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戦国異伝供書

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第八十四話 安芸家との戦その二

「兵を集めな」
「そうしてですか」
「戦に向かう」
「つまり一歩か二歩遅れる」
「そしてその一歩か二歩がな」
「こちらにとってですな」
「付け入るところとなる」
 それだけの遅れがというのだ。
「まさにな」
「しかもですな」
 本山はここでこうも言った。
「安芸家の兵は少ない」
「当家に比べてな」
「二千ですな」
「こちらが五千に対してな」
「やはりそのことも大きいですな」
「うむ、だからな」
 それだけにというのだ。
「今よりすぐにじゃ」
「兵を集め出陣し」
「安芸家の領地に進むぞ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「では敵の先も制するぞ」
「先んずれば人を制すですな」
「その言葉は真実じゃ」
 史記で項羽が残したこの言葉はとだ、元親は本山に答えた。
「まさに相手より先に動けばな」
「先に出てですな」
「相手より有利にことを進めることが出来る」
「だからこそこの度も」
「今より動くのじゃ」
「制する為に」
「この戦をな、ではお主はじゃ」
 本山を見てだ、元親は笑って彼に告げた。
「先陣を務めてくれるか」
「それがしがですか」
「お主とお主の家中の者達には」
「そうしてですな」
「戦の時はじゃ」
 先陣を務めてというのだ。
「思う存分手柄を立てよ」
「そして褒美はですな」
「思いのままじゃ」 
 元親は本山に笑ったまま話した。
「よいな」
「はい、それでは」 
 本山も笑って応えた、こうしてだった。
 長曾我部家は一領具足の者達に号令をかけ彼等に武具を持って来させたうえで集めた、そして岡豊城からだった。
 五千の兵を以て元親ら自ら率いて出陣した、元親は出陣してすぐに諸将に話した。
「まずは姫倉城に入りな」
「そこを拠点としてですな」
「そのうえで、ですな」
「安芸家と戦いますな」
「その様にされますな」
「うむ、安芸家の軍勢は安芸城から出てな」 
 安芸家の本城であるこの城からというのだ。
「そしてじゃ」
「姫倉城の方に来ますな」
「海と山の間の道を伝って」
「そうしてきますな」
「我等もその道を進む、そしてな」
 元親はさらに話した。
「おそらく矢流辺りでぶつかるが」
「そのまま全軍でぶつかりませぬな」
 吉田重俊が問うてきた。
「左様ですな」
「それでも勝てるが損害が出る」
「だからですな」
「それはせぬ、漁師達に話してな」
 海で働いている彼等にというのだ。 
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