曇天に哭く修羅
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第二部
押しかけ
前書き
他の設定を書くのが忙しかった。
生徒会長の《島崎向子》から『合宿』への参加を通達された《立華紫闇》は荷物を纏めるため自宅に戻っていた。
しかし生家ではない。
彼は家族に絶縁状を叩き付け家を飛び出しているので軍に新しい住まいを用意してくれるよう頼んだのだ。
そこはタワーマンションの最上階。
月の家賃は120万もする。
「見栄を張り過ぎたな……」
基本的に生活費は軍が出してくれるとは言え一人住まいするにはあまりに広い。
「今更か」
紫闇は手早く合宿の準備を終えた。
そして午後8時。
彼は隣の部屋に住む元イギリスの【魔神】《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》とカップラーメンを食べながら共にテレビのモニターを眺めている最中。
流れるのは【龍帝学園】が日本代表校を勤める【日英親善試合】についてのこと。
『この祭典では歴史に残るような名試合が幾つも有りました。あの大英雄《朱衝義人》も当時イギリスで最強と言われた【魔術師】を打ち破り───』
義人だけではない。
英雄と呼ばれる程の魔術師達。
彼等の多くは親善試合の経験が有る。
憧れる紫闇としては同じ道を歩みたい。
そういう想いが有った。
その先に待ち受ける結果が違っても。
なので親善試合の代表選手として残りたいし、絶対に出場を果たしたいのだ。
『日本からは朱衝義人の出身校である龍帝学園が代表校に選ばれております。昨年まで会長の島崎向子を除けば世界的に注目される選手が居ませんでしたが今年は違う! 1年のスーパールーキー《橘花 翔》と[白狂戦鬼]の立華紫闇が居る! 両名の出場は確実とされており、イギリス随一の学生魔術師《レックス・ディヴァイザー》との一戦が───』
翔と紫闇の映像が流れる。
夏期龍帝祭の決勝だ。
「立華君は今年のルーキーの中でも注目株なんだね。凄いじゃないか」
「イリアスさんにそういう評価を受けるのは素直に嬉しいです。でもやっぱ照れるなぁ」
少し前までゴミ扱いだった自分がこんな風になるなんて紫闇には現実味が無かった。
二人がカップ麺を食べ終える。
そして後片付けが済むと。
「ん?」
「お客さんか」
部屋のインターホンが鳴らされた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
紫闇は首をひねる。
「おかしいな……」
自分がこのマンションに住んでいることを知る知り合いは向子とイリアスだけ。
ドアを開けた所に居たのは。
「お邪魔するわよっ!」
サイドアップ状の金髪と碧眼。
年より上に見える美貌。
発育の良い胸。
声が聞こえたイリアスも悟る。
(何で此処に)
(つくづく縁が有るな)
《クリス・ネバーエンド》
紫闇とは龍帝の同級生。
学年序列で第三位の実力者。
無駄に声がデカいのは相変わらず。
「勝手に上がんなよっ!?」
「大きなバッグだね」
クリスが笑う。
「喜びなさい! 暫く私も一緒に住むわ!」
紫闇は理解できなかった。
「深くは聞かねぇけど聞きたいことが有る」
「立華君、ネバーエンドの情報網はなかなかだよ? 向子さん程ではないけど」
イリアスの言葉に紫闇は溜め息。
「江神んとこでも行きゃ良いのに」
「クリス。立華君に使用人は居ないよ。他に宛てが無いなら私の伝手で探そうか?」
何か事情が有るのかクリスは表向きこそ何時も通りだが落ち込んでいるよう。
力付くで追い出すのも忍びない。
「イリアスの紹介は有り難いけど……」
再びインターホンが鳴った。
「追い付くのが早いわね」
今度はイリアスがドアを開く。
紫闇は訪問者に驚いてしまう。
クリスと全く同じにしか見えない。
そういう容姿の女。
「私は《エリザ・ネバーエンド》」
後ろからはもう一人。
「先日振りですね御二人とも。《レックス・ディヴァイザー》です」
白銀の【魔晄】オーラを纏っただけの状態で【魔晄外装】も【異能】も無く、手刀の一撃を以て二人の学生魔術師を沈黙させた光景は紫闇の記憶にも新しい。
「疑問は尽きないけど上がれよ二人とも」
頭痛を起こす紫闇は二人を部屋に通した。
後書き
_〆(。。)
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