【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第2章 見習い悪魔と不死鳥のハーレム団
第11話 不死鳥のくせになまいきだ
俺はいま、絶望を味わっている。
少し前まで、女と切り結んでいた木場は、地に伏せ、子猫は部長の守りで手いっぱいだ。
残る前衛は俺だけだが、目の前の男が自由な行動を許してくれない。
さきほどから、拳と拳の応酬が続くが、相手は明らかに手を抜いている。
(時間稼ぎのつもりか)
俺が未熟者だというのは重々承知している。
だがしかし、こうまで手玉に取られると、悔しさがこみあげてくる。
ズガッドドンッッ
轟音が響き、視線だけ向けると、子猫が鈍器で吹き飛ばされていた。
思わず気を取られた一瞬の空白を見逃すような相手ではなった。
「ぐうっ!?」
肺から息を絞りだすような声をだして、宙を舞う。
腹部に右ストレートが、きれいに決まっていたと理解したのは、地面に叩きつけられた後だった。
(すまない……部長、先輩、みんな)
涙で滲む視界には、身を守る盾たちを失い攻撃にさらされるリアス、朱乃とアーシアの姿が映る。
三人をめがけて魔力弾が飛んでいくが、何もできない。
「リアスッ!だめええええええええええええ!!」
爆音が響く。土煙が上がり、何が起きたか外からではわからない。
朱乃の絶叫を聞きながら、俺の意識はフェードアウトしていった。
◆
兵藤一誠が、男と撃ちあっていたころ――
「アーシア!祐斗の治療をお願いッ!」
リアス・グレモリーは、窮地に立たされていた。
騎士の木場祐斗は、女剣士に斬られ、塔城子猫が、二人の敵を抑えている。
どちらが、優勢かは明らかだった。
「いまいきますっ――きゃあっ!?」
「アーシア!」
姫島朱乃の放った魔力弾を目くらましに、木場祐斗の治療に向かうアーシア・アルジェント。
しかし、現場につこうとする寸前、何者かの攻撃を受け、力なく倒れる。
(どういうこと。敵は全て抑えていたはず……!?)
思考に耽る間も、攻撃の手を緩めないリアスは、さすがと言えた。
アーシアの援護を諦め、2対1で、劣勢に立たされている子猫の援護を行う。
既に、朱乃が子猫に向けて魔力弾をばらまいており――
「リアスッ!だめええええええええええええ!!」
朱乃の叫び声を最後に、意識を失った。
――――この日、グレモリー眷属は、全滅した
◇
「話にならんな」
皆が固唾をのむ中、シグナムが辛辣な一言を告げた。
今、ボクたちは、さきほどの『模擬戦』の反省会を行っている。
事の起こりは、「強化合宿」を行うために、グレモリー家所有の別荘についてからの会話だった。
強化合宿自体は、原作にもある。
ライザー・フェニックス陣営との実力に開きがある以上、当然の措置ともいえる。
――――違いは、八神はやてと愉快な仲間たちが参加しているということだけだろう
『えっ。八神さんまで、戦うのか!?それはさすがに――』
『「さすがに」なんだい?アーシアだって戦うのだ。それに、バイザー討伐でボクの実力の一端は示しはずだぞ』
『はやての言う通りよ。彼女――ううん。八神家の皆は、一人ひとりが歴戦のツワモノといっていいくらいよ。そうでしょう、朱乃』
『はい。部長の言う通りです。いまの私たちの実力では、一対一でも勝てるかどうか……』
『本当ですか、部長。はぐれ悪魔討伐でご一緒することは多いですが、そこまで実力の差があるとは初めて聞きましたよ。俄かには信じられない』
『私も木場先輩に賛成です。確かに、強いとは思いますが』
グレモリー眷属の懸念はもっともだ。
これから共闘する相手の実力が不明、では話にならない。
とはいえ、理屈で分かっていても、感情を抑えられるかは別の話。だから――
『ほう。我々の実力が信じられないというのか』
『だったら、戦って白黒つけようぜ。あたしのアイゼンの染みにしてやるよ』
『防御に関しては誰にも負けない自信がある』
『あら。シグナムとヴィータちゃんは、かなり頭にきているわね。ザフィーラも珍しく乗り気みたいだし。わたしたちとしても、味方の実力は知っておきたいわ。だから――』
――――模擬戦なんてどうかしら?
そして今に至る。
険しい山道を越えて、豪華な別荘に到着。
風景を楽しむ暇もなく、休息のあと、あわただしく外に向かう。
開けた場所につき、リアス・グレモリーと模擬選について詳細を話し合った。
まずは、グレモリー眷属対八神家という、ある意味当然の振り分けになった。
・グレモリー眷属
前衛 木場祐斗(騎士)
前衛 塔城子猫(戦車)
前衛 兵藤一誠(兵士)
後衛 アーシア・アルジェント(僧侶)
後衛 姫島朱乃(女王)
後衛 リアス・グレモリー(王)
・八神一家
前衛 シグナム(烈火の将)
前衛 ヴィータ(鉄槌の騎士)
前衛 ザフィーラ(盾の守護獣)
後衛 シャマル(風の癒し手、湖の騎士)
後衛 リインフォース(管制人格)
後衛 八神はやて(夜天の王)
結果は、グレモリー陣営の完敗。文字通り「全滅」した。
こちらの実力をある程度知る筈のリアス・グレモリーでさえ唖然としていたのだ。
残りの連中の衝撃は計り知れないことだろう。
「まずは、木場祐斗。素早い剣筋は褒めてやろう。だが、真っ直ぐすぎる」
悔しそうに唇を噛む木場祐斗。
虚実織り交ぜた攻撃は、ある程度の実力者と相対するならば必須と言える。
しかしながら、木場祐斗は剣の師といる人物がいなかったようだ。
基本的な型は出来ているが、応用に至っては、我流になっている。
とはいえ、粗削りながらも、我流の技は、実戦でも通用するくらいには完成されていた。
たゆまぬ修錬と才能の賜物だろう―――――とはシグナムの弁である。
「子猫とかいったっけ。あたしと背格好は同じくらいなのに、攻撃も防御も中途半端でいけない」
顔伏せて落ち込む塔城子猫。背のことを気にしているのだろう。分かるぞ、その気持ち。
一撃の重さを捨て、手数で勝負する近接格闘戦法。
たしかに、小柄にも関わらずパワーはある。
しかし、小柄な身体が裏目にでて、一撃が「軽い」のだ。
衝撃が弱く、相手の動きを止める、あるいは吹き飛ばすことが出来ない。
巨大なハンマー――グラーフ・アイゼン――を振り回すヴィータとは、好対照である。
パワーよりテクニックで戦うスタイルは、木場祐斗に似ている。
ただし、拳で戦う以上、リーチの短さは問題だ。
塔城子猫の身長を考えれば、致命的だろう。
リーチとパワー不足を指摘された彼女は暗い顔をしていた。
が、ヴィータは気にせず続ける。
「おまえのスピードとテクニックは誇っていいレベルだ。ここは長所を活かすべきだな。
一撃離脱に徹すれば、相手のかく乱から足止めまで、戦術の要になり得る」
落として上げる。
ヴィータは、見た目によらず、細かな気配りがうまい。
現に、塔城子猫は、暗さをなくし、真剣な目をして聞きいっている。
防御については、堅さは充分でも、やはり軽さがネックとなる。
ゆえに、正面から受け止めるのではなく、受け流すことを目指すように言い渡した。
受け流しについては、防御に関しては随一のザフィーラが担当することになった。
◇
その後も、反省会は続けられ、皆で、ああでもない、こうでもない。と、話し合った。
議論の末に、グレモリー眷属がそれぞれ戦闘スタイルにあった八神一家の一員と訓練することになる。
組合せは、すんなりと決まった。
木場祐斗は、シグナムから剣術を。
塔城子猫は、ヴィータとザフィーラから近接格闘術を。
アーシア・アルジェントは、シャマルから補助および回復術を。
姫島朱乃とリアス・グレモリーは、リインフォースから、後方支援術と戦術指揮を。
原作主人公であり、赤龍帝として禁手化をはたした兵藤一誠は――
「なんで、俺は八神さんといっしょに訓練するんだ?」
――ボクとマンツーマンで特訓することになった。
これには異論が出たが、「向いているから」の一言で封殺した。
ヴィータあたりでもよさそうだが、彼女は無手での戦いには不慣れである。
一方で、ザフィーラは拳で戦うが、防御主体なため、特攻には向かない。
必然的に、ボクが担当することになるわけだ。
「さっき説明しただろう。ボクの戦闘スタイルが一番キミに合っているからだよ」
赤龍帝であり、禁手化を果たした彼の戦術的価値は計り知れない。
とりわけ、力技での突破力は、他に追随を許すまい。
『赤龍帝の籠手』は、それだけ強力なのだ。だから――
「赤龍帝であるキミは強い。訓練を積み、経験を重ねれば、グレモリー眷属のエースになるだろう」
「ああ。ドライグもそう言っていた。『相棒と俺の力は、まだまだこんなもんじゃない』ってな」
「その通りさ。伸び代がたっぷりと残っている兵藤くんは、この合宿の目玉といっていい」
「じゃあ、なんで八神さんが訓練相手なんだ?」
「いっただろう?ボクの戦闘スタイルと一番相性がいいって、ねッ!」
ブンッ、ズガガアアアアアアアァッ
「うおお!?」
――手近な岩を殴り、粉砕して見せる。
予想通り兵藤一誠は、目を見開いて驚愕の表情を浮かべたあと――
「――なるほどな。たしかに俺にはうってつけ、か」
「わかってくれて、なによりだ」
――理解の色を示した。
そう。八神家の中で、単純に一番力が強いのは、ボクなのだ。
理由はもちろんある。身体強化魔法だ。
正常化した防衛プログラムの保護下にあるボクは、自動修復機能の恩恵をうけられる。
通常、身体強化魔法は強度を高めるほど、身体に負荷がかかる。
しかし、プログラム体であり、その身体を自動修復されるボクは、身体強化魔法との相性が非常にいい。
無尽蔵にある魔力を使えば、理論上は無限に身体強化が可能だ。
もっとも、比例して制御も難しくなるために、限界はある。
騎士甲冑にも、自己修復、自動治癒機能を付けているため、突撃には一番適している。
王・指揮官・護衛対象といった者が、前線に突っ込んでは駄目なので、実践したことはないが。
ともあれ、倍加によって無限に力を底上げする『赤龍帝の籠手』には見劣りするものの、今の兵藤一誠ならば充分に相手ができる。
ボクは、基本的には、攻勢後方支援型だが、シュベルトクロイツを使った槍術、あるいは無手での近接格闘戦も可能だ。要するに、万能タイプなのである。
物分かりがよい彼に、ニヤリと笑いかける。
――――さあ、これからが特訓(という名の地獄)のはじまりだ……!!
ページ上へ戻る