おっちょこちょいのかよちゃん
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49 東京で暴れる者
前書き
《前回》
かよ子の家にりえとその母が訪れ、今後に向けて離れていても共闘する事を誓い合う。杉山はプール帰りの後、教会向かい、異世界の杯の能力を試す為にりえを挑発して、闘いを行う。だが、二人の闘いをかよ子が止めに入った!!
三河口は上野駅に到着した。その時、彼を呼ぶ声が聞こえた。
「三河口健」
「え?」
三河口は振り向く。その時、一人の男性がいた。
「私だ。平和を司る異世界のイマヌエルだよ」
「イマヌエル・・・」
三河口はイマヌエルの事は知っていた。彼は三河口の友人の濃藤徳嵩の妹とその友達に異世界の敵と対抗する為の武器を授けた張本人だからである。
「何か用なのか?」
「ああ、今この東京で異世界の敵が動いている。止める協力をしてもらいたい」
「何、その場所は分かるか?」
「ああ、工業地帯の所だ」
「つまり、京浜工業地帯のところか。だが、俺一人で止められるか」
「心配はいらない。君には一人でも強力な能力を宿している」
「分かった」
「私は存在を知られると不都合なので共には行けないがその場所を示す。その場所へ行ってくれ」
三河口はイマヌエルによって示された工業地帯へと向かった。しかし、三河口は自身の能力を改めて見つめ直す。
(俺の恐ろしい能力が本当に発揮できるのか・・・?)
かよ子は杉山がりえに会いに行くと聞いて不安になった。
(やっぱり、杉山君、りえちゃんに会いに行って喧嘩するんじゃ、それとも、りえちゃんの事が好きに・・・!!)
かよ子は思い切った。
「お母さん、ちょっと教会に行ってりえちゃんに会いに行ってくる!すぐ帰ってくるよ!」
「え?」
かよ子は教会の方へ走る。その様を途中、かよ子の父が娘が走っているのが見えた。
「只今。さっきかよ子が走っていたのが見えたけど何だったんだろ?」
「ああ、教会の方へ行くって」
「教会へ?何故に?」
「実はね、私が持っていた杖と同じ能力を持つ物を持ってる人が東京から遊びに来ててね、今朝会ってたのよ」
「そう言う事だったのか」
東京の工業地帯付近の住宅にてアドルフと日高は歩き回っていた。
「くそ、音も光も何の反応がねえ・・・」
「ヒダカ、本当にここに『敵』がいるのか?」
「ああ、『杯』の所有者がいるはずなんだ」
日高は中退とはいえ物理学卒であり、物理的な能力を使用して異世界の杯の所有者の住処を探していた。その時だった。
「ったく、日本赤軍とその召喚された異世界の奴が彷徨いてるって聞いたから寄り道したが、お前らか」
二人は振り返った。そこには高校生ほどの男子がいた。
「何だ、お前は?」
「通りすがりの高校生だが」
その高校生は言葉を続ける。
「おたくらが近くにいるほどどうも激しい胸騒ぎを覚えるんだが、日本赤軍と異世界の人間だろ?」
日高はこの高校生が普通の人間でないと気付いた。
「だとしたら何だ?」
「お前らを退治する」
日高は感じた。この男子は只者ではないと。
「アドルフ!殺れ!」
「おう!」
アドルフは生物を瞬殺する能力がある。その能力を行使した。しかし、その能力はなぜかその男子には効かなかった。
「な、何だ、こいつは!?」
「俺にそんな手が使えると思うのか」
アドルフと日高は急に金縛りをかけられたかのように動かなくなった。認めたくないのだが、その男子に屈してしまったかのようだった。
「俺を怒らすとどうなるか教えてやる」
その時、住民達が次々と家から現れた。
「何だい、アンタら!」
「この不審者め!」
住民達がこの男子に洗脳されたかのように二人に襲いかかる。日高とアドルフは住民達に袋叩きにされてしまった。
「出ていけ、そして帰れ、ゴミクズども」
その男子は念力をかけるかのように二人を遠くへ吹き飛ばした。手も出さずに。住民達は帰って行った。
「俺の能力は危険すぎるんだよ。だから小学生の頃、嫌われ者だったんだよ。くそったれが・・・」
その男子もその街を出ていった。
「杉山君、りえちゃん!!」
かよ子は教会の外の庭で対峙していた杉山とりえを見つけた。杉山は雷の石を使用していた。一方のりえの付近には黄金色の体をしたの人間型の生物のような物体いた。おそらくりえが杯の能力で作り出した精霊だとかよ子は察した。杉山は雷の石の能力を行使している所からかよ子は杖の使用法を示した本の一節を思い出した。
【電気を使用する品および雷を発する雲に向けると雷を操る能力を得られる】
かよ子は杉山が放った電撃に杖を向け、雷を操る能力を得て、その放電で杉山の電気を打ち消した。
「かよちゃんっ!?」
「や、山田あ!?なんでお前があ!?」
「そ、それは、ふ、二人共、け、喧嘩しそうだったから、し、心配で、き、来たんだよ!!」
かよ子はあたふたしながら言った。
「ああ、ごめんね、私もカッとなっちゃったわ」
「それで、お前も来たのか。ワリいな、迷惑かけてよ。こいつの杯の能力を試そうとしてついやっちまったよ」
「じゃ、じゃあ、やっぱり、あれはりえちゃんが出した『精霊』!?」
「そうよっ、あれは「雷の精」よっ。あれで雷の技が使えるのっ」
「そうなんだ、私のこの杖もね、今の杉山君の電撃に向けて雷を操る能力を持つ事ができたんだよ」
「それで、今電撃同士で迎え撃って打ち消したのね」
「うん、お願いだから、そんなんで喧嘩は、止めて・・・!!それに、『敵』は他にいるはずだよ・・・!!」
「ああ、そうだったな、俺達の敵は日本赤軍やそいつらに協力してる異世界の奴らだよな」
「そうだ、プールに誘うのはやめるから、明日は代わりに花火やろうよ!」
「うんっ、いいわねっ!」
「ああ、そうだな」
三人は約束した。
「りえ」
杉山は東京の少女を呼ぶ。
「邪魔して、悪かったな。ピアノの練習、頑張れよ」
「う、うん、ありがとう」
三人は帰った。
三河口は一用事を済ますと東京駅に戻っていた。その時、イマヌエルが現れた。
「お疲れ様だ、三河口健」
「イマヌエルか、あいつらは対峙したよ」
「ああ」
「ところで、聞きたい事がある。俺の従姉が持っている護符や、山田かよ子ちゃんの持っている杖は君達の世界ではどんな存在なんだ?」
「それは、最上級の強さを持っている。これが戦争を司る者や悪事を企む者に渡ると全ての世界のバランスが崩れてしまうのだよ」
「それで従姉に何か呼びかけていないか?」
「ああ、あり君の事か。君の三姉妹の従姉も君や山田かよ子君などと同じように特別な能力を宿している。きっとこの『戦い』に大きく貢献してくれるからな」
三河口はこれ以上は追求しなかった。「戦い」の意味は彼にはすぐに理解できた為である。
「君にはその特別な能力が全て揃っている。稀有な人材だ。君もきっと世界を救うための大いな鍵になれるよ。では」
イマヌエルは消えた。
(稀有な人材、ね・・・)
三河口は己の能力は恐ろしき物かと思っていたが、考え直す事にした。そしてそして新大阪行きの新幹線に乗車した。
かよ子は家に帰ると丁度三河口と会った。
「あ、隣のお兄ちゃん!」
「かよちゃん、只今」
「北海道から帰ってきたんだね!」
「うん、そうだよ。かよちゃんにお土産あげよう」
三河口はかよ子に一つの箱を渡した。
「『白い恋人』って言ってホワイトチョコレートをクッキーでサンドしたお菓子だよ」
「あ、ありがとう!」
三河口は話を続ける。
「ところで、帰りに東京の方でイマヌエルに会ってきたよ」
「イマヌエ、ル・・・!?」
かよ子は勿論その名を忘れてはいなかった。隣町の小学校に異世界の敵などと戦う為の道具を渡した人間だからである。
「ど、どうして・・・!?」
「東京に彷徨いてる赤軍や異世界の敵を追い払って欲しいって頼まれてね。それで一泡吹かせたよ」
「東京・・・、そうだ、もしかして・・・!!」
「ん?」
「今東京の子が清水に遊びに来てるんだ。その子は異世界の『杯』を持ってて、私の杖みたいにかなり大事なアイテムみたいなんだ。今日はその子と助け合う事を約束したんだよ」
「そうか、じゃあ、奴らが探していたのはその東京の子かもしれないね。名前は何ていうんだい?」
「安藤りえだよ」
「オーケー、俺も会っておきたいな」
「うん、いいよ」
その時、話し声が聞こえたのか、かよ子の母が現れた。
「あら、かよ子、帰ってたの?入りなさい。あら、健ちゃん。札幌から帰ってきたの?」
「はい、たった今帰りました。では、失礼します。じゃあね、かよちゃん」
「うん、バイバ〜イ」
かよ子も三河口もお互い家に入った。
後書き
次回は・・・
「清水の夜の花火」
かよ子は三河口を連れて彼をりえと引き合わせ、彼も杯の存在を改めて確認する。そして三河口は自身の持つ能力をりえに暴露する。そしてその夜、かよ子達は皆で花火をする事になる・・・。
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