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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十三話 呂布、あえて騙されるのことその六

「けれどなのです」
「けれど?」
「大変なことがわかったのです」
 今は真実を隠してだ。そのうえで真実を話す陳宮だった。
「月殿は捕らえられていたのです」
「捕らえられていた。月が」
「はい、そうなのです」
 この事実をだ。過去形で話すのだ。
「そうなのです」
「そう。じゃあ」
「そうなのです。張譲になのです」
 その名前を聞いてだ。関の兵達は。
 それぞれ顔を見合わせてだ。驚きの声をあげた。
「馬鹿な、宦官達は粛清されたのではなかったのか!?」
「董卓様によって」
「それで今都は董卓様が治めているのではなかったのか」
「違うのか」
「月は粛清なんかしない」
 ここで呂布がこのことを言った。
「そして表に出ないなんてこともしない」
「ではやはり」
「董卓様は生きておられて」
「それで宦官達に幽閉されている」
「そうなのですか」
「そう。やっぱりそうだった」
 呂布もその事実はわかった。
「月は捕まっていた」
「そうなのです」
 ここでまた呂布に話す陳宮だった。
「それで月殿は」
「そこにいる」
「はい、そうなのです」
 陳宮の顔が意を決したものになった。
「劉備殿達が助けて下さいました」
「劉備達が」
「月殿はここにおられます」
 こう言ってだ。陳宮は車椅子の天幕を開けた。
 そこに董卓がいる。しかしだった。
 よく見れば違っていた。動きはしないし目も虚ろだ。それが精巧だが人形に過ぎないことは近くから見ればわかることであった。
 そしてだ。呂布はその目も尋常なものではない。
 その目で董卓を見てだ。すぐにわかったのだ。
 だがそれと共に陳宮の真摯な顔、何よりもその目を見てだ。言うのだった。
「わかった」
「わかった!?」
「月は宦官達に捕まっていた」
 これは事実だとだ。呂布にもわかったのだ。
「そして月は助け出された」
「そうなのです」
 このことはあえてだ。騙されてみせたのだ。
 しかし同時にだ。呂布はこうも言った。
「そして敵は劉備達じゃない」
「それでは敵は」
「誰なのですか?」
「宦官達」
 彼等だとだ。呂布は左右にいる兵達に話した。
「あの連中が恋達の敵」
「ではそれなら」
「我々は」
「関を開ける」
 こう言うのだった。
「今から開ける」
「えっ、それでは将軍」
「戦はどうなるのですか」
「どうされるのですか」
「月は利用されていた」
 その事実を話すのだった。
「その月は助け出された」
「それではですか」
「最早戦う理由はない」
「そういうことですか」
「だからこそ」
「そう。恋は戦わない」
 誰と戦わないのかも。彼女は話した。
「目の前の劉備達とは」
「左様ですか。それではです」
「関を開けて」
「そうしてですか」
「劉備達と話をする」
 実はだ。呂布は袁紹のことはほぼ頭に入っていない。あくまで知り合いである劉備のことを頭に入れてだ。そのうえで話をするのである。
 
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