リュカ伝の外伝
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リュー君のお仕事①
前書き
この話は、リュカがDQ3の世界へ召還される半年前の出来事です。
<グランバニア>
ティミーSIDE
僕の目の前にはボルガーレ子爵と息子のマーレスが、僕の右前方の玉座に向かい、膝を付き畏まっている。
その玉座には僕の父…グランバニア国王リュカ陛下が、辟易した顔で座っている。
父さんの右隣には、国務大臣のオジロン、その右には先日、軍務大臣に昇進したピピンが並んで立っている。
つまり今は謁見中だ。
貴族の一人、ボルガーレ子爵が謁見を願い出てきたのだ。
基本的に毎日謁見を申し込む人が居る。
陛下に直訴したい事や、困った事などを言って解決をお願いする。
中にはご機嫌伺いの為に来る者も少なくない…
以前(オジロンが代理王をしていた頃)は、位の高い人から順に謁見していたらしい。
位の低い人は、陛下への目通りも出来ず、係の人に用件だけ伝える事もあったらしい…無論それは陛下の耳には入らなかったそうだ。
しかし父さんになってからは、先着順で謁見する事にしたのだ。
しかも1日5件と限定をした。
不平不満を言う人はキリがないから…
そしてボルガーレ子爵で本日4件目…
貴族と言うのは待たされるのが嫌いらしく、控えの間で随分と騒いでいた!
しかし、それを聞いた父さんが大激怒し、ボルガーレ子爵を殺しかねない勢いで怒鳴りつけていた。
その為か、さっきから一向に本題へ入らず、挨拶なのかゴマ擂りなのか分からない前口上が続いている…かれこれ15分…
「……………でして、陛下の政務の大変さは、重々承知しております。私が少しでも軽減でき「もういいから、本題に入ってくれないかな!?」
さすがに我慢の限度が来たみたいだ。
先程、こっぴどく怒鳴りつけてしまったから、少しは遠慮したみたいで、15分も我慢してたよ。父さんが…
出来れば、あと13分早く我慢の限度が来てほしかったけど…
「これは…申し訳ございません!ついつい陛下の政務の大変さ「本題入れっつってんだよ!!」
「はいぃぃぃ!!じ、実はですね、陛下にお願いがあって本日参りました!」
「んで、何?」
父さん、かなりなげやりだ!
「はい!我が領地の治安を維持すべく、増兵の許可を戴きたいのですが!」
「あ゛?勝手に増兵すればいいだろ!許可なんか必要ない!しかし子爵の領には、大規模な自警団があっただろ!?治安に問題は無いと思うが…?」
「いえ…その自警団は、平民が勇士で結成した物でして…今回は我が子爵家の兵を増やしたいのです…」
「どっちでもいいよ!勝手に増やしゃいいじゃん!」
「で、では…税金の免除を…お願い致します…」
以前、貴族達が挙兵した時に『貴族が大群を有するのは危険である』と言う結論に達した為、各貴族の軍事力を奪う事となった。
しかし領地を守る為には軍事力は必要な為、全てを奪うわけにもいかず、取った方法が『有する軍事力に対しての課税措置』である。
簡単に言うと、兵士(末端から上級指揮官まで)1人に対し、0.05%の増税する事が決まったのである。
そして現在、ボルガーレ子爵は約200人の兵力を有しており、10%程多く税金を取られる事になっている。
それでも全盛期は、その10倍の兵力を有していたのだから、今が心許なく感じるのもムリはない…
「何で税金を免除しなきゃなんないんだよ!兵力増やすのは勝手だけど、金は払えバカ!」
…父さん…もう少し言い方があるだろ…公式の場なんだから…
「しかし、これ以上課税されたら、私は破産してしまいます!」
「じゃぁ増兵しなきゃいいだろが!自警団と協力し合えば良いじゃんか!」
「陛下、その自警団が力を付けすぎ、我々領主を脅かす存在になっているのです!」
いきなり息子のマーレスがしゃしゃり出てきた。
コイツは僕と同級生で、学校では同じクラスだったんだが…
ポピー曰く、
『底無しのアホ』
との事だ。
子爵家の嫡男である事を鼻にかけた嫌なヤツで、理由は分からないけど、何時も僕に突っかかって来ていた。
友達に聞いた話では、ポピーに言い寄って酷い目に遭い、同じ顔の僕に逆恨みをしているのでは?との事だけど…
きっとポピーの事だから、とてつもなく酷い事をしたんだろうなぁ…
「はぁ?お前はアホなのか?何で自警団が領主を脅かしてるんだよ!?自警団とは、自分たちを守る為に組織された団体だ。自分たちに危険が及ばない限り、武力を行使する事は無い!どうせ領民達を力で押さえ付けてたんだろ!それを不満に思った領民達が、自警団を組織したんだ。自業自得じゃねーか、アホが!底無しのアホだな!」
父さんにボロクソに言われたマーレスは、顔を真っ赤にして震えている。
拳を握り締め、今にも殴りかかりそうだが…
出来れば止めてほしいな…
僕の仕事が無駄に増える。
僕は陛下直属の近衛兵として、任務に従事てる。
僕より強い人間を守らなければならないと言うのは甚だ不本意なのだが、ピピンが…いや、ピピン閣下が気を利かせて配属してくれたのだ。
父さんは『甘やかすのは良くない』と言って反対したのだが、オジロン大臣・ピピン閣下・文部大臣のドリス大臣・ビアンカ王妃陛下に説得(強制)され、渋々承諾していた。
従って、この場で陛下に襲いかかる者は、僕が身を挺して防がねばならない。
放っておいたって自分で何とか出来るのに…
「僕から見たら、君達が今しなければならない事は増兵ではない!領民達とよく話し合い、蟠りを解く事だ!貴族である事を鼻にかけず、領民達と同じ目線で対話をすれば、武力衝突を回避できるだろう」
睨み立ち尽くすマーレスを見て、さすがに不味いと思ったのか、珍しくまともな発言をしている。
普段からこうであってほしいのだが…
「我ら貴族が、領民達と対等に話すなど…」
…本当に底無しのアホだな…
「出来ないと…?」
「………………我らには貴族の誇りがある!」
「そうか…では死ね!」
「な!?」
「領民達が武力発起するまで、その傲慢な誇りで高圧的に生き、殺されてしまえ!」
父さんはそこまで言うと、右手の甲を上に降り無言で退室を促す。
そして僕に目で合図をする…これ以上此処に留まるのなら、反逆の遺志有りと認識せよと…
軍の支給品である『鋼の剣』を半分程まで抜き、こちらの意志をボルガーレ子爵親子に見せつける。
先程まで真っ赤だったマーレスの顔が真っ青に変わり、慌てて謁見の間から出て行った。
剣を元に戻し「ふぅ」と溜息を漏らす…
父さんも同じ気持ちだったのだろう…溜息を漏らすと愚痴が出る。
「底無しのアホだなアイツ!ボルガーレ子爵は何であんな息子を同伴させたんだ?何かの役に立つと思ってたのか?」
「きっと王女殿下との出会いを期待してでしょう…」
「やれやれ…さぁ、次で最後でしょ!疲れたから早く終わらせよ!あのアホのせいで、何時もの3.26倍疲れた…」
「何ですか…その具体的な数値は…」
僕は呆れながらも、思わず突っ込んでしまう。
「意味は無い!ただ、疲れたっぷりをアピールしたかっただけ」
はぁ…やれやれなのはこっちだよ………
ティミーSIDE END
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