戦国異伝供書
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第八十話 鬼若子その十二
「今はよいな」
「はい、今はですな」
「本山家と争うだけでなく」
「内の政も整え力をつける」
「そうもしていきまするな」
「して土佐の他の家々のことを調べ」
そしてというのだ。
「わかっておくことじゃ」
「本山家だけでなく」
「他の家についてもですか」
「調べ」
「そうしてわかっておくことですか」
「左様、土佐は多くの家があり」
そしてというのだ。
「互いに争っておりますな」
「今は何処も同じ様なものですな」
「当家は強い方にしても」
「多くの家に分かれ」
「お互いに争っておりますな」
「そうじゃ、守護の細川様はこの土佐には殆ど来られぬ」
そうした状況になっている、細川家も家臣である三好家との争いに敗れそうして力を失ってきているのだ。
「それで一条家がまとめ役であるな」
「強いて言えば」
「そうした状況ですな」
「当家もその中の一つですな」
「それに過ぎませぬな」
「だからじゃ、尚更じゃ」
長曾我部家が土佐の国人の一つに過ぎない、そうした状況だからだというのだ。
「周りにじゃ」
「密偵を送り」
「そうしてよく知っておくべきですな」
「何かと」
「我等はこれといった忍の者達は持っておらぬが」
それでもというのだ。
「よいな」
「はい、出来る限りは」
「多くの家に秘かに人をやり」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「よく知っておくことじゃ、特に」
元親は家臣達に確かな顔で話した。
「今争っている本山家、東の安芸家にじゃ」
「その二つの家ですか」
「まずは」
「何といっても」
「そして一条家にもじゃ」
長曾我部家にとっては恩人であるこの家もというのだ。
「秘かに人をやってな」
「そして、ですな」
「そのうえで、ですか」
「よく知っておきますか」
「あの家のことを」
「そうしておくぞ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「そのうえで、ですな」
「土佐全体に人をやりましょう」
「ではな」
こう言ってだ、そしてだった。
元親は土佐の国人達に密偵を送りそのうえで彼等のことも調べていった、田畑に街も整え堤や橋に道も整えて。
力をつけていった、兵糧も備えて。
そしてだ、彼は頃合いと見ると弟や家臣達に告げた。
「よいか」
「はい、それではですな」
「これより出陣ですな」
「本山家に対して」
「そうしますな」
「左様」
まさにというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「すぐに一領具足の者達を集めましょう」
「あの者達に武具を持たせ」
「そうして出陣しましょう」
「是非な、それとじゃが」
元親はさらに話した。
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