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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十三話 呂布、あえて騙されるのことその三

「力は一つになろうとしています」
「そうなってきています」
「それでもなのね」
「はい、それでもです」
「草薙さん達のお話を聞きますと」
 そのだ。あちらの世界で彼等と戦ってきた者達の話を聞いてだった。孔明も鳳統もだ。その彼等について考え検証していたのだ。
 そうしてだ。二人はオロチ達にこう話した。
「かなりの力です」
「それぞれで。世界一つを脅かすまでに」
「それが幾つも集って一つになって」
「正直。かなりの強敵です」
「余程気を引き締めて戦わないと」
「それもあってなのね」
 それでだとだ。話す劉備だった。
「今の戦いは何があっても」
「避けないといけないです」
「敵は呂布さんではありません」
「董卓さんの軍自体もです」
「敵ではないのです」
 戦うべき相手ではない。二人は確かにそう見ていた。
 だからこそだというのだ。今は。
「全ては陳宮ちゃんにかかっています」
「この関でのことは」
 こう話す彼女達だった。そうしてだ。
 その陳宮は李典からだ。あるものを譲り受けたのだった。
 それは車椅子の上にある。車椅子自体が天幕に覆われている。その車椅子をだ。李典から譲り受けたのである。
 車椅子を渡した李典はだ。こう陳宮に話した。
「ほな。これからはや」
「はい、ねねがやるのです」
 強い目で李典を見上げてだ。李典に返した。
「ここは絶対に」
「それで呂布を戦わせへんのやな」
「オロチの話を聞いては余計にです」
 それならばだというのだ。
「恋殿は今戦ってはならないです」
「そやな。うち等は戦うべきやあらへん」
 李典も真面目な顔で話す。
「絶対にや」
「そうなのです。真の敵はオロチなのです」
「それに宦官連中やな」
「恋殿を苦しめたあの連中は許せないのです」
 何処までもだ。呂布を想う陳宮だった。それは忠義を越えただ。より強く深いものだった。
「何があってもなのです」
「呂布をそこまで想ってるんやな」
「恋殿は素晴しい方です」
 陳宮は断言した。
「ねねは。恋殿に」
「だからこそや」
 陳宮の目に涙が宿ったのを見てだった。
 李典は彼女が泣かないうちにだ。気を使って言った。
「あんた、何があってもや」
「はいなのです」
「呂布、助けや」
 こう言ってであった。李典はその車椅子を手渡して陳宮を送ったのだった。
 その彼女を見てだ。荀彧はふと呟いた。
「正直。成功して欲しいわね」
「貴殿もそう思うのだな」
「それはそうよ。戦いが避けられるのよ」
 だからだとだ。右京に返す。
「それならそれに越したことはないじゃない」
「それはその通りだ」
 右京も彼女のその言葉に頷く。
「無益な戦いはな」
「そうよ。それにね」
「それに。どうしたのだ」
「何か。私も変わったのよ」
 こうだ。右京にさらに話すのだった。
「ああいうの見てたら成功して欲しいと思わざるを得なくなったのよ」
「そうなのか」
「そうよ。あの陳宮って娘呂布を必死に想ってるわ」
 それでだというのだ。
「そんなあの娘が失敗したらそれはもう」
「希望はないか」
「そんなの私が許さないわよ」
 いささか感情を込めて話す荀彧だった。
「絶対に成功してもらわないと」
「この話はか」
「ほら。貴方の世界にいる」
 荀彧は話を変えてきた。
「覇王丸っているじゃない」
「あの男のことか」
「あいつ、あれなんでしょ?お静って人の気持ちをわかっていて自分自身もそうだったのに。あえて剣の道を選んだのよね」
「そうした。それがあの男だ」
「それ聞いて私言ってやったのよ」
 彼と一緒に飲んでいる時にだ。実は荀彧は無類の酒好きでもあるのだ。
「そんなのおかしいって。男ならね」
「男ならか」
「女でもよ。想う相手の気持ちに応えなさいって」
 実際にこう言ったのだ。覇王丸自身に対して。
「それで剣もそのお静って人もよ」
「両方取るべきか」
「そうよ。私だってね」
「貴殿もか」
「軍師の力量を極めることも華琳様への想いも」 
 どちらもだ。荀彧にとっては絶対のことだ。その両方をだというのだ。
 
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