リュカ伝の外伝
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リュー君のお仕事②
<グランバニア>
オジロンSIDE
本日4件目の謁見者も終わり、やっと5件目…ラストである。
基本、謁見には大人数では立ち合わない。
例外もあるが、それは直接立ち合わせた方が良いと、判断した場合である。
しかしボルガーレ子爵が出て行ったのと入れ替わりで、幾人かが入室してきた…
ビアンカ王妃陛下を筆頭に、ドリス・スノウ・ピエール・そして数人のメイドや女官等が…
確か次は…
「陛下、次の謁見者は、南方の国『ホザック』より参りました商人でございます」
そう、女性方のお目当てはショッピングだ!
本来この様な事は許されるべきではない!
これは公務なのだ!
買い物がしたいからと言って、気軽に立ち合う事など…
私はリュカに目で訴える。
気付いたリュカは、小声で…
「ムリだよ…僕に止められるわけないだろ!ビアンカ・スノウ・ピエールはどうにかなっても、アナタの娘さんにボッコボコにされます!」
………ハァ…困ったものだ…
瞳を輝かせた女性陣が、リュカの左側に並び終わると、控えの間との扉が開き商人等が入室してきた。
先頭を歩くのが代表者であろう…
背丈はあまり高くはない…肌の色は生白く、瞳が異様に大きいく、は虫類を思わせる様な顔立ちをしている。
その後ろに付き従うのは、筋骨隆々のボディーガード2名。
見るからに筋肉バカだ!
そして、その後に続く異様な一団…
20名くらいは居るであろう…全員、同じ恰好をし商品の服やら宝石やらを運んでいる一団…
この商団の制服であろうか…真新しい真っ白い麻のローブに白い靴…そして無意味にゴツイ首輪をしている…
嫌な予感がした私は、リュカの顔を見る…
先程までは疲れ切っていた表情だったのが、一変して険しい顔になっていた。
「お初にお目にかかります。私はカオフマンと申します。ホザック王国を中心に商いをしております」
カオフマンは不愉快なまでの営業スマイルで話し出す。
まるでエサを見つけた蛇の様に…
「偉大なるグランバニア国王陛下におきましては、ごきげ「前口上はいい!」
カオフマンの言葉を遮り、リュカは立ち上がる。
「此処には商いをしに来た…と言う事は、その後ろに並んでいる同じ恰好をした人達も、君の商品なのかな?」
「流石はグランバニア国王陛下!お目が高い!!」
営業スマイルを更に綻ばせ、腰を低く擂り手で話す男…
リュカは不機嫌な表情のまま、商品である彼等、彼女等に近付いて行く。
「商人にとって重要なのは情報です!僭越ながらグランバニア王国につきましては、調べさせて頂きました。そして現在、国土開拓の為に人員が必要であると結論に達しました」
リュカは商品を確認するかの様に、奴隷達の状態をチェックしている。
どうやら白いローブの下は裸の様で、外見だけをキレイにして体裁を取り繕ったみたいだ…
「なるほど!人員…労働力という事か!」
振り返ったリュカの表情は、満面の笑みで満ち溢れていた…
リュカの表情を見て確信した私は、ピピンに目で指示を出し、衛兵を謁見の間の外に待機させる事にした。
はぁ…今日は何って日だ…
「作用でございます陛下!簡単な食事だけで酷使できる労働力、壊れても代えでしたら私めが幾らでもご用意させて頂きます!」
「しかし20人しか居ないのでは…しかも半分は女性だし…」
「ご安心下さい!こちらに連れてきたのは、ほんの一部です。停泊中の私の船には、まだ50人程のストックがございますので…それに陛下…女は別の用途がございましょう…その為に見栄えの良い物を厳選して参りました。如何です?」
カオフマンは得意満面でリュカの顔を覗き込む。
「あはははは!気が利くねぇ、君!」
「お褒め頂き「でも、舐めないでもらいたいな!」
急にリュカの声のトーンが変わった!
そして背筋が凍る様な冷たい瞳に…
「金で女買わなきゃならない程、飢えてる様に見えるのか?」
「い、いえ…その様な事は…」
やっとリュカの怒りを感じる事が出来たのであろう、カオフマンは狼狽え始める。
「商人には情報が重要?お前、グランバニアの事しか調べてねーだろ!僕の事を何一つ調べてねーだろ!」
「そ、そんな事は…ぐはっ!」
リュカは左手でカオフマンの首を掴み、頭上高くへ持ち上げる!
ボディーガードが慌てて助けに動くが、同時に入ってきた衛兵達に阻まれ、身動きが取れないでいる。
「教えてやる、クソ野郎!現在のグランバニア国王は、過去に10年間、奴隷として生きていた時代があるんだよ!」
言い終わると、ボディーガードに向けてカオフマンを投げ付ける!
カオフマンはボディーガード二人と倒れ込み、咽せ返っている。
「おい!クソ商人!此処にある商品全てと、お前の船及び船内の商品、そしてお前等の命を買ってやる!」
そう言うと懐から1ゴールドを取り出し、カオフマンに投げ付けるリュカ。
「な、1ゴールド!?幾ら何でも…「じゃぁ買わん!お前は死刑だ!イヤなら1ゴールドで納得しろ!」
つまりは全て没収…と言う事だ。
カオフマンは渋々了承する。
しかしこのまま帰したら、まだ被害者が出るのでは…?
そう思った時にティミーが発言してきた。
「陛下!この者は不敬罪に類する行為を行いました!どうか処罰を求めます!」
「不敬罪?何それ?」
「……………えっとですね…へ、陛下が奴隷であった事を知らないにしても、奴隷を売りつけに来るなど、無礼極まりないという事です…」
「あぁ…つまり僕を怒らせちゃったから、懲らしめちゃおって事!うん。そこら辺はよろしく!」
「そ、そんな!さっき死刑は無いと…」
「それと不敬罪は別件だ!投獄しておけ!」
ピピンがテキパキと処理を進める…さすが私の義息子!ウンウン、良い働きっぷりだ!
「あ!ピピンお願いが…」
「は、何でしょうか!?」
「うん。アイツの船に部隊を派遣して、残りの人達の保護を頼むよ。アイツの部下が残っていると思うから、気を付けてね」
ピピンが部下を引き連れ港へと向かう…
リュカは元奴隷達に近付き、無骨な首輪を外そうとしている…が、
「お、お止め下さいませ、陛下!これは外してはなりません!」
必死で抵抗された。
「?…実はお気に入りですか?」
首を傾げ何時もの調子で呟くリュカ…そんな訳ないだろう!
オジロンSIDE END
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