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戦国異伝供書

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第八十三話 和睦の間にその十二

「摂津や河内、和泉だけでなくな」
「讃岐や阿波もですな」
「門徒達が多く」
「若し本願寺を敵に回せば」
「その時はじゃ」
 まさにというのだ。
「三好家は一向一揆を起こされてな」
「本願寺によって」
「それを仕掛けられ」
「そして、ですな」
「下手をすれば富樫家の様に滅ぼされる」
 今話に出たかつて加賀の守護だったこの家の様にというのだ、元親はこのことも頭の中に置いているのだ。
「そうでなくてもな」
「勝ったにしても」
「とてつもなく大きな傷を負いますな」
「そうなりますな」
「一揆を起こすのは百姓じゃ」
 一向宗の門徒である彼等だというのだ。
「倒した門徒の数だけ百姓が減る、そしてじゃ」
「戦の中で兵も失い」
「その傷もありますな」
「ましてやあの石山本願寺を攻め落とそうとなると」
「あそこはまず攻め落とせぬであろう」
 本願寺の総本山であるこの寺はというのだ。
「多くの川に囲まれしかも堅固という」
「例え三好殿でも」
「三好殿は兵が多く武具もよいといいますが」
「鉄砲も多く持たれているとか」
「しかしじゃ」 
 それでもというのだ。
「本願寺を攻めようとすればな」
「大軍とよい武具を以てしても」
「攻め落とすのは極めて難しい」
「そうなのですな」
「例え攻め落とせてもやはり大きな傷を負う」
 そうなっているというのだ。
「それこそ立ち直れぬまでな」
「そこまでの傷を負うからこそ」
「だからですか」
「三好家は本願寺とはことを構えませぬか」
「あえて距離を置いてな」
 中立を守ってというのだ。
「治めておるのじゃ」
「左様ですか」
「それが本願寺ですか」
「あの寺ですか」
「そうじゃ、だからな」 
 それ故にというのだ。
「わしもあの寺とはな」
「ことを構えぬ」
「そうお考えですか」
「兄上も」
「先程話に出たが讃岐と阿波に門徒達が多い」
 元親はこのことを指摘した。
「わしはこの二国も領地としたいのじゃ」
「四国の国だからこそ」
「それ故にですな」
「その二国も」
「土佐を統一したなら阿波じゃ」
 まずこの国だというのだ。
「そして讃岐じゃ」
「最後は伊予ですな」
「そう駒を進めていかれますな」
「土佐の後は」
「そう考えておるからな」
 だからだというのだ。
「本願寺は決してな」
「敵に回さぬ」
「何があっても」
「そうお考えですか」
「敵に回して勝っても立ち直る力は残っておらぬ」
 間違いなくというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「当家としては」
「本願寺とはことを構えず」
「武家同士の戦をしてな」
 そしてというのだ。 
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