ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第三十六話 ライブメタル・モデルVの破壊
エリアDに転送されたヴァンとエールはセルパン・カンパニー本社の前で佇んでいた。
「行くぞエール」
「何時でもOKよ」
「あまり外の近くで派手に暴れるわけにはいかない。ここに捕らわれた人達がいるからな」
外には簡易的な檻の中に捕らわれた人々がいるため、ここで見つかるのは避けなければならない。
「なら、モデルP…モデルL…力を貸して」
「うむ、上の階に強大なエネルギー反応が複数ある。」
「私達の力があなた達を導くわ」
モデルLとモデルPの力を使ってエールはヴァンと共にセルパン・カンパニーに内部へと潜入した。
そして外では檻の中で人々の絶望と恐怖といった感情が人々からエネルギーとして吸い上げられていた。
「こ、これは!?」
「モデルVの復活のためのエネルギー回収でしょう……ヴァン…エール…気をつけて」
人々を救助しているガーディアンの地上部隊に指示を出していたジルウェとプレリーが今起きている現象に驚く。
「モデルVのプレッシャーが大きくなっていく…」
「うん、アタシにも分かる…急がないと…」
「って思ってんのに邪魔者が来たか」
「ゲッ」
広い場所に出たかと思えば倒したはずのフォルスロイドが立ち塞がる。
「何で倒したのに生き返ってるの…」
「モデルVの影響で復活したんだろ…流石に昔のイレギュラー連中は復活してないようだけどな」
流石に奴らまで復活されたら手が足りない。
「一人四体だ。さっさと片付けるぞ」
「OK」
復活したフォルスロイドとの戦いが始まったが、数多くの強敵との戦いと一度戦った相手に今の二人が負けるわけもなく、モデルH達に遠慮していた初戦と違って全力で弱点を突き、そして動きを見切られたフォルスロイド達は瞬く間に沈んだ。
「行くぞ」
「うん」
フォルスロイド達を片付けたヴァンとエールはセルパンの元へ向かう。
やはり敵の本拠地なだけあって警備は厳重だったが、今の二人には大した問題ではない。
奥へ奥へと進んでいくと無数のカプセルが乱雑に置かれており、その中には見覚えのある物があった。
「これ…エリアEで見たな」
「そっか、ヴァンは知らないんだっけ?これはサイバーエルフって電子の妖精なの…エリアIで街の人達がサイバーエルフにされるって言ってたでしょ?これがそれなの」
「…まさか、これも…」
「考えたくないけど…でもこんなにたくさん…」
カプセルに閉じ込められたサイバーエルフに嫌な予感を感じながらも扉を蹴り飛ばす。
そこにはヴァンとエールにとって忌々しい存在であるセルパンがいた。
「(プロメテとパンドラはいないようだけど…近くに気配を感じる…高みの見物か…)」
「何故…モデルVの覚醒にこれだけのサイバーエルフを必要とするのか……君達に分かるかね…?それは、人々の恐怖と絶望を取り込み…自らの力とするためだ…!」
モデルVの本体の妖しい輝きとプレッシャーが更に増していく。
「「……!?」」
「さあ…モデルV…!この国の恐怖と絶望を喰らい尽くせ!」
カプセルに閉じ込められたサイバーエルフ達がモデルVに吸収されていく。
「サイバーエルフがモデルVに吸収されていく!?」
「酷い…!」
ヴァンとエールは知らないが、既に外に捕らわれている人々も同じようにエネルギーを吸収されており、これが二度目の吸収となる。
「弱き者は我らと一つになることで、苦しみから解放される!選ばれし者…ロックマンによる人々の救済!これがプロジェクト・ヘブンだ!」
「ロックマンによる人々の救済…?この国の人々を犠牲にして
それでも救いだと言うの!?」
「それにこのサイバーエルフ達は何だ!?これだけのサイバーエルフを一体どこから集めてきた!?」
「…少女よ…いつまで自分達だけ正義を気取るつもりだ?我らは多くの犠牲者から選ばれた、新世界の王…その候補者なのだよ。モデルVは滅びをもたらす物ではない…進化を促す物だ!私は、進化についていけない人々に、生きる意味を与えてやろうとしているのだ!そして少年よ…君の疑問にも答えてやろう…十年前…イレギュラーの襲撃により、この国の人々がその犠牲となった…そして、我が社の警備隊がイレギュラーを倒し、私は英雄として国に迎えられた。あれから 幾度となくこの国はイレギュラーに襲われ、その度に我が社が救ってきた。こうして私は人々の信頼と共に、その魂をも手に入れてきたのだ!この国の歴史そのものがプロジェクト・ヘヴンの一部なのだよ!」
それを聞いたヴァンとエールの表情に驚愕が走った。
「じゃあ、このサイバーエルフは…十年前に襲われた人達の…母さんやおばさん達の物なのか!?結局…お前が全て…!母さんも…!おばさんもっ…!…プレリーのお姉さんも……!」
「あんたはただ、過去の自分に…イレギュラーの恐怖に怯えてるだけよ!恐怖から逃げようとするために人の上に立とうとする!こんなものが進化だって…あんたの理想だって言うの!?」
怒りに震えるヴァンとエールの言葉にセルパンは嘲笑を浮かべるだけだ。
「理想だと…?戯れ言だ!強き者が生き残り、弱き者はその糧となる!それは自然の摂理だ!私はこの国の人々の魂を喰らうことで、モデルVの力を得た!少年は人としての肉体と一生を失うことで破壊神のライブメタルのロックマンとなり、少女もまた赤のロックマンからモデルZを受け継ぎ、我が部下達からモデルH達を奪ったからこそここにいるのだろう!?犠牲無くして、人に進化はない!それを証明する者が、我らロックマンだ!ロックオン!!」
モデルVの欠片で変身したセルパンは禍々しい笑みを浮かべながら二人を見つめた。
「最後に…君達の恐怖と絶望を…私の勝利の喜びを…最高の感情をモデルVに捧げよう!!」
「「っ!!」」
「長らく待たせて申し訳なかった…さあ、始めようか!!」
本体に吸収されたエネルギーがセルパンにも影響を与えているのか、あまりにも凄まじいエネルギーを纏っている。
「……うおおおおおおおっ!!!」
オーバードライブを発動し、アルティメットセイバーを抜いてチャージセイバーでセルパンに斬りかかる。
「セルパンッ!!」
エールもまたチャージを終えたZXバスターを構え、チャージバスターを発射した。
「ぬんっ!!」
チャージセイバーとチャージバスターをそれぞれ片手で受け止め、ヴァンを弾き飛ばしてチャージバスターをヴァンに弾き返した。
「チッ!!」
ダブルジャンプで光弾を回避するとセルパンの追撃に備えた。
「ずあっ!!」
体勢を整えた直後に迫るセルパンの豪腕。
それをギリギリでかわして距離を取りつつ、バスターショットを構えてセミチャージバスターの連射をセルパンに繰り出す。
「甘いわっ!!」
予めチャージしていたのか指先のバスターから巨大なエネルギー弾が発射され、セミチャージバスターを防いだ。
「舐めるなぁっ!!」
背後を取ったエールがZXセイバーで斬りかかるが、セルパンは片腕で受け止めて見せた。
「軽いぞっ!!」
腕の一振りでエールは吹き飛ばされ、ヴァンはオメガナックルでの肉弾戦を仕掛ける。
セルパンも拳を握り締め、モデルVの出力に物を言わせて拳を繰り出した。
互いの拳が何度も激突し、ヴァンは凄まじい形相でセルパンを睨んだ。
「イレギュラーが…!」
「イレギュラーか…私からすれば君の方がイレギュラーらしい顔に見えるがね!!」
再び弾き飛ばされるヴァンだが、何とか受け身を取ることに成功してセイバーを構えた。
「………」
「来い!破壊神と青のロックマン!見せてやろう、我がモデルVの力を!!受け取れ!!」
両手の指先のバスターから放たれる弾幕。
それをエールがモデルPXに変身し、十字手裏剣を盾にしながら突き進む。
「くっ!」
「足掻け!そして怒れ!そして絶望せよ!人々の負の感情が私の力を高めてくれる!!見たまえ!このエネルギーの高まりを!!」
「黙りなさい!どれだけあんたが強くなろうとアタシ達が必ず止めて見せる!!アタシがみんなを守る!そしてジルウェの所に生きて帰るの!!」
「笑わせるな小娘!!」
足にエネルギーを纏わせたスライディングを繰り出すセルパンに対してエールは瞬間的にオーバードライブを発動してシャドウダッシュで回避する。
「今のお前には…逃げてばかりのお前には分からないだろうな!自分を信じて帰りを待ってくれている人がいることの幸福(しあわせ)が!イレギュラーの恐怖から逃げるために人の心との繋がりから逃げ続け、裏切りを続けてきたお前には!!」
「ほざくな小僧!心の繋がり?そのようなものに何の価値があると言うのだ?そのような虚弱な物は強大な力の前ではゴミ屑同然!!見よ、これが王の力だ!!」
紫の禍々しいオーラを纏うセルパンにヴァンとエールの目が見開いた。
「「オーバードライブ!?」」
「驚くことではあるまい?破壊神のロックマンである君も単体でのロックオンでオーバードライブを発動しているではないか?私も同じくそれが出来る。ただそれだけのこと!!」
再びスライディングを繰り出してくるセルパン。
しかしそのスピードは最初の比ではなく、強化されたスピードに対応出来なかったエールがまともに受けて体勢を崩し、その直後に強烈な蹴り上げを喰らった。
「ごはっ!?」
「エール!?」
「君にはこれをプレゼントしよう。受け取りたまえ!!」
再び放たれたバスターからの五発同時ショット。
しかし、その威力と速度も大幅に強化されており、ヴァンはショットをまともに浴びてしまう。
「ぐああっ!?」
「まだだ!!」
ショットを絶え間なく連射し続け、エールが離れた場所に落下し、ヴァンはあまりの威力に倒れた。
「例え破壊神と英雄の力だろうと我がモデルVの前では無力。そこで寝ていたまえ…君達は本当に運が良い…君達は私が王となる瞬間を…新世界の王が誕生を目の当たりにする最初の存在となるのだ!!」
「ふざ…けるなよ…!」
「勝手に決めないで…!アタシ達はまだ負けてない…!!」
「ふん…まだ足掻くのかね…ならば君達には少しばかり罰を与えよう」
セルパンがスイッチを押すとモニターが現れ、モニターにはガーディアンベースが映った。
「「!?」」
「ガーディアンベース…あのようなオンボロな船には君達の大切な者達がいるのだろう?ならばあの船を墜とせば君達はとても素晴らしい絶望を味わうことになるだろう。」
「何!?」
「そ、そんな!止め…」
「やれ」
ガーディアンベースをイレギュラーが取り囲み、セルパンが合図を送った瞬間、ガーディアンベースは一斉攻撃を受けて撃墜された。
「あ…」
「ガーディアン…ベースが…」
「これが王に逆らった者の末路だと言うことだ。覚えておくといい」
「「…セルパンッ!!!」」
ガーディアンベースを撃墜したセルパンにかつてない怒りを爆発させたヴァンとエール。
「よくも…よくもプレリー達をっ!!」
「あんただけは…絶対に許さないっ!!」
怒りがライブメタルの出力を上げ、オーバードライブも発動していないにも関わらずオーラが迸る。
「己の無力さを思い知るがいい!!」
「ダブルロックオン!モデルHX!!」
セルパンがバスターを構えた瞬間にダッシュジャンプからのエアダッシュでの超加速でセルパンの懐に入ったエール。
「速いっ!?」
「喰らえっ!!」
ダブルセイバーによる連撃を叩き込み、最後のソニックブームがセルパンの体に深い傷を刻んだ。
「ぬうっ!?」
「ダブルチャージバスター!!」
オーバードライブを発動したヴァンがバスターをフルチャージし、ダブルチャージバスターをセルパンに直撃させた。
「ぐうううっ!?」
「まだだぁっ!!真空刃!!」
セイバーを居合いの要領で振るうと、電撃を纏ったソニックブームがセルパンに直撃する。
「っ、調子に乗るな!!」
再びバスターから巨大なエネルギー弾を発射しようとするが、それよりも速くヴァンとエールは準備を終えていた。
「モデルF!!特大のをお願い!!」
「おう!とびっきりのを喰らわせてやるぜ!!」
「終わりだセルパン!!」
エールはモデルFXに変身し、チャージを終えた二丁のナックルバスターを、ヴァンはオメガナックルのエネルギーを拳に極限まで収束させ、地面に叩きつけた。
「ダブルグラウンドブレイク!!」
「裂光覇!!」
炎柱と光柱が同時に立ち昇り、セルパンを飲み込んだ。
「はあ…はあ…」
「どうだ…?」
自分達の渾身の一撃は確かにセルパンに直撃したが、倒せたかまでは分からない。
「まだだ…まだ終わらんよ…!」
爆煙から傷だらけの状態でありながらセルパンはしっかりとした足取りで現れた。
「セルパン…!」
「しぶとい奴だな…だけど、これで終わりだ…!」
二人が武器を再び構えた時、セルパンは絶体絶命の危機であるにも関わらずに不敵に笑ったのであった。
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