ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第七話 真紅のロックマン
前書き
おぎのしんロックマンZXA漫画の後日談で出たモデルOのおかげですよね…正直モデルO単体だとモデルZみたいになる可能性があったわけだから公式でモデルO単体のロックマンの姿を出してくれたのはありがたい。
というか単体も合体変身もオメガそっくり。
この作品でモデルOXは出ませんが、オメガの狂暴性を抑えつつ出来るだけの力を出せるようにしたのがモデルOXの設定です。
そして作品内で明かされることは多分ありませんが、モデルOはモデルVの欠片にオメガのサイバーエルフが憑依して誕生したライブメタルと言う設定にしています。
何かこういうのが一番ヤバそうな設定になりそうなので。
ガーディアンベースに帰還したエールは直後にプレリーから休息を言い渡され、そしてヴァンはガーディアンベースの医務室行きとなった。
「どう?彼の様子は?」
プレリーがモデルXを伴って医務室に行くと、遠い記憶を刺激する真紅のアーマーと金髪が目に入り、一瞬目頭が熱くなったが司令官の顔でヴァンの容態を尋ねる。
ライブメタルの研究者でもあるフルーブと看護師であるミュゲとローズに尋ねる。
「ダメージは既に回復していますよ。ライブメタル達から話は聞いていましたが、完全に一体化しているだけあって回復力は高いようです。」
運ばれてきた時はボロボロだったと言うのに僅か一日で傷一つない状態に戻っている。
「体の傷よりも、肉体と精神的な疲労が原因かもしれません…恐らく、行方不明になられてから食事も満足に摂っていなかったのでしょう」
「ずっとアウターにいたからまともな物なんて食べられなかっただろうね。まだ育ち盛りの男なのにこんなに痩せてんだから」
ローズとミュゲがエールと同い年の少年の痩せ細った体を見て心配そうに呟く。
「そう…それでフルーブ、彼に取り憑いているライブメタルについて何か分かった?」
「いえ、現段階ではあまり大したことは分かりませんでしたが、ヴァンさんの脳波に異常が見られます。恐らくは取り憑いているライブメタルの影響でしょう」
「そう……ならモデルX、彼について何か分かりそう?」
ヴァンはモデルXの適合者でもあるらしいので、モデルXならヴァンの状態が分かるのではと思い、ヴァンに同調を試みているモデルXに尋ねる。
「………モデルOを突き動かしているのは狂気的なまでの好戦欲と破壊衝動…エリアEでヴァンが言っていたことと、戦っている時にはモデルOの狂気が働かないところを考えると、恐らくヴァンが戦っている時だけはモデルOの狂気から解放されるんだと思う。」
「あの…まさか、ヴァンさんが起きた時…私達に襲ったりは…」
ローズは恐る恐るモデルXに尋ねる。
今の戦闘員もエールもいない状態でヴァンが暴走したらひとたまりもない。
「その可能性はあるかもしれない。だからヴァンはエール達の元に帰らなかったんだ…行方不明になってからずっと」
「そう…」
モデルXの言葉に、悲しそうにヴァンを見つめるプレリー。
エールからヴァンの話を聞いたこともあり、彼女の幼なじみがこんな理不尽に遭っていることに同情は隠せない。
「う…」
身動ぎするヴァンに全員の体が強張るものの、ヴァンの目がゆっくりと開かれた。
その目はイレギュラー特有の狂気はなく、今は正常な状態であることが分かる。
「ここは…」
「ここはガーディアンベース。私達、ガーディアンの本拠地よ」
状況を理解出来ていないヴァンにプレリーが説明すると、ヴァンが視線をプレリー達に移して姿を認識した途端にヴァンの体が震え始める。
「う…ああ…っ!」
「!?」
「ライブメタルの反応が強くなりました!」
頭を押さえながら震えるヴァンにプレリーは驚き、フルーブが原因を報告する。
「あ、あんた達…早く…逃げ…」
一瞬、瞳の色が赤く染まり、ヴァンの手がセイバーの柄に触れようとした直後であった。
「いけない!」
モデルXが光を放ってヴァンに触れた。
するとヴァンの異変は治まり、息を荒く吐きながらベッドに再び倒れた。
「お、お前は…」
酷い倦怠感に襲われているヴァンが、モデルXを見つめる。
「大丈夫かい?今、僕がモデルOに干渉してモデルOの破壊衝動を抑えているんだ。エールが使っているダブルロックオンの要領だね」
これはヴァンがモデルXの適合者だからこそ出来たことだ。
「あ、ああ…少し楽になった…ありがとな」
今まで騒がしかったモデルOが静かになっていることに驚きながらもモデルXに礼を言うと、プレリー達に振り返る。
「あんた達もありがとな、治療とかしてくれたんだろ?後…怖がらせて悪かった…」
助けてくれたのにプレリー達に危害を加えそうになったことにヴァンは謝罪した。
「いいえ、私達は気にしてないわ。あなたのことはエールやジルウェさんから聞いているわ」
「エールと先輩から?エールはともかく先輩もいるのか?」
「ええ、エールは今、私達に協力してくれているの…そしてジルウェさんは…」
「それについては俺から話しますよ司令官。」
医務室に入ってきたのはエールとジルウェだった。
「エール…先輩…」
久しぶりに間近で見た後輩にジルウェは目頭が熱くなったが、最後に会った時よりも細くなった気がするヴァンの姿を見て、相当な無茶を行方不明の期間中にやっていたことを察することが出来た。
「エリアDでは助けてくれたそうだなヴァン…ありがとな…少し痩せたか?」
「先輩は…大丈夫なのか?」
「ああ、お前が助けてくれたおかげでな……さてと、お前にも話す時が来たな…俺はお前達を引き取る前からガーディアンのメンバーなんだ。ライブメタルで変身出来るのは俺達のようなライブメタルに認められた者だけで、その力を狙っている奴らから、お前とエールを守るのが俺の使命だったんだ。」
「そうだった…のか…」
「騙すつもりはなかった…いつかは話すつもりだったんだが…」
話す前にヴァンはイレギュラーに襲われて行方不明になってしまったので仕方ない部分はある。
「いいさ、それを知ったって先輩が俺の命の恩人なのは変わらないんだしさ。母さんがいなくなって泣いていた俺を励ましてくれたり…このペンダントも…先輩には本当に感謝してる」
「まだ持っていたのか」
それはまだ今より幼かったヴァンに渡した自分のペンダントであった。
「ああ、一人でイレギュラーと戦っていた時…辛くて挫けそうになった時もこのペンダントを見て、先輩の言葉を思い出してた…俺は一人じゃない…みんながいるんだって…」
ペンダントとジルウェの言葉を支えにして戦ってきたヴァン。
モデルOの狂気に恐怖を抱きながらも自分を支えてくれた大事な物である。
「そうか…」
自分の言葉とペンダントがヴァンを支えていたことに喜びを覚えて微笑むジルウェだが、エールがヴァンに近寄る。
「そう言えばヴァン、お腹空いてない?林檎を採ってきたんだけど」
エリアAの森にある林檎の木から採ってきた林檎が置かれた皿をヴァンに渡すエール。
綺麗に剥かれている林檎を見て、ヴァンの腹の虫が鳴る。
「そう言えば、まともな物食ってなかったな…」
苦笑しながら林檎の皿を受け取る。
「近いうち、ジルウェと一緒にガーディアンベースの補給も兼ねてエリアGの街に行くつもりなの!お土産買ってくるから欲しい物とか食べたい物とかある?」
「ん?」
林檎を食べていたヴァンがエールの言葉に少し悩む。
一年前なら色々と頼むところだが、正直人里から離れて過ごしていたのもあって最近のインナーの流行には疎くなっている。
「肉まんが良いな。ほら、エリアGにある美味い中華料理店の肉まん。あの店、まだあったっけ?」
「まだあるまだある。OK、肉まんね。お腹一杯になるくらい買ってきてあげるわ………ジルウェの奢りでね」
「俺!?」
二人の会話を微笑ましく聞いていたジルウェだが、エールの発言に目を見開く。
「あ、ジルウェ。アタシは餡まんね?勿論、こし餡!粒餡は却下だから!!」
「お前もか!あそこの肉まんと餡まんは高いんだぞ!?それを腹一杯とか…」
「だってー、ジルウェがケチケチしないで新しいバイクを仕入れてくれてればイレギュラーに襲われても逃げられたし、ヴァンは行方不明になんてなってないんですけどー?」
「まあー、俺は気にしてないけど、荷物を運んでる途中でバイクが故障して目的地やインナーまでバイクを押して歩いていくことが結構あったからそこは恨んでるかなー?」
「ううっ!?分かった…分かったよ…奢ってやるよ…はあぁ…」
二人からの冷たい視線と声に深い溜め息を吐いて財布の中身を確認するジルウェ。
その姿はどこか哀愁を帯びていた。
「コホン…とにかくヴァンさん?」
「ヴァンで良いよ。年も変わらなそうだし…」
「おい!ヴァン!この方は…」
タメ口を利いているヴァンに注意しようとしているが、プレリーが止める。
「良いんですよジルウェさん、ヴァン…セルパンから…モデルVの脅威から人々を守るために…私達に力を貸してくれませんか?」
「……………俺はセルパン達を許さない。あいつらを倒すためなら協力は惜しまないさ……それに、俺を狙うあいつらのこともあるしな」
「確か…ペガソルタ・エクレールって言ってたよね…あいつの仲間がヴァンを狙ってる…」
「ペガソルタ・エクレール…?」
聞き覚えのある名前にプレリーは目を見開く。
「どうしたのプレリー?」
プレリーの変化に気付いたエールが首を傾げる。
「その名前はどこかで見たことがあるわ…初代司令官が保管していたデータファイルで…後で調べてみる…」
「………それにしても驚いたな、ガーディアンベースが空飛ぶ船だったなんて」
窓から見える景色にヴァンは思わず呟いた。
「でしょ?アタシも最初に来た時は驚いたわ。でもそれ以上にびっくりすることがあるのよ?ね、プレリー?」
「は?どういうことだ?」
「それでは改めて…ようこそ、ヴァン。私達の本拠地…ガーディアンベースへ。私はガーディアンの司令官、プレリーです」
「へえ、司令官…あんたが司令官…え!?あんたが司令官なのか!?隣の爺さんじゃなくて!?」
てっきり隣のフルーブが司令官かと思ったのだが、自分と大して年齢が変わらなそうなプレリーが司令官であることにヴァンは驚く。
「失礼過ぎるぞヴァン…」
「やっぱり驚くよね、アタシもプレリーが司令官だって知った時も驚いたし」
溜め息を吐くジルウェに自分と同じ反応をするヴァンに苦笑するエール。
「驚いた?」
「そりゃあね…まあ、とにかくよろしくなプレリー」
手を差し出すヴァンにプレリーは一瞬、“あの人”の姿が重なって見えたが、それを何とか隠して握手をした。
「こちらこそよろしくね…ヴァン…フルーブ、後であなたに渡す物があるから、後で司令室に来てくれる?後で通信を寄越すから」
「え?はい」
そう言って医務室を出ていくプレリーにエールはどこか違和感を感じた。
「どうしたんだろうプレリー…泣きそうだったけど」
「そうか?いつも通りに見えたけどな…」
「ジルウェ、鈍すぎ」
鈍感なジルウェの発言にエールは溜め息を吐いた。
しかし、それでも今日は久しぶりに穏やかに休めそうだと、体から力を抜くエールであった。
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