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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第一話 モデルX

 
前書き
物語開始 

 
ヴァンが行方不明になってから一年が経過し、ジルウェ・エクスプレスのエールを含めたメンバーは悲しみを背負いながらも日々の仕事をこなしていた。

そしてエールはヴァンが行方不明となった崖の上で先輩のジルウェと共に休憩していたのだが…。

ジルウェの通信機に通信が入り、それに対応するジルウェをエールは一瞥すると、再びある方向に視線を向けた。

「はいはい!依頼とあらばどんな物でも どこにでも!こちら運び屋、ジルウェ・エクスプレスでございます!」

『…運び屋のジルウェさんですね?』

通信越しから聞こえてきたのは女性の声。

それを聞いたジルウェは表情を引き締めた。

「…その声はガーディアンの…いや、今は依頼主と呼んだ方が良いんでしたっけ?」

『…遺跡の調査隊から依頼の荷物は受け取りましたか?』

「ええ、確かに」

エールのバイクにある依頼の荷物を再確認しながらジルウェは答える。

『こちらの部隊を先程指定したポイントに向かわせました。予定より早いですが合流しましょう』

「分かりました」

そう答えるとジルウェは通信を切り、エールの方に振り返る。

「おい!エール!そろそろ行くぞ!」

休憩は終えて仕事を再開しようとするジルウェだが、エールの視線は前を向いたままだ。
 
「聞こえてるのか?エール!」

動かないエールに歩み寄るジルウェ。

そしてジルウェはエールの見つめている方向に視線を遣る。

「………」

そこからはインナーの都市に聳え立つセルパン・カンパニーのビルが見えた。

「セルパン・カンパニーのビル、こんなとこからでも見えるんだな。あの会社のおかげで、この国も随分大きくなって救われた。」

「…大きければ良いってわけでもないでしょ?十年前の時も…一年前の時も…カンパニーの警備隊は母さんもヴァンも救ってくれなかった。どっちもいきなりイレギュラーが現れて、二人共アタシを庇って…イレギュラーはアタシから大事な物を奪っていったんだ。」
 
「……そういや、俺が十年前の事件の時にヴァンとお前を見つけた時にはもう…どっちも一人ぼっちだったんだよな…そしてヴァンが行方不明になってからもう一年か…早いもんだ。気持ちは分かるが、街ではセルパン・カンパニーを悪く言うなよ?エネルギー不足やイレギュラー問題で苦しんでいたこの国はあの会社のおかげで色々と救われたんだ。セルパン・カンパニーはこの国にとって英雄なのさ」

「英雄…」

複雑な表情を浮かべるエール。

今でこそ元気…とは言い難いが、一年前にヴァンが行方不明になって捜索が打ち切られた時のエールはもう目を当てられないくらいに塞ぎ込んでいた。

母親の喪失が原因で目の前で大事な存在を喪うことを誰よりも恐れていたのに、運び屋の仲間達と共通の過去を持つヴァンや慕っているジルウェとの九年間で漸く生来の明るさを取り戻していた時に幼なじみのヴァンが自分を庇って目の前で行方不明になった。

塞ぎ込んでいたエールをジルウェと仲間達が支えてくれたことで何とか立ち直ることが出来た。

ジルウェも自分を慕ってくれた後輩であったヴァンのことを思い出したのか端正な顔立ちが悲しげに歪んだものの、エールの頭を優しく撫でた。
 
「辛いのは分かるが…そんな顔してても、お前の母さんもヴァンも喜んでくれないぞ?二人は命懸けでお前を守ったんだ。お前が悲しそうにしてるより、楽しく笑ってる方がずっと嬉しいに決まってる。お前だって普通にしてればそこそこいけるんだ。知ってるか?報告のついでにヴァンから聞いたんだけどお前、結構客には評判良いんだぞ?」

「ちょっ…!ジルウェ!?そこそこって何さ!そこそこって!大体ヴァンも余計なことを…」

「はははっ、行くぞ、依頼主は先に合流ポイントへ向かったそうだ。」

元気な反応を返したことにジルウェは安堵しつつも、仕事を再開し、二人は停車させている自分のバイクの元に向かった。

「…ねえ、ジルウェ。依頼主のガーディアンって一体何者なの?運んでる荷物の中身は何も聞かされていないしさ」

「ガーディアンってのは、イレギュラーと戦うために集まった連中のことさ。各地を転々としながらイレギュラー出現の原因を調べているらしい…荷物のことは…余計な詮索はするな、どうせヤバい物に決まってる。厄介事に首を突っ込むのは止めておけ」

「分かった…でも最近、イレギュラーの数が減ったよね…今日もアタシ達が通る場所でイレギュラーの残骸が沢山あったし」

「そりゃあ…一年前にアウターとは言えインナーの近くでイレギュラーが出たんだ。セルパン・カンパニーの警備隊もようやく本腰を入れたのかもな」

エールの疑問は当然ジルウェも抱いていたものの、一年前にインナーの近くでイレギュラーが現れたことでセルパン・カンパニーも警備の範囲を広げたのかもしれないと予想していた。

二人がバイクに乗り込もうとした時、バスターの光弾がバイクに直撃した。

咄嗟にバイクに身を隠す二人。

「な…何!?」

「こいつら…イレギュラーか!もしかして生き残りの奴らか!?うわっ!」

ジルウェのバイクに弾が当たり、煙が噴き出る。

そしてイレギュラーの攻撃はバイクに集中していき、そのことに気付いたジルウェはイレギュラーの狙いを悟る。
 
「まさか…俺達の荷物を狙ってるのか!?」

次の瞬間にエールのバイクが攻撃を受け、爆風でエールが崖下に転落する。

「きゃああああぁぁぁぁ!」

「エールッ!」

転落していくエールにジルウェは叫ぶが、イレギュラーからの攻撃は増していく一方。

「くっ、エール…無事でいてくれよ…!」

ジルウェはイレギュラーから逃走し、イレギュラーもまたジルウェを追い掛けた。

少し離れた場所で顔以外を布で覆った人物がエール達がいた場所に振り返った。

次の瞬間、胸を手で押さえながら上を見上げる。

「っ………まさか」

その人物は布を取り払う。

腰にまで届く金髪に真紅のアーマーに逆三角形のクリスタルが填められているヘルメット、そして翡翠色の瞳が特徴の少年。

少年は残像を残しながら森を駆け抜けた。

そして崖から転落したエールは意識を失っていたものの、意識を取り戻すと痛む体を擦りながら起き上がる。

「うっ…うう…!い…たた…随分落ちちゃったな…」

起き上がると、ジルウェから通信が入った。

『エール!大丈夫か!?依頼の荷物がお前の近くに落ちてるはずだ!そこから見えるか!?』

「…あれかな…?」

周囲を見渡すと、それらしい物を見つけた。

それは青を基調とした石で、エールはそれに近付く。

『いいか、お前は荷物を回収したらその先にあるガーディアンとの合流ポイントに行くんだ!俺もこいつらを撒いたらそっちに向かう!それまで荷物を頼んだぞ!』

ジルウェとの通信が切れると、エールはジルウェの身を案じながらも石を回収して合流ポイントに向かおうとするが、その直前に武装した集団と出会す。

「誰だ!?こんな所で何をしている!?」

突然バスターを向けられたエールは慌てる。

「ま、待ってよ!アタシはその荷物に用があるだけなんだって」

「みんな、銃を下ろして」

エールが相手に事情を説明しようとした時、良く通る少女の声が聞こえたかと思えば、長い金髪の桃色の制服を纏ったレプリロイドの少女が前に出た。

見た目はエールと同じか少し上くらいか。
 
「もしかして…運び屋の方ですか…?」

「うん、そうだけど…あなた達がガーディアンなの?」

「ええ…遠くで爆発が聞こえたので様子を 見にきたのですが…」

取り敢えず事情を話そうとエールが口を開いた時、突如大型の蛇型のメカニロイドが出現した。

「な、何だこいつは!?」

「蛇のメカニロイド…!こいつもさっきのイレギュラーの仲間!?」

「プレリーさん!ここは危険です!早くそれを…ライブメタルを持って逃げて下さい!」

武装したガーディアンのメンバーがメカニロイドをバスターで攻撃するが、頑強な装甲には傷一つ付かず、逆に弾き飛ばされて返り討ちにされてしまう。

「ぐあああっ!」

「み、みんな!」

プレリーと呼ばれた少女は倒れた仲間に駆け寄る。

「は…早く…ライブメタルを…」

「早く立って!ここから逃げるの!あいつの狙いはあの荷物よ!あんな物を持って逃げたら、追って来るに決まってる!」

「……嫌…!…ライブメタルは…誰にも渡さない…!」

エールがプレリーに駆け寄って逃げるように促すものの、プレリーはそれを拒否する。

「馬鹿言わないで!あのライブメタルっていうのがそんなに大事だって言うの!?」

「だって…あれは…お姉ちゃんが…あれはお姉ちゃんが私達に残した…大切な物だから…!」

それを聞いたエールはプレリーを庇おうとして前に出た。

幼なじみの彼も今の自分と同じ立場ならきっと、もう後悔したくないと言いながらこうするだろう。

「……もうっ!首を突っ込むなって言われたけど…!こんなの 放っておけるわけないじゃない!でも…どうすれば…!」

「…大丈夫、僕が力を貸してあげる…適合者確認、R.O.C.K.システム起動開始」

石が光を放ちながら浮かんだかと思えば、石はエールに向かっていき、エールの体を光が包み込む。

次の瞬間にはエールの姿は変わっており、青いアーマーに赤いクリスタルが填められているヘルメット、そして右腕が変形した武器…Xバスターが特徴の姿となっていた。

そして無意識にチャージされていたバスターを構え、チャージバスターを命中させると、ダメージを受けて怯んだメカニロイドはこの場から逃走する。

「はあっ…はあっ…!アタシの体…どうしちゃったの?ライブメタルのせい…!?」

メカニロイドは追い払えたものの、自身の体の変化に戸惑うエール。

「恐れないで……僕はライブメタル・モデルX…」

「モデル…X…?ライブメタルが、アタシの中で喋ってる!」

「このままじゃ、あの女の子を戦いに巻き込んでしまう…ここを 離れるんだ…君と僕が力を合わせれば…奴らと戦える!」

「………!」

「…変身した……!?この人がライブメタルに選ばれたというの…!?」

プレリーはエールの変化を見て、彼女がライブメタルに選ばれたことを悟った。

「とにかくこのライブメタルを合流ポイントまで持っていけばいいんでしょ!?危ないからあなたはここでじっとしてて!…こんなことまでさせて…後で追加料金、毟り取ってやるんだから!」

「ま、待って!…助けてくれてありがとう……私の名前はプレリー…!」

愚痴を言いながら駆け出したエールを呼び止め、感謝と自己紹介をしてきたプレリーにエールも笑う。

「…ハハッ、アタシはエール…!“運び屋”のエールっていうの、待ってて…今、助けを呼んでくる…!」

「…うん…気をつけて…エール!」

エールはプレリー達から離れて合流ポイントに向かう。

イレギュラー化したメカニロイドがエールに向かってくるのを見て攻撃を回避しつつ、バスターを構えて連射する。

エールは戦いの経験は皆無だが、モデルXのサポートがあるために弱いメカニロイドなら問題もなく戦える。

「当ったれーっ!」

最大までチャージしたバスターから二発の光弾が発射され、目の前を塞ぐメカニロイドを粉砕していく。

これがモデルXの最大の特徴であるダブルチャージ。

威力の高いチャージバスターを連続で発射して、敵に大ダメージを与えることが出来る。

バスターで弾幕を張りつつ、ダッシュによる高速移動を駆使して突き進むと合流ポイント付近に到達した。

次の瞬間、再び蛇型のメカニロイドが姿を現す。

「来た…こいつを倒さないと助けを呼べない…」

「大丈夫だよ…あのメカニロイドはどうやら頭部が弱点のようだ。頭部を集中して狙えば充分勝てる」

「うん……(母さん…ヴァン…アタシに力を貸して…!)」

モデルXの言葉に勇気を出してエールは戦いに挑む。

メカニロイドは大型なだけあり、パワーは相当なものだ。

一撃でも受ければ小柄なエールはひとたまりもないだろう。

しかし小柄でダッシュによる高速移動を使えるエールに大振りな攻撃は当たらず、動きを止めた直後にダブルチャージバスターでダメージを受ける。

尻尾による攻撃とそれによる石の礫、そして口から発射される弾にさえ気を付ければ回避は容易である。

「これで終わりよ!」

ダブルチャージバスターを何度も頭部に受けたことで亀裂が入り、煙が噴き出ている。

とどめのダブルチャージバスターを頭部に叩き込むと、頭部が爆発して沈黙した。

「何とか…倒せた…確かモデルXって言ったっけ…?何でアタシを助けたのさ?」

「人の命を救うのに理由なんて要るのかい?君だって会ったばかりのあの女の子を助けようとしたじゃないか。僕は君の勇気に力を貸しただけだよ」

「…力…か、そうだよね…あなたのおかげで助かったよ…勇気だけじゃ、誰も助けられないもんね…」

「……?」

エールの言葉に不思議そうにするモデルX。

もし彼が人間かレプリロイドなら首を傾げているだろう。

「…合流ポイントは、この先だっけ?さ、行こう」

モデルXに伝えると、先にあるトランスサーバーのある扉を潜ると、ガーディアンのメンバーらしき人々がいた。

エールが入ってきたことに気付き、ガーディアン達の視線が向けられる。

「依頼を受けた“運び屋”の者よ、荷物を持ってきたわ。向こうで プレリーっていう女の子が助けを待ってるの、行ってあげて」

「何だって!?おい、みんな!プレリー様達の救助に行くぞ!」

プレリー達の救助のために小柄な老人レプリロイドを除いた全員が向かっていく。

「プレリー…様?あの子、ガーディアンじゃそんなに威張ってるのかな…?」

「驚きました…その様子だと…ライブメタルを使いましたね?でも無事に届けてくれたようでホッとしました」

「あれ?ジルウェは?もう一人の運び屋はまだこっちには着いてないの?」

辺りを見回してもジルウェの姿が無ければ、ここに来た形跡もない。

「いえ、ここにきたのはあなただけですけど…」

老人が答えた次の瞬間、救護班からの通信が入った。

『こちら救護班!仲間を発見しました!怪我人を保護した後、ガーディアンベースへ帰還します』

「待って下さい、もう一人の運び屋が行方不明のようです。そちらで何か確認出来ませんか?」

『…あれは…!隣のエリアから煙が上がっています!隣のエリアで何者かが襲われているようです!』

「…そんな…ジルウェ…!?」

それを聞いたエールは自分が使っているモデルXの力を思い出し、ジルウェを助けに向かおうとする。
 
「…悪いけど このライブメタル、もう少し借りていくよ!ジルウェを助けにいかないと…!」

「何ですって!?あなたも、ライブメタルもこれ以上危険な目に遭わせるわけには…!」

「何さ!荷物さえ届けばジルウェがイレギュラーにやられてもいいっていうの!?」

「で、ですが…!」

エールと老人の口論を止めたのは向こうで保護されているプレリーであった。

『待って!フルーブ!エールを行かせてあげて!』

「プレリーさん!?」

フルーブと呼ばれた老人はプレリーの言葉に慌てるが、プレリーは言葉を続ける。

『大丈夫よ、フルーブ。彼女ならイレギュラーとも戦えるわ…エール、あなたはあの時、出会ったばかりの私を助けてくれた…あなたのその勇気を信じるわ。ガーディアンベースへは私が話を通すから…あなたの大切な人を助けてあげて』

「…ありがとう、プレリー」

それを聞いたフルーブも説得を諦め、エールのサポートをすることにした。

「…仕方ありませんね…では、私達であなたのサポートをします。ご存知かもしれませんが、このトランスサーバーはこの国のあちこちにあります。これを使えばミッションの確認が出来るのですよ…ベースのオペレーターからミッションの発令を受けました。現在、あなたに出されているミッションは二つです。ミッションの一つは行方不明になったもう一人の運び屋の捜索、一つはガーディアンベースへの転送許可を貰うテストのようなものです。二つのミッションをこなして、ライブメタルをベースまで届けてくれればあなた方“運び屋”への依頼は完了ということになります。」

「十年前…イレギュラーに襲われたアタシ達を助けてくれたのはジルウェだった…今度はアタシがあの人を助けるんだ!待ってて!ジルウェ!……もう、何も出来ないで後悔なんかしたくないから…!」

決意を胸に早速トランスサーバーでジルウェ捜索のミッションを受け、隣のエリア、エリアBにエールは向かうことにした。 
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