ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第三十七話 破壊神の覚醒
ガーディアンベースを墜としたセルパンへの怒りによって増大したライブメタルの出力に任せてセルパンに怒濤の攻めを浴びせ、二人は何とかセルパンを追い詰めはしたものの、セルパンの不敵な笑みに得体の知れない何かを感じた。
「フッ…フフフ…」
「…何がおかしい!セルパン!」
「追い詰められて気でも狂ったか!?」
「…プロメテ達の…言っていた通りだ…君達が最後の鍵だったのだよ。君達は今……とても強い感情に……突き動かされている…この私の力を…上回る程の…強い感情にだ…!」
「「っ!?」」
二人の体から紫の光が飛び出し、それはモデルVに吸い込まれ、エールは変身が解除されて倒れ伏し、ヴァンはモデルOと一体化しているためか、変身は解除はされなかったものの膝を着いた。
「な…んだ…?体から急に力が…」
「フフフ…素晴らしい…君達の怒りと憎しみのエネルギーがこれほどまでとは…十年間もの長い時間をかけただけあってエネルギーの質がこれ程までに違うとは…」
「何を…言ってるの…?」
「忘れたのかね?モデルVの力の源は負の感情。つまり十年前から君達が抱いていた負の感情がモデルV復活のための鍵だったのだ…君達をここまで突き動かしてきたのはそれは勇気でも、正義でもない…君達の大切な…愛する者達を奪った私への…そう、憎しみの心だよ…!」
ヴァンとエールのエネルギーを吸収した影響か、セルパンのダメージも回復している。
「そんな…アタシ達が…モデルV復活の鍵だったって言うの…?…それじゃ……アタシ達の戦いは…一体…何のために…!」
「簡単なことだ。君達は私を王にするために戦ってくれたのだよ。感謝しよう…私から君達への贈り物だ。私が王となる瞬間を見届けたまえ…!」
モデルV本体に向かおうとセルパンだが、ヴァンはふらつきながらも立ち上がる。
「ふざ…けるな…!!」
「?」
「モデルVが覚醒しようと…関係ない…覚醒したモデルVごとお前を倒す!!」
「諦めの悪い子供だ。負けると分かっていてまだ足掻くかね?エネルギーを吸収されたことで立っているのもやっとではないのかな?いや、寧ろ君を目の前で始末して更に彼女からエネルギーを奪うと言うのも悪くはない!!」
ヴァンに殴りかかるセルパン。
重たい体を何とか動かしながらヴァンは攻撃を回避する。
「ふざけるなセルパン!俺は諦めたりはしない!お前を含めたイレギュラーを全て倒すまでは絶対にな!!」
「イレギュラー…か…君のように変化を拒み、人の進化を拒む君のような存在が私にはイレギュラーに見えるがね!!人は変わるべきなのだよ!憎しみを生む心と苦しみを受ける体を捨ててでも!!」
セルパンの言葉にヴァンは怒りを覚えながら言い返す。
「ふざけるな!そんなものただの人形と変わらない!俺達ヒューマノイドとレプリロイドに心があるのは、そんな未来のために…モデルVの餌となるためじゃない!!」
「星に命が芽生え、人と機械が生まれ、助け合いながら争い合う!この度に君やあの愚かな女のような者達が勝利してきたのだろう!誰も傷付けたくない、大切な物を守りたい、何も失いたくない、そうやって少しでも自分が傷付かない方へ甘えた選択を繰り返す!聞こう少年よ!戦ってまで変わらぬ運命を、光無き未来を守って何の意味がある!?」
「意味か…生憎、俺は頭が良い方じゃなくてね。誰かさんがイレギュラーをばら蒔いてくれたおかげで一日を生きるのも大変だったんだ。運命とか未来とか俺にはどうでもいい…定められた運命なんてごめんだし、予想もつかない未来も要らない。今、俺に必要なのは現在(いま)だけだ。俺が戦う理由はお前達イレギュラーを倒すこと、そして俺が信じるものを守るためだ!!(そう、俺の存在を感じられる現在を信じるだけだ…)」
セルパンから距離を取りつつ、バスターショットを構えてショットを連射していく。
「逆に俺からも聞きたいな。憎しみや苦しみを…心を捨て去った先に何が残るんだ!?何も残らない!そんなの死んでるのと同じだからな!!例え俺達を倒してもそれを否定する奴が必ず現れる!!」
「黙れ!」
「ぐはっ!」
スライディングからの蹴り上げを喰らったヴァンは大きく吹き飛ばされる。
「ヴァン…!ロックオン!!」
モデルXとモデルZを握り締めて変身しようとしても、モデルVにエネルギーを取り込まれたことによる虚脱感がまだ抜けておらず、モデルZXへの変身が出来なかった。
「エール、駄目だ。まだ君に変身出来るだけの力が戻ってない…!」
「そんな…!」
このままではヴァンが殺されてしまうと思ったエールは絶望するが、ヴァンは頭を揺さぶられたことで意識が混濁しており、頭の中でモデルOの声が響いていた。
“我は救世主なり”
“破壊こそ救済の力”
「あの世で見ていると良い、私の創る新世界を!!」
そして倒れているヴァンに振り下ろされるセルパンの拳。
“破壊する…全てをゼロにするために”
「(止め…ろ…)」
しかし、モデルOの声が強く響いた瞬間にヴァンの瞳の色が翡翠から紅に変わると、難なくそれを受け止めた。
「何!?」
「え…?」
セルパンの拳を受け止めたヴァンは凄まじい殺気を纏ってセルパンを投げ飛ばす。
元々弱っていた状態で意識を失いかけたところをモデルOによって意識を乗っ取られてしまうヴァン。
「…エ…ール…後は…頼…む…」
完全に意識を失う寸前にエールに言うと、真紅のオーラを纏ったヴァンはアルティメットセイバーをホルスターから抜くと、一気にセルパンとの距離を詰めた。
「オリャアアアアッ!!」
強化されたチャージセイバーがセルパンに直撃し、セルパンの巨体を吹き飛ばす。
「ぬうっ!?」
エネルギーを吸収されてフラフラだった者とは思えないくらいに強烈な一撃に防御も出来ずに吹き飛ばされる。
「ヤッ!ヤッ!オリャアッ!!」
吹き飛ばされたセルパンにほとんどノーチャージのダブルチャージバスターと真空刃のソニックブームが放たれた。
「ぬおおおっ!!?」
吹き飛ばされた状態では満足な防御も出来ずに全撃当たってしまう。
「アークブレード!!」
一回転しながらセイバーを振るうと広範囲に衝撃波が放たれ、セルパンの足に直撃してセルパンの身動きを封じた。
「しまっ…」
「はあっ!」
低速ダッシュジャンプしながらの超加速で回転斬りからの三連撃、そしてとどめの龍炎刃の斬り上げが炸裂した。
「ぐあああああっ!!?」
「ふ…ははは…」
無表情だったヴァンの表情にセルパン以上の狂気が宿る。
それを見たエールの表情に怯えが浮かび、モデルXの方を見遣る。
「モデルX!もう充分だよ、早くヴァンを止めて!」
「………」
「モデルX!?」
止めるように頼んでもモデルXは沈黙するだけ、エールは急かすように呼んだ。
「駄目なんだ…もう、僕ではモデルOの抑制は出来ない」
「え…?」
モデルXからの信じたくない言葉に、エールは呆然となった。
「モデルOの力が最早、僕でも抑えきれない程に増大しているんだ。」
「そんな…何時から…」
「モデルHの力が完全に戻ってから…かな…?深刻化し始めたのは…」
「どうして黙ってたの!?」
「それは…」
「あいつが望まなかったからだ。お前に余計な心配はかけたくなかったらしい」
モデルXの代わりにモデルZが答えた。
「そんな…」
絶句するエールを他所にセルパンは傷付いた体を何とか起き上がると、モデルVに両腕を掲げた。
「調子に乗るな小僧!その殺意のエネルギー、モデルVの餌としてやろう!!」
「…………」
ヴァンの体から再び紫の光が飛び出してモデルVに吸い込まれていき、それを確認したヴァンは目を閉じた。
「ヴァン!」
「ハーッハッハッハ!!また地面に這いつくば…」
エールの叫びとセルパンの笑い声が響いた直後、モデルVが爆発した。
「!?」
「は……?」
呆然となるセルパンだが、モデルVの随所で小規模な爆発が起こり始めたことに改めてヴァンを見遣る。
「どんな物にも限界は存在する。なら、モデルVの限界以上のエネルギーを喰らわせてやるだけだ」
目を閉じた状態で平然と言うヴァンにセルパンは驚愕する。
「ば、馬鹿な…我がモデルVの破片と同程度の質量で本体のエネルギー許容量を遥かに上回るエネルギー量だと!?減るどころか寧ろ増して…モデルOのエネルギーには限界がないのか!?」
そして閉じていた目を見開くのと同時にモデルVが一際大きな爆発を起こした。
「どうしたセルパン?」
「うう…」
「足が震えてるぞ、潔く負けを認めるか…?それとも、負けると分かっていてまだ足掻くのか?」
嘲笑と共に先程のセルパンの言葉を言うと、セルパンの表情が屈辱に歪んだ。
「くっ!舐めるな小僧!!私の最大の一撃の前に散れ!!」
バスターから放たれた巨大なエネルギー弾をヴァンはバスターを構えてセミチャージバスターを連射する。
エネルギー弾は容易く弾かれて見当違いの方向に飛んでいき、ヴァンはセイバーをセルパンに投擲した。
「!?」
「ああっ!」
それをセルパンは顔を逸らしてギリギリで回避し、回避されたことにエールは目を見開く。
そしてモデルOの主武装であるセイバーを投擲すると言う暴挙にセルパンは嘲笑った。
「フ、フフフ…セイバーは君にとって主な武器のはず…その武器を投げるとは血迷ったのかね!?」
「馬鹿かお前は…俺の腕をよく見ろ」
「「!?」」
ヴァンの右腕をよく見ると、腕のアーマーからワイヤーフックが射出されており、先端のフックが投擲したセイバーの柄を挟んでおり、ワイヤーはセルパンを拘束した。
「しま…っ!?」
「終わりだ」
力強く引っ張るとセルパンは抵抗すら出来ずに引っ張られ、ヴァンはワイヤーを振り回して壁、地面に何度もセルパンを叩きつけるとそのままワイヤーを引いて極限までエネルギーを収束させた拳を叩き込んだ。
「裂光覇」
光に呑まれたセルパンは絶叫すら上げることすら出来ずに吹き飛んだ。
「そん…な…馬鹿…な…」
「雑魚が」
ワイヤーを腕に元に戻してセイバーを回収すると、冷たく見下ろしながらモデルOの狂気的な好戦欲と破壊衝動に支配されたヴァン。
「まだだ…私には…モデルV本体がある…貴様に…貴様に見せてやろう!王の真の力をーーーっ!!」
「で、でかい!?」
モデルV本体と融合し、巨大化したセルパンがヴァンに向けてありったけの攻撃をする。
「…………」
「死ね!死ぬのだ小僧!新世界の王たる私に歯向かった罰を…」
「うるさい」
拳を地面に叩き付けて裂光覇を繰り出す。
無数の光の柱が立ち昇り、セルパンの全身を貫いた。
「ぐおおおおっ!?」
「弱点はそこか」
頭部に攻撃が当たった瞬間にセルパンが悲鳴を上げたので、そこを弱点と判断したヴァンはダブルジャンプからの回転斬りを浴びせた。
「ぬあああああっ!!まだだぁっ!!」
セルパンが更に巨大化し、両肩の目を思わせるパーツが露出し、そしてヴァンに炎による攻撃を仕掛けるが、それをかわしながらジャンプする。
「アークブレード!!」
回転斬りによる広範囲に放たれた衝撃波が体全体に直撃し、両肩に直撃した瞬間に怯んだ。
「今度はそこか、ダブルチャージバスター!!」
即座に両肩にチャージバスターを一発ずつ当てると、セルパンは激痛に悶えた。
「ぐあああああっ!!?」
「期待外れだな、ただの木偶の坊か」
「舐めるな小僧ぉっ!!」
更に巨大化してヴァンに今使える全ての攻撃を繰り出した。
「終わりにするぞ」
とどめとばかりにチャージを終えたセイバーを大上段に構えて一気に振り下ろした。
「な、ば、馬鹿なああああっ!!?」
強烈なチャージセイバーの衝撃波をまともに受けたセルパンは沈黙した。
「……嘘…セルパンをこんなにあっさり…」
「…………」
呆然としているエールに視線を遣ると、興味を無くしたかのようにこの場を去ろうとする。
「いけないエール!彼は街に出るつもりだ!!」
「え!?」
モデルOに乗っ取られている今のヴァンが街に出たりしたら…人々に圧倒的な力を振るうヴァンの姿が脳裏を過ぎる。
「どうするエール…ヴァンと戦えるか?」
モデルZの言葉にエールは目を見開いた。
「戦うって…ヴァンと倒せってこと!?」
「そうだ、このままヴァンを街に出してしまえば確実に被害が出るぞ」
「こうなってしまっては、ヴァンと戦う以外はない」
モデルHとモデルPの言葉にエールの表情は絶望に染まった。
「何で…何でアタシとヴァンが戦わないといけないの…?さっきまで一緒に…」
「エール…」
悲しげにエールを見下ろすモデルXだが、モデルFは焦れったそうに叫んだ。
「だああ!おい、エール!良く聞け!あいつは意識を失う時にお前に“後は頼む”って言ってただろ!これは幼なじみのお前じゃねえと止められねえんだよ!!」
「良く聞きなさいエール。あなたには今、二つの選択肢があるわ…ヴァンを倒して救うか…このままヴァンとの戦いから逃げて取り返しのつかない事態になるのを静観するか…あなたはどっちを選ぶの?」
モデルFとモデルLの言葉に俯くエールだが、少しの沈黙の後に顔を上げた。
「………分かった、アタシ…ヴァンと戦うよ」
「エール…」
「アタシがもっと強かったら…こんなことにはならなかった。ヴァンはアタシが止めてくれるのを信じてくれたのなら…アタシはヴァンと戦う!」
モデルXの気遣うような視線にエールは頷くと、モデルZと共に掴んだ。
「みんな、アタシに力を貸して…!」
「勿論だ。俺達もあいつを失いたくはない」
「俺達も出来るだけのサポートをする。多少の負荷はあるが、奴に勝つにはこれしかない」
モデルZとモデルHの言葉にライブメタル達も覚悟を決めたらしく、エネルギーを全開の状態となる。
「ロックオン!!」
モデルZXへと変身し、ヴァンにZXバスターを向ける。
「………」
「ヴァン、あんたは絶対にここから出さない」
「邪魔をするつもりか?」
「…そうだよ、ヴァンに街を滅茶苦茶にさせるわけにはいかないから」
不機嫌な表情を浮かべるが、次の瞬間には挑発的な笑みを浮かべた。
「お前が俺に勝てるつもりか?」
「……分からない…でも、逃げるわけにはいかない!」
バスターのチャージをするエールにヴァンもまたバスターのチャージをするのであった。
まるで数百年前の再現と言うかのように。
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