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おっちょこちょいのかよちゃん

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48 杯の能力

 
前書き
《前回》
 長山は御穂神社にて御穂津姫と接触し、異世界の最上位の能力(ちから)を持つアイテムの事を知るが、そのうちの一つである剣が日本赤軍に奪われたと知る。一方、かよ子達はりえをプールに誘うが、りえは自分がカナヅチである事を理由に頑なに拒否する。だが、杉山は本当の理由を見抜いていた。そして従姉のありが住む札幌に滞在中の三河口は大きな戦争の予感を覚える・・・。 

 
 かよ子は翌日は午後に皆でプールに行く予定でいた。午前は夏休みの宿題に勤しんでいた。そんな時、インターホンの音がした。かよ子の母が応対すると、かよ子の部屋に向かった。
「かよ子、お客さんよ」
「え?う、うん」
 かよ子は居間へと降りてきた。そこにいたのは一人の女性と、もう一人はりえだった。大人の女性の方はおそらくりえの母親だろう。
「り、りえちゃん!?」
「あら、ウチのりえともうお友達になったのね」
「はい、昨日から一緒に遊んで貰ってます」
「ありがとう。ウチの主人がこの清水の生まれでね、遊びに来ているんですよ。東京は工場が多くて人も多いし、この子喘息になっちゃったのよ。それでこの清水は海の風もあって空気が綺麗だからこの子にもいいと思ってきたの」
「そうなんですか。そういえば確かそちらも異世界から貰った杯がありますよね」
(はっ・・・!)
 かよ子はもしかしたらりえとその母はその話をする為に来たのではないかと推測した。
「はい、うちの子に持たせています」
「私の所も杖を持っておりまして娘に持たせています。うちの子もおっちょこちょいな所がありますがそれでも学校の友達の協力もあって異世界の敵に勝ってきました」
「そうなんですか、東京(こっち)にも出てきました。りえはこの杯を利用して精霊を作り出して戦って勝利してきました。その他にも空気を利用して風の精を呼び出し、周りの空気を綺麗にして喘息の悪化を防ぎました」
「それから4月に起きた地震のような振動の影響で異世界の敵が来て、さらには日本赤軍までもが攻めてきました。お互い日本赤軍から守るためにも平和を必要とする世界から貰った道具を持つ者同士これから連絡を取り合うという事ですね。私もこの清水の神社の神からそうするように聞きました」
「そうですね、これから何か動きがあったらそうしましょう。りえ、どうかしら?」
「かよ子も、どう思う?」
「えっ!?」
 かよ子とりえはお互いに目が合った。
「そ、そうだね、何かあったら心強く思えるね、私、おっちょこちょいだし・・・」
「かよちゃんと一緒なら私も心配ないわ」
「りえちゃん・・・」
「OKよ。これで何かあっても大丈夫ね」
 お互いの母子は同盟を結んだ。りえとその母は帰ろうとする。
「りえちゃん」
「え?」
「今日も練習、頑張ってね」
「うん、ありがとう」
「あ、あの・・・、それから・・・」
「何?」
「やっぱり、喘息のせいでプールに入れないんじゃないの?」
 りえは見抜かれたと思った。
「・・・うん、実はそうなんだ。前に学校のプールの授業で呼吸困難になった事があってね、それでプールに入れないんだ」
「そうだったんだ・・・」
「ごめんね、本当は皆と遊びたかったけど、また別の遊びしよう。じゃあねっ!」
「うん・・・!」
 りえは山田家を出た。

 三河口は札幌駅でありとその夫に見送られていた。
「それじゃ、お父さんとお母さんに宜しくねー」
「はい、お世話になりました」
 三河口は列車に乗りこんだ。
(また長旅か・・・)

 かよ子は午後はまる子達とプールで泳いで楽しんだ。帰る途中、皆はりえについての話をする。
「りえちゃんも来ればよかったのに〜」
 藤木は残念がっていた。
「今日もピアノの練習してるのかね~?それにしてもりえちゃんがカナヅチだってのは以外だねえ~」
「うん」
「そういえばあいつ、全然日に焼けてなかったよな」
 大野と杉山は真相を知っていた。杉山は考えた。
(喘息の影響、か・・・)
「でも、泳げなくてもプールに入っているだけで楽しいのに」
「明日もう一回誘ってみようか」
 たまえは提案した。
「そうだね」
「やめとけよ」
 杉山は止めた。
「え?」
「あいつがプールに入りたがらないのはそれなりの理由があるんだ。何回さそってもまた断られるだけだぜ」
「す、杉山君・・・」
 かよ子は杉山がいきなり言った事に驚いた。
「プール以外であいつと遊んだほうがいいぜ」
「そんなあ・・・」
「で、でも、私も杉山君の言う通りだと思うよ。しつこく言っても逆に嫌がられるだけだと思うし・・・」
「そうだな」
 大野は賛成した。
「ちぇ」
「僕が命を懸けてりえちゃんを守ってやるって思ったのに・・・」
 皆と別れた後、かよ子は好きな男子から呼ばれた。
「山田」
「え?」
「俺、夕方、教会に行ってみるよ」
「え?」
「りえの事をよく知りたいしさ。じゃあな」
 杉山は喧嘩したりえにその能力(ちから)を試してみたかった。かよ子はなぜか嫉妬心が込みあがった。
(す、杉山君、もしかして、りえちゃんが・・・!!)

 夕方、杉山は教会へ向かった。ピアノを弾く音が聞こえる。りえはまだ練習していると杉山は察した。杉山はかよ子からりえは「異世界の杯」を持っていると聞いた。以前、森の石松から「力の石」の一つである「雷の石」を貰った時は、これで山口や川村達から乗っ取られた秘密基地を取り返す為の闘い使用しようと考えた。だが、かよ子や冬田、そしてフローレンスの介入でその行為が間違っていると気づいた。あの時と同様、りえの杯の能力(ちから)を試す為だけにその石を使用するのは石松やフローレンスの意に反していることになり、彼女にも悪いと思うし、自身も外道な事をしているとは感じている。だが、それでもかよ子の言っている事は間違っていない事を確かめたかった。
 教会に着いた。ピアノの音がする。あの「亜麻色の髪の乙女」だった。礼拝堂に入る前、途中で音が止まった。杉山は何があったのかと中を覗こうとした。その瞬間、ドアが開いた。
「また幽霊だと思った?」
「お前、しつこいぞ・・・」
「えへへっ。ところで私に何か用?」
「お前、昨日缶蹴りしていた時に咳こんでたし、プールを嫌がってたし、本当は体が悪いんだろ?」
「私がっ!?やだっ、急に変な事言わないでよっ!」
 りえはバカらしいと思い、笑った。
「真面目に答えろよ。お前の事は全て山田かよ子から聞いてんだよ。お前が喘息だって事も、東京は空気が汚れてるからここのきれいな空気を吸う為に清水(ここ)に来ている事も」
「う・・・」
 りえの表情が複雑になった。
「お前、異世界の『杯』を持ってんだよな?」
「う、うん」
「それ、照明させてくれ。あの山田の杖と同じように」
「え?」
「俺、この石を持ってんだ。これも異世界の『石』で『雷の石』ってんだ。これで電気を操り、雷を作ったり、放電する事ができる。だから、その杯で俺と勝負しろ」
「そ、そんな・・・」
 杉山は挑発を図る。
「お前、か弱いってガラじゃねえだろ?」
「わ、分かったわよっ、外に出なさいよっ!」
 りえはピアノの傍に置いてある杯を取って戻ってきた。
「これがその『杯』よっ!見せてあげるわっ!」
 りえは杉山に見せると共に外に出た。
「さあ、来なさいよっ」
「自分からは来ないのか。なら!」
 杉山は石の能力(ちから)を行使した。石から雷が放電される。なんとりえはその雷に杯を向けた。杯が雷を吸収する。そして、その中から何らかの生物が飛び出した。全身が黄金色の人間のような姿だった。
「これは『雷の精霊』よっ。その能力(ちから)はこんなもの」
 雷の精霊は手から電撃を放った。近くの木の枝が折られた。
「今は枝で済ませたけど、木の幹を折る力もあるわよ。それでも闘う?」
「う・・・。分かったよ」
「へえ、やめるの?やっぱりあんたって臆病者なのね」
 杉山は挑発で返された。
「何だと!?」
 杉山は雷の石を使用を続けた。りえに電気ショックを浴びせるかと考えた。だが、別の方向から放電が起き、雷が消滅した。
「な、何だあ!?」
「す、杉山君、りえちゃん!!」
 そこには「杖」の所有者である山田かよ子が来ていた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「東京で暴れる者」
 ありと別れ、東京駅に到着した三河口が「ある人物」と出会い、ある用件を頼まれる。一方、りえの杯の能力を試そうとし、彼女と喧嘩寸前だった杉山を止めようとしたかよ子は・・・。 
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