魔転語(魔王転職物語)
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1話~勇者王~
「なにか怪しい気が二つ城下町の方から」
この男、名をアレクセイ・ペングラム。
人間の王であり、勇者である。
「一瞬、魔王の気かと思ったが、さすがにここは、我らがエリシオン簡単には入れまい」
アレクセイは窓から城下町を見下ろし
「魔王……マオ・テンペスト。しばらく、会っては居ないが悪い噂を聞く」
アレクセイは、長年の好敵手、魔王を思う。
悪い噂……魔王交代が行われたと
新たな魔王は、残虐で前魔王を殺害したと噂が流れている。
勇者であるが、魔王の心配をするアレクセイ。
敵同士ではあるが、長年の付き合いからか、果ては歳をとったからか情に似た感情が沸き上がる。
そんな、彼の元に
『報告!』
「何事だ」
アレクセイの元にある報告が入ってきた。
『城門前にて魔王と名乗る者がアレクセイ王に会わせろと』
「魔王だと?イタズラではないのか?」
『それが…どうやら本物のようでマオ・テンペストと』
報告を受けるとアレクセイはその老体からは考えられない早さで城門に向かうのだった。
第1話~勇者王~
ここは、城門前
「さて、城門までは来たがどうやってアレクセイに会うか」
俺は城門まで、来たはいいがどうやって勇者に会うか考える。
勇者とは、何度も戦争で顔を会わせ何度も戦ってきた。
しかし、今は魔王でもない只の人間になった俺が、魔王と名乗り勇者に会わせろと言っても門前払いであろう。
何か方法はないか。
ふと、俺は従者のスライム、シャルルを見る。
「シャルル…お前」
「どうしました?マオ様?」
いいことを思いついた。
「シャルル、確か変身魔法使えたよな」
「はい。それがどうしました?」
シャルルは、答える。
「ま、まさか!マオ様!?」
何かを察したシャルルはもともと青い顔がさらに青くなる。
「シャルル…魔王の時の俺に変身しろ」
「嫌です!討伐されてしまいます!」
シャルルが、言ってることは間違いではない。
魔王が人間の領土にくれば戦争勃発ものである。
しかし、只の人間が、勇者であり王様である勇者王に会うのは無理である。
ならば、リスクはあるが騒ぎを起こし勇者王を引きずり出すしかない。
だが、人間となってしまった、マオが名乗ったところで騒ぎは起こらず鼻で笑われて終わりである。
しかし、高度の変身魔法を使えるシャルルが魔王の時のマオに変身すれば勇者王を引きずりだせる。
「シャルル、今はお前しかいないんだ。アレクセイは頭が良いすぐには消そうとはしないはずだ」
「しかし、マオ様~」
「頼む、シャルル我らが再び魔族の王となるためだ」
「うーん、分かりましたよ。どうなっても知らないですからね」
シャルルは、ほぼ自暴自棄で変身魔法を使い、俺に変身をして城門に向かうのだった。
『ま、魔王だぁー!なぜ、魔王がエリシオンに!』
『すぐにアレクセイ王に報告だ!』
と兵士たちは大慌てで行動する。
作戦は成功だ。
城門は大騒ぎになったが、これでアレクセイに会えるだろう。
「マオ様、本当に大丈夫でしょうか?勇者王が来たら」
「なんとかなるだろ。ほら、そう言ってる間に」
俺は真っ直ぐ城門を見る。
「マオ・テンペスト、まさか本物とはな」
剣を構え、こちらに近づいてくるアレクセイ・ペングラム。
「シャルル、変身解いていいぞ」
「は、はい」
シャルルは、変身を解く。
「久しぶりだな…アレクセイ」
「マオ・テンペスト……場所を変えるぞ 」
アレクセイは、呪文を唱える。
「テレポート」
一瞬で俺、シャルル、アレクセイは、姿を消すのだった。
【エリシオン城内】
~アレクセイ自室~
「がーはっはっはっ!!」
デカイ声で笑うは勇者王こと、アレクセイ。
「そんなに笑わなくてもいいだろう」
「そうだぞ勇者王アレクセイ!こう見えてもマオ様は悲しまれておるのだぞ」
「がーはっはっはっ!これが笑えずにおられるか!我が好敵手、魔王マオ・テンペストが部下に下克上され、食事に薬を盛られ人間に、がーはっはっはっ!」
アレクセイは、俺を見ながら大爆笑をする。
普通ならば人間になってしまったが魔王だった者を大笑いしない。
好機と見てここで討ってもおかしくない。
しかし、アレクセイは俺を討とうとはしない
確かに領土を争い戦争をする仲だが、戦争と言ってもほとんど俺とアレクセイの一騎討ちみたいな感じな戦争だからだ。
「それはそうと、兵士達はいいのか?魔王が城に居ると大変なんじゃねぇか?」
「安心しろ。兵士達には、魔王は偽物で私が処理したと伝えてある」
「そうか」
「して、魔王よ、いや今は元魔王かの。私になんの用事だ?」
アレクセイは、雰囲気を変え俺を真っ直ぐ見る。
そう、俺がこの勇者王アレクセイに会いに来た理由がある。
「単刀直入に言う。俺の部下であった現魔王【サタン】を討伐するため力を貸してほしい」
俺の目的は俺を罠にかけ、人間の姿に変えた幹部の1人サタンの討伐。
俺はやられたらやり返すスタイルだ。
そのための手段はかつての敵に頼んでもやらなきゃいけないのだ。
「ほう、敵である私……人間に助けを求めるか」
「見損なったか?だが、サタンをほっとけば大規模な戦争が起こり人間にも被害が出るぞ?」
サタンは俺とは違い、卑怯な手を使い必ず人間を滅ぼすだろう。
そして、俺は真っ直ぐアレクセイを見て頭を下げ
「頼む、勇者王アレクセイ・ペングラム。力を失くしなにもできないこの俺に力を……貸してくれ!」
アレクセイに頭を下げるのだった。
「誇り高きマオ・テンペストが私に頭を下げるか……だが、私が力を貸すことはできない」
え?マジ?力は貸せないってなんでだよ?なに言ってるんだこの爺は!?
「は?なんでだよ?お前ならサタンなんか一捻りだろ?」
「力を貸したいのは山々だが………」
アレクセイは、少し沈黙を置き
「だって、私……もう、勇者じゃないもん」
アレクセイは気色の悪いウィンクをするのだった。
「はぁぁぁーー!?」
次回、第2話~勇者の後継~
後書き
次回第2話~勇者の後継~
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