帰りやがれ!」
「セラミカルチタンねぇ、超レア物の金属じゃない。売ればいくらになるかしら?」
「アッシュ…」
早速セラミカルチタンのシールドの値踏みを開始するアッシュにグレイは呆れ、モデルAは溜め息を吐いた。
「守銭奴アッシュは置いといて……オイラ達の事をいちいち説明するのも面倒臭えな。さっさとご自慢のシールドとやらをぶっ壊そうぜ」
「そうだな…アッシュ、早く壊そう」
「そうね」
モデルAを手に取ってディアバーンに変身してアッシュとグレイは同時に飛び蹴りを繰り出すが、あっさりと弾かれてしまった。
「効かない!?」
様々な障害物を壊してきたディアバーンの飛び蹴りが通用しないことにグレイは驚くも、アッシュはロックマン・モデルAに戻ると、シールドに入った傷を見つめる。
「もっとパワーがないと駄目なようね」
「ディアバーン以上のパワーか……おい、モデルFに変身して、チャージ攻撃をぶち込んでやろうぜ。モデルFのパンチなら壊せるだろ」
「「トランスオン!!」」
アッシュとグレイがモデルFに変身するが、コピー出来たのはアーマーのみでフォルスロイドのように見た目を完全コピー出来るわけではないようだ。
「あら?今までと違ってアーマーしかコピー出来ないの?」
「前にも言ったろ?オイラの力を二人で使ってるからトランスオンが不安定だって…やっぱりアッシュとグレイじゃ、使える攻撃が違うな…でも共通する攻撃はあるし、説明は後でするからチャージ攻撃のパンチをぶちこんじまえ」
モデルAのセミチャージに相当するエネルギーをチャージしてからアッシュとグレイは同時にナックルバスターによるエネルギーを纏ったパンチ、メガトンクラッシュを叩き込むとご自慢のシールドは粉々となり、高笑いしてた違法ハンターのリーダーらしき人物は怯え始めた。
「うわああああ!?い、命だけはお助けをーっ!」
「結局こうなるのか…変身を解除して、誤解を解こうぜ…」
変身を解除して誤解を解くと、取り敢えず違法ハンターのリーダーと話をすることになった。
「いやー、ホント助かった!礼を言うぜ!アッシュの姐さん!グレイの兄貴!」
「姐さんとか兄貴とかどうでもいいからさ」
「えっと…それで列車の修理に飛行艇のパーツを使いたいんだけど…」
溜め息を吐くアッシュと慣れない礼に戸惑うグレイだが、用件を伝えるとリーダーの男は快く頷いてくれた。
「ああ、その話なら任せてくれ。さっき、ハンターキャンプへ仲間を修理へ行かせたとこだ。みんな、アンタ達の強さと勇気に惚れちまったのさ。これからは心を入れ替えて全うなハンターとして協力するぜ!」
「へへっ、何か子分が出来たみたいだな。感謝されるってのも悪い気分じゃない」
「もうじき列車の修理も終わってることだろう。ハンターキャンプに行ってみな、兄貴達の事、レギオンズで何か分かるといいな!姐さん!旅の無事を祈ってるぜ!」
「ありがと、それじゃあここのトランスサーバー使わせてよ。次に会う時はお宝を巡るライバルね」
それだけ言うと飛行艇のトランスサーバーを使ってハンターキャンプに帰還すると、早速モデルAからモデルFの説明を受ける。
「んー、モデルFは遠近に対応した炎属性のオールラウンドタイプのロックマンのようだな…少し遠距離向きか?基本的な能力はほぼ共通なようだけど、フルチャージ攻撃が違うな。アッシュは爆弾、グレイは炎の弾を発射するようだな。アッシュのフルチャージのメガトンクラッシュBは爆弾の射程距離が長いけど攻撃範囲がグレイより狭い上に貫通性能がない。まあ、爆弾だから仕方ないけどな…フルチャージ攻撃にナックルバスターを地面に叩きつけるグランドブレイクBがあるんだけど、アッシュは爆弾を設置してトラップのように扱えるようだな。逆にグレイのフルチャージのメガトンクラッシュWは炎の弾の貫通性能と攻撃範囲は上回るけど、射程距離が短いな。炎を当てたいならある程度距離を詰める必要があるぞ。もう一つの技であるグランドブレイクWは火柱を発生させるようだな。」
つまりモデルFの場合、アッシュは爆弾を発射する都合上、射程距離が長いが貫通性能と僅かに攻撃範囲がグレイに劣り、逆にグレイは貫通性能と僅かに攻撃範囲が勝る代わりに射程距離が短いと言う欠点があるということだろう。
「ところで、アトラスがしたように弾の軌道を変えるなんてこと出来る?」
「ああ、出来るぞ。頭の中で弾の軌道をイメージするんだ。それで大体の軌道変更はしてくれる。」
「他には?アトラスは分裂する弾を発射したり、ダッシュしながら殴ったりしてたじゃないか?」
グレイの問いにモデルAは渋い声を出す。
「うーん、無理っぽいなー。オイラのトランスオンはコピー元の基本データをコピーするだけだから、適合者が独自に編み出したり、発展させた技とかはコピー出来ないんだよ。ディアバーンくらい単純なら出来るかも知れないけどさ…そもそもアッシュ達はモデルFの適合者でもないから完璧にコピー出来ても使いこなせないんじゃないのか?」
「…そうね、取り敢えず戦力が増えたことだし。さっさとステーションに向かいましょうか!!」
「うん」
ステーションに到着すると違法ハンターだった男が二人に気付いて声をかける。
「よお!待ってたぜ!姐さん!兄貴!見てくれよ!列車の修理は完璧だ!いつでも発車出来るぜ!レギオンズ本部へ行くかい?」
「ええ、お願い」
「よっしゃ!さあ、乗ってくれ!」
輸送列車に乗り込み、レギオンズ本部のステーションに到着するまで列車の旅を楽しむことにしたアッシュとグレイであった。
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