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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十三話 呂布、あえて騙されるのことその四

「取るから」
「そうするのだな」
「そうよ。だからあの娘もね」
 陳宮の話に戻った。
「呂布を救わないと。どうにもならないわよ」
「そうだな。それはな」
「そう思うでしょ?貴方も」
「思う。私もだ」
 ここでだ。これまで聞き役に徹していた右京が話してきた。
「この世界に来るまでは己の想いを殺していた」
「貴方の想いを?」
「胸を患っていた」
 それでだ。彼は苦しんできた。剣の道を極めながらもだ。
「それが為にだ」
「その好きな人への想いを捨てていたのね」
「長くは生きられない身体だった」
 それを理由にしてだ。どうだったかというのである。
「それでだった」
「そう。病でだったの」
「しかしそれが治り」
 華陀にだ。そうしてもらったのだ。
「そのうえで心の病も消えた」
「それでなのね」
「そうする」
 右京は言った。
「若し元の世界に戻ったならば」
「そうなのね。貴方もそうしたことがあったのね」
「人はそれぞれある」
 右京はこうも言った。
「私も然りだ」
「そして私も陳宮も」
「だがだ。その想いが純粋で清らかならばだ」
 その場合は。どうかというのだ。
「それは最後まで果たされるべきだ」
「そうよね。本当にね」
「さて」
 ここまで話してだ。右京は。
 あらためてだ。荀彧にこんなことを話した。
「さっきから気になっていたのだが」
「どうしたの?」
 荀彧は目をしばたかせて自分の左隣にいる右京を見上げて尋ねた。
「貴殿は二人いるのか」
「二人って?私は一人だけれど」
「私達の世界ではよく分家や偽者、生き別れとしてだ」
「何か色々な場合があるのね」
「それで外見は同じでただ色が違う相手がいるのだ」
「世の中にはそっくりさんが三人いるっていうけれど」
「それでだ」
 そうだからだとだ。右京は話すのだった。
「今あそこにもう一人貴殿がいるが」
「私がもう一人って・・・・・・あっ!」
 そのもう一人を見てだ。荀彧はだ。
 忽ち怒りの声をあげてだ。その黒猫に叫ぶのだった。
「ちょっと陳花!」
「あっ、桂花!」
 向こうもだ。荀彧に気付いて言い返した。
「あんた何でここにいるのよ!」
「それはこっちの台詞よ!」
 荀彧は荀諶に対して叫ぶ。
「何で私の目の前にいるのよ!」
「ただ散歩していただけよ!」
「散歩は私のいないところでしなさい!」
「そういうあんたもね!」
「何だってのよ!」
「私のいるところにね!」
 こんな調子で言い合う二人だった。その二人を見てだ。
 右京はだ。たまたまそこに来た高覧に尋ねた。
「まさかこの二人は」
「そうよ。凄く仲が悪いの」
 高覧もこう右京に話す。
「もうね。桂花はその為に麗羽様にお仕えしなかったのよ」
「そこまでなのか」
「陳花がいたから」
 そのだ。荀諶のことだ。
「それで曹操殿のところに行ったのよ」
「そうした理由があったのか」
「とにかくこの二人仲が悪いの」
 高覧が言い合う間も喧嘩をしている二人だった。
「こっちの世界じゃかなり有名な話でね」
「困っているのだな」
「まあ二人だけのことだから」
 それでだとだ。高覧は突き放して述べた。
 
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