提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・EX6
~衣笠:ラング・ド・シャ~
「そういえばさ、あの時の青葉のリアクションどうだった?」
「あの時?」
「ほら、前に青葉が提督に無茶振りしようとしてるよってチクった事あったじゃん!」
「ん?あぁ、前にチケットでお仕置きした時か?結局全部食べきれなくて涙目でギブアップしたよ」
「マジで!?青葉お気の毒~っ!w」
ソファの上で胡座を掻き、衣笠がゲラゲラと笑っている。今回のチケット当選者は衣笠。というか以前に青葉の暴走を未然に報せて貰った事があったんで、今回のチケット当選は仕込みなんだが。
「いや、そもそもあのゲテモノメニュー頼んだのお前発信だって聞いたんだが?衣笠」
「だってさぁ、青葉に『司令が作れそうになくて、かついいネタになりそうなスイーツって無いかなぁ?』って聞かれて調べただけだよ?私」
「いやそれ結局お前が原因じゃね?」
あの店のメニューを提案しなければ、あんな惨劇は起きなかったワケだし。
「でもさぁ、結局私が密告したのに悪ノリして沢山作ったのは提督でしょ~?それを衣笠さんのせいにするのは筋違いだと思うなぁ」
「じゃあまぁ、お互い悪かったという事で手打ちにしとくか」
「だね♪」
にししし、と笑う衣笠。この竹を割った様な性格のお陰で、俺はこの悪戯好きの娘の前ではついつい本音を漏らしてしまう。それが青葉にリークされてしまう事もしょっちゅうだが、その辺の匙加減は弁えた物で本当にバラされたくない事は絶対に漏らさない。そういう変に口の堅い所も、喋っちまう原因なのかもしれんが。
「そう言えばさぁ提督」
「なんだ?」
「忙しくてもヤる事ヤってんの?」
「ぶっ!」
あんまりにもあんまりな聞き方の質問に思わずコーヒー噴いた。
「ちょっと~!折角衣笠さんが美味しく淹れたコーヒーを噴き出すとか勿体無いでしょ!?」
「誰のせいじゃ!誰の!」
「だってさぁ、好きな人の要望とかは聞いときたいじゃん?」
そう、衣笠は着任当初から俺LOVEを宣言しており毎年バレンタインと誕生日とクリスマスにはチョコやらプレゼントやらを欠かした事がない。その熱烈ぶりは金剛他嫁艦達も認める所であり、先日ついにケッコンを果たした時にはお祝いでパーティ(という名の飲み会)まで開かれていた。
「あのなぁ………」
「ねぇねぇ、やっぱり子供は欲しいの?何人位?」
「……はぁ。さてね、子供は授かり物っていうが俺の場合は嫁が嫁だからな」
艦娘というのは妊娠しにくい。何故なら子宮内部に艦娘としての能力の核とも言える艦霊を物質化させた通称『核玉』が存在するからだ。それは艦娘の老化を極限まで遅くする効果をはじめ、肌の硬質化や修復剤による細胞分裂の活性化等の艦娘として必要な能力をもたらす。その代価として妊娠する能力をほぼ喪ってしまう。それもそのはず、妊娠すれば戦線からの離脱は免れないのだから戦う事を優先すべき艦娘には不必要な能力のハズなのだ。だが、妖精さんに言わせると違うらしい。
『かんむすさんはせんとうかんであるまえにじょせいでありますから』
『いとしいだんせいのこどもをはらみたいとおもうのはせいぶつとしてとうぜんのことです』
『ですがそれはせんとうかんとしてのつとめをはたしてからでもおそくねーです』
……という事だそうだ。実際、戦いを重ねて錬度が上昇すると子宮内膜と核玉の癒合がすすみ、ケッコン出来る錬度に達するとほぼ身体の一部と言っても可笑しくない位には体内に取り込まれるらしい、という事が研究の結果判明している。つまりはケッコン出来るレベルまで達していれば、妖精さんからも十分に務めを果たしたとお許しが出るらしい。それでもケッコン出来るレベルまで達した艦娘というのは強大な戦力だから、戦線離脱はして欲しくないという心理的プレッシャーからか妊娠率は普通の女性に比べれば極端に低いんだがな。
「でもさぁ、明石さんがウチの妖精さんと妊娠しやすくなる薬作ってるって聞いたけど?」
「あぁ、艦娘達で作る権利団体……っつーか労働組合に近いのか?アレは。そこからも資金提供受けてな」
「何でまたそんな所からお金が出てんの?おかしくない?」
「俺みたいに艦娘とガチの結婚する提督も珍しくなくなってきてんのさ。そうなりゃ当然子供が欲しくなる奴が出てきてもおかしくないだろ?」
だが、そう願っても艦娘が妊娠する確率は自然に任せておいてはほぼ0だ。その為に排卵誘発剤等の薬が在るわけだが、いかんせん艦娘になった時点で人間用の薬は効果が薄い。その為に艦娘用の薬を開発する必要があるのだが、作るための技術も設備も中小規模の鎮守府には無きに等しい。大規模な鎮守府でもそんな事にかまけているだけの余裕がある所は少ないだろう。
「あ、そっか。だからウチなのか」
「そういうことだ」
対してウチは本土の連中に嫌味を言われる程度には戦力に余裕があるし、薬を開発するだけの設備も技術もある。ついでにいうならウチの淫乱ピンクなら喜んで研究するだろう……自分が使いたいだろうし。何より、確保が大変だろう『艦娘の治験協力者』が大量に確保できる可能性が高いのも、ウチで研究開発するメリットと言えるだろう。
「って、結局私の質問の答えになってなくない?」
「バッカお前、排卵誘発したって種付けなきゃ意味ねぇだろうが」
今度は衣笠がコーヒー噴いた。
「汚ねぇなぁ、噴き出すとか止めろよ」
「ちょ、提督がいきなり変なこと言うからでしょ!?」
「変なことって何だよ。そもそもはお前が始めたんだぞ?この下世話な会話」
それで勝手に狼狽えてコーヒー噴くとか止めてもらいたい。
「じゃ、じゃあそういう事……してるの?」
「してるぞ?強制はしないがな」
一応行為の前に確認を取ってからするようにはしている。
「それに最近は1vs1って事はほぼ無くなったかな、ほとんど相手が2人以上で来るようになったし」
「え、ナニの話だよね?」
「さっきからその話しかしてないが?」
「え、2人以上を一度に相手してるの?」
「未だに1人で掛かってくるのは金剛位じゃねぇか?そんでもアイツ途中で気絶するしなぁ」
「どんだけ激しいの!?」
「さぁね。第一、他の奴がナニしてる所なんて見た事ねぇし。記録映像(意味深)は別として」
体力は自信があるから相手が満足するまで何回戦でもお相手するけどな?最近はこっちが満足する前にギブアップされちゃうんだよな、困った事に。
「うわぁ……」
衣笠が引いた顔をしているが、お前だってして……アレ?
「そう言えば衣笠、お前まだシてないよな?」
「え、そ、そうだったっけ~……?」
衣笠が顔を赤くして目を逸らす。思い出してみると衣笠に指輪を手渡したのは大規模作戦の始まる直前。その時はお互いに作戦前だし控えようという話になってしなかった。その後も2ヶ月程経つが、何のかんのと理由を付けて避けられていた様な気がする……いや、気がするじゃない。完全に避けられていた。
「衣笠」
「な、な~に~……?って、ひゃん!」
衣笠をソファに押し倒す。赤くなって小刻みに震えている衣笠を見ると、いつも人をからかうように笑っていたあの衣笠と同一人物とは思えない。そのくらい可愛らしい。
「お前、照れ臭くなったんだろ?」
「っ!……そ、そうだよ!悪い!?」
そりゃそうか。あんだけ砕けた付き合い方をしておいて、今更男女の付き合いに関係が変化したって勝手が解らねぇよな。そんな不安で震える唇を、俺の唇で塞ぐ。
「ンむ、ちょ、ちょっと提督!?何してーー……」
「嫌なら、ハッキリ嫌って言えよ。そしたらこの先はもうしねぇから」
「……ずっこいなぁ。そんな聞き方されたら、嫌って言えないじゃん」
「知ってる」
こちとらその位解ってやってんだ。
「提督……衣笠さん初めてだから、その、優しく……してね?」
「それは保証できん」
「ちょ、ちょっと待ってええぇぇぇぇぇ!?」
衣笠の悲鳴は、夜の帳の落ちた鎮守府に響いていったーー……
後書き
はい、という事で令和1発目のリクエスト企画、これにて完遂となりました~!いや本当にね、ホワイトデー企画と銘打ちながらもう5月ですよ5月。2ヶ月遅れですよ!何で書くペース落ちてんのに人数倍にしたりしたんでしょうかね?馬鹿なんですかね?←
しかも最後の2話はお菓子ほとんど関係ねえじゃん!ていうね。自分で書いておいて自分でツッコミ入れてりゃ世話ねぇですよホント。まぁ、区切りになるか解りませんが500話も越えましたんで何かしらまた企画するかもです(懲りてない)。
通常の更新もなるべくお待たせせずに復活させたいと思いますので、読者の皆様お付き合いの程を。
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