戦国異伝供書
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第九十話 尼子家の謀その三
「そうなる前にな」
「その不満を消すのですな」
「そうする、ではな」
「それでは」
志道も頷いてだ、そしてだ。
元就はすぐに動いて元網を吉田郡山城に置いて渡辺家と坂家には褒美をやって謀反の芽を抑えた、そうして。
亀井が送ってきた者達は始末してその首を彼等のところに送ってだ、亀井の噂を流して彼も動けなくした。こうしてだった。
元就は元網にこう言った。
「若しもな」
「それがしが謀反となれば」
「その時はじゃ」
まさにというのだ。
「お主を切るしかなかった」
「左様ですな」
「それはわかるな」
「はい、身内といえどです」
元網は兄に強い声で答えた。
「裏切ればです」
「切るしかない」
「それが戦国の世です」
「だからな」
「それで、ですな」
「わしもそうするしかなかった」
「だからですな」
「お主を切りたくなかった」
元就は弟にその考えを述べた。
「だからな」
「それで、ですか」
「お主をここに呼んでな」
「尼子家の者達を近寄せなかった」
「そして渡辺家、坂家もな」
両家もというのだ。
「手出し出来ぬ様にな」
「したのですな」
「そうじゃ」
「前以て」
「常に周りを見て動きを把握しておるとな」
そうすればというのだ。
「その動きもわかる」
「それでこうしたことも防げるのですな」
「そうじゃ、若し周りをよく見ておらぬと」
その時はというのだ。
「仕掛けられる」
「だからですか」
「これからも周りはよく見ておく、そして逆にな」
「仕掛けることもですか」
「する」
それもというのだ。
「亀井殿にした様にな」
「そうですか、しかしこの度のことで」
「尼子家はじゃな」
「亀井殿にしたことが謀とわかれば」
「その時はな」
「尼子家が攻めて来ますな」
「元々この安芸を狙っておる」
尼子家はとだ、元就も話した。
「それで、ですな」
「ここで攻める」
「そうしてきますな」
「それでじゃ」
「今のうちにですか」
「戦に備えておこう」
元就は落ち着いた声で述べた。
「これよりな」
「そうしますか」
「実は尼子家につくことも考えておったが」
「こうなってはですな」
「尼子家は安芸に攻め込んでくる」
「だからですな」
元網は鋭い声で述べた。
「この度は」
「うむ、今から備えるぞ」
「ではそれがしも」
「戦ってもらうぞ」
その尼子家と、というのだ。
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