戦国異伝供書
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第八十四話 安芸家との戦その三
「安芸家の軍勢の後ろの方の海に出てもらってな」
「そこからですか」
「法螺貝を鳴らしてもらう」
「それで軍勢が来たとですか」
「思わせる、そして実際に山道を伝って安芸城に兵を進める」
元親はさらに言った。
「その軍勢はわしが率いる」
「殿がですか」
「矢流の方は弥五良に任せる」
親貞を見て話した。
「よいか」
「わかり申した、では」
「そうして敵を乱してな」
「そのうえで、ですな」
「矢流は堅固な地じゃ」
「海と山に挟まれていて」
「そこでぶつかっても勝ってもな」
それでもというのだ。
「やはり多くの兵を失う」
「だからこそですな」
「海からも、そして安芸城を伺うとも見せてな」
「敵を惑わせるのですな」
「そうして浮足立たせてな」
「そうして戦えばですな」
「そうした軍勢なぞ脆いものじゃ」
浮足立った軍勢なぞとだ、元親は話した。
「だからじゃ」
「この度は、ですな」
「その様にして惑わし」
「そうしてですな」
「矢流での戦に勝ってな」
「安芸城に向かい」
「そうして城を囲む」
その安芸城をというのだ。
「よいな」
「そして城を囲み」
「そこからまたどうするかじゃ」
「まずは姫倉城に入りですな」
「そこで漁師達に話してな」
「海に出させて」
「矢流の後ろの安芸川の方から法螺貝を鳴らさせるのじゃ」
その安芸川の河口の方からというのだ。
「そしてわしもな」
「軍を二つに分けてですな」
「もう片方を安芸城に向かわせるが」
「兄上が率いられて」
「攻めていくぞ」
「矢流の兵を惑わせる為に」
「敵が戸惑うとな」
矢流にいる彼等がというのだ。
「そこでじゃ」
「さらにですな」
「お主が攻めてな」
「勝ちますな」
「その様にせよ、では行くぞ」
こう話してだった、元親はまずは五千の兵を姫倉城に入れてそこを拠点とした。そうしてだった。
城に漁師達を呼び話した、その際元親は漁師達に多くの銭を渡して言った。
「受け取るがよい」
「まだ我等は何もしておりませぬが」
「それでもですか」
「受け取ってよいですか」
「そうじゃ、引き受けると答えたからな」
だからだというのだ。
「もう渡す、では宜しく頼むぞ」
「はい、それでは」
「もうこれだけ頂いたのですから」
「殿に応えます」
「是非共」
彼等は驚きつつ銭を受取り元親に約束した、そうしてだった。
元親は漁師達が海に出るのを見送ると軍勢を矢流に進ませた、するとその矢流に安芸家の軍勢がいた。
その彼等を見てだ、元親は言った。
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