【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
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第2章 見習い悪魔と不死鳥のハーレム団
第10話 開幕のゴングは不死鳥のハーレム団とともに
今、ボクの目の前では、キザったらしいホスト風の男――ライザー・フェニックス――と兵藤一誠が言い争っている。
ライザー・フェニックスは、その名の通り、七十二柱の一柱、フェニックス家の者だ。
フェニックスは不死鳥とも言われるように、輪廻と再生の象徴である。
彼の本質は純魔力でてきた炎であり、殺しても死ぬことはない――通常の手段では。
(しかし、ハーレムか。こうして、目の当たりにしてみると微妙な気持ちになるな。
やはり、ボクも女ということだろうか)
総勢15人もいる彼の眷属悪魔――全て見目麗しい女性だ――を眺め、嘆息する。
心身のギャップというやつだろうか。
思考は男性寄りだが、身体は女性のもの。
だか、ややこしいが「魂」が男というわけではないのだ。
以前、シャマルに相談したことがある。
彼女は真剣にボクの話をきき、いくつかの質問と診察のあと、こう述べた。
『はやてちゃんの心身は間違いなく女性のものよ。言動が男勝りという程度ね』
彼女によると、リンカーコアは、魂とのつながりがある「らしい」。
「らしい」というのは、既に実験データが失われてしまっているからだ。
時空管理局ではリンカーコアは未知の臓器だったが、古代ベルカではある程度研究が進んでいたようだ。
その古代ベルカの研究で得たひとつの仮説が、「リンカーコアと魂のつながり」だ。
魔力光が個人ごとに異なることは、有名な話だ。
これは、魔力の波長が一人一人異なることが原因である。
したがって、魔力をうみだすリンカーコアもひとりひとり細部が異なる。
ここに着目したある研究者は、魂の人工的生成に成功した。
知能の低い動物でしか成功しなかったが、人造魂をもちいた画期的な生体兵器――守護獣(ミッドチルダでは使い魔)が誕生したきっかけでもある。
その研究者は、人間の魂を創ろうと野心を燃やし、数々の違法な人体実験の末に――――やりすぎて潰された。
その成果の一つとして、リンカーコアを調べることで、魂の性別を判別できるそうだ。
臨場感たっぷりに人体実験の様子を説明されたのには、辟易したが。
なぜ詳しいのか尋ねると――
『だって、その研究者は、過去のわたしたちの主ですもの』
――と、にっこりと答えられて絶句してしまったのを覚えている。
埒もあかないことを考えながら暇を潰していると、ようやく言い合いは終わったようだ。
ライザー・フェニックスは、婚約者のリアス・グレモリーと結婚を――ハーレムを維持したまま――強要しようとしている。
相思相愛ならまだしも、嫌がる彼女に強引に迫る彼に、兵藤一誠が啖呵を切ったのだ。
その結果、言い合いとなり、レーティングゲームで決着をつけることになってしまった。
(ライザー・フェニックスの口車にのってしまったな。それは悪手だよ、兵藤くん)
レーティングゲーム――それは、悪魔で流行るチーム単位の決闘であり、娯楽である。
チェスに模した駒――悪魔の駒(イビル・ピース)といい、転生悪魔を生みだすための特殊な道具でもある――に見立てた眷属悪魔とともに、対戦するスポーツの一種だ。
ゲームと言いながらも、実際は、結界内で行う殺し合いにすぎない。
では、なぜ「ゲーム」というのか。
その理由は、結界内で致死性のダメージを受けると、無傷で結界の外に出されるためである。
「リリカルなのは」に登場する非殺傷設定のようなものだろう。こちらの悪魔たちは、特殊な結界が必要なようだが。
なぜ、ライザー・フェニックスは、レーティングゲームを提案したか。
それは彼が不死性をもつからである、
不死性をもつライザー・フェニックスは、レーティングゲームで圧倒的な優位をもっている。なぜならば、彼がリタイアを宣言しない限り負けはないからである。
増してや、眷属悪魔はグレモリー眷属の2倍以上おり、グレモリー眷属は、レーティングゲーム初体験になる。
これで負ける方がおかしい――と彼が考えるのも無理はなかろう。
ここまでは、原作通りだった。
しかし、ここで予想外の事態が起こる。
「ところで、さっきから素知らぬ顔をしている彼女は、リアスの眷属なのかい?――悪魔とは違う気配を感じるのだが」
なぜか、隅で傍観しているボクに話題を振ってきた。
どう返答しようか迷っていると――
「彼女は、グレモリー家の客人よ。私の眷属ではないわ」
「ほう。まだ、眷属悪魔になっていないのか。なら話は早い。
――こんにちは、見目麗しいお嬢さん。君は非常に運がいい。俺の眷属悪魔にならないか?」
――などと、のたまった。
何をいっているのか意味が分からず、硬直してしまう。
その間も彼は話を続けた。
「突然の申し出に戸惑っているようだな。
会って間もないのに、声をかけてやった幸運に感謝すると良い。
俺という最高の男に仕え、なおかつ最上の贅沢を味わえるのだ。これほどの好条件はないだろう?」
ようやく硬直が解けたボクは、徐々にその言葉の意味を理解し――
「何をふざけたことを抜かしてやがる……調子に乗るなよ、焼き鳥風情がッ!!!
シュベルトクロイツ、セットアップ!!」
『Jawohl.』
――――キレた。
すぐさまシュベルトクロイツを起動し、騎士甲冑を身にまとう。
思わぬ出来ごとに驚いた彼は、激昂しかけるも、すぐに冷静さを取り戻したようだ。
「っく、焼き鳥だとッ!?下手にでてやれば、人間風情がふざけやがってッ!!!
俺を――誇り高きフェニックス家の長男を貶めたのだ。
地に這いつくばって詫びろ。今なら許してやるぞ?」
「地に這いつくばるのは、お前の方だ、焼き鳥。いまここで灰にしてやろうか?」
互いに臨戦態勢をとる。
あとほんの少しで戦いがはじまろうとした――その時だった。
「――お二方とも、落ち着きなさい」
誰かが小声で制止する。その声は、地の底から響くような威圧がともなっていた。
慌てて目を向けると、そこにはメイド――魔王サーゼクスの眷属にして女王グレイフィア――がいた。
最上級悪魔並の実力を持つ彼女の威圧によって、怒気が収まっていく。
「八神様。貴女のことは、サーゼクス様より伺っています――貴女の神器のことも。
先に発言したのはライザー様とはいえ、先ほどの発言は、貴女の言いすぎです」
物理的な圧力を伴っていそうな眼差しで射抜かれる。
ようやく、冷静になってみると馬鹿なことをした、と後悔が湧きあがってくる。
「ライザー様も侮辱され激昂なさるお気持ちはわかります。
ですが、この場での決闘は許容できません」
「いや、しかし。フェニックス家を侮辱されたままにすることは――」
グレイフィアに抑えるように、言われる。
が、ライザー・フェニックスは納得しているようにみえない。
なおも言葉を続けようとする彼に対し、
「――そこで、レーティングゲームでの決着を提案します。
彼女は悪魔ではありませんが、強力な神器の保有者です。
ライザー様が戦う予定のお嬢様のチームに入ってもらうのがよろしいかと」
「ほう。神器持ちだったのか。たしかに、普通の人間とは毛色が違うようだ。
だが、リアスにばかり利がありすぎないか?」
「なら、ボクを景品にするといい。お前が勝ったら、下僕にするなりなんなり好きにしろ」
「ほう?」
一見、ボクは勢い余って勝ち目のない戦いに身を投じているようにみえる。
その証拠に、ライザー・フェニックスは、下卑た笑いを浮かべていた。
ボクの予想外な発言に、リアス・グレモリーが声を上げようとして――
「いいだろう。お前から言ったのだ。いまさら取り消すなよ?」
「怖気づくことなどないさ。おのれの分というものを弁えさせてやろう」
「では、双方同意したとみなします。決着はレーティングゲームでお付けください」
グレイフィアがさっさとまとめにはいる。
おそらくだが、彼女は、ボクの企みに気づいている。
いや、ボクの思考を予期して、あの提案を行ったのだろう。
「これは確認なのだが。ボクの神器は、『完全な状態』で使ってもいいのかね?」
「はい。神器の使用は禁止されておりません」
「それだけ分かれば充分だ」
一番の懸念だった事項が解決し安堵する。
やはり、彼女は、ボクに期待しているようだ。
つまり、『リアス・グレモリーを勝たせほしい』という彼女なりのメッセージだろう。
そのあとも、何度かやりとりがあって――リアス・グレモリーは、ボクの参加に猛反発した――ライザー・フェニックスは帰って行った。
レーティングゲームは10日後、そこで運命が決まる。
ライザー・フェニックスは強敵だが、既に勝つ算段はついている。
言い合いをした当初は、感情に身を任せて我を失っていた。
だが、途中からは落ち着きを取り戻し、逆にボクの身柄を餌にヤツを嵌めてやった。
一見、中立にみえたグレイフィアも、心情的にはこちら側のようだ。
ならば、ボクとしても、遠慮はいるまい。
10日後に、ヤツはさぞおのれの選択を後悔するだろう。
だがら、今まさに解決すべき問題は――
(リインフォースやシグナムたちにどう説明しよう)
――家族への対応だった。
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