| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十三話 呂布、あえて騙されるのことその九

「若しばれれば」
「呂布怒るだろうな」
「そうならない方が不思議なのだ」
 こうも話す張飛だった。
「人を騙すことだし。後ろめたいのだ」
「だよなあ。ちょっとな」
「はい、騙すことはよくありません」
 それはだ。徐庶もそうだと話す。
「けれどです」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「呂布さんは全てわかっておられます」
 徐庶が指摘するのはそのことだった。
「董卓さんのこともです」
「わかってるのだ!?」
「あの董卓が人形だってことを」
「そうです。わかっておられます」
 そのことをだ。張飛と馬超に話すのである。
「それでも。陳宮さんの御心もわかって」
「それでなのだ」
「騙されたふりをしてるってのかよ」
「はい、そうです」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「呂布さんはそうされてるんです」
「ううん、じゃあ呂布は何もかも全部わかって」
「それで動いてるんだな」
「そうです。あの方も凄い方です」
 徐庶は呂布を賞賛さえした。
「そのうえでなのですから」
「ただ強いだけじゃないと思ってはいたのだ」
「そうした気配りもできるんだな」
「そうさせているのは陳宮さんです」
 彼女がだというのだ。
「あの方の真心がです」
「呂布をそうさせたのだ」
「そうなんだな」
「そうなります。陳宮さんは呂布さんにとって」
 どうかともだ。徐庶は話した。
「本当にかけがえのない方なんです」
「心と心で結ばれている」
「そうした関係か」
「はい、まさにそうなっています」
「そうなのだ。じゃあ呂布にとって陳宮は」
「陳宮にとって呂布はだ」
 まさにだ。お互いにであった。
「無二の存在なのだ」
「そこまでの相手なんだな」
 そのことがだ。二人にもわかったのだった。
 そうした話をしながらその呂布を見ていた。呂布は。
 車椅子の傍にいる。無論陳宮も一緒だ。
 その陳宮にだ。こう言うのだった。
「ねね」
「はい、恋殿」
 陳宮もすぐに呂布の言葉に応える。
「何でしょうか」
「有り難う」
 こう言ってだ。礼を述べるのだった。
「今回も有り難う」
「有り難う。まさか」
 今の言葉でだ。陳宮も察した。
 そのうえでだ。彼女に問い返した。
「恋殿は」
「これで美味しく食べられる」
 呂布は答えない。その代わりにこう言うのだった。
「また。食べ物を美味しく食べられる」
「はい、それはなのです」
 陳宮もだ。そのことには笑顔で応えた。
 そしてだった。呂布に対してこんなことを話した。
「では恋殿」
「うん」
「今から食べましょう」
 こう話すのだった。呂布に対して。
「何がいいのです?」
「御饅頭」
 それだと答える呂布だった。
「肉まん。ただ」
「ただ?」
「ねねと二人で食べたい」
 そのだ。陳宮とだというのだ。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧